第14話 新たに農作物が増えました
【探索で以下のアイテムを持ち帰りました】
フォレストヤム × 8
プランタビート × 6
影狼の毛皮 × 3
影狼の牙 × 2
影狼の爪 × 2
夜のカケラ × 1
【“ミア”が畑の管理人になろうとしています。承認しますか?】
【YES】
*
*
*
ミアは帰還後すぐにフォレストヤムとプランタビートの種を植えて畑仕事を始めた。
俺たちも手伝おうとしたがなぜか断られ、今は一人で耕しているミアを休憩がてら見守っていた。
「あっという間に耕し終えましたね」
「エルフは森に生きてる。これくらいは朝飯前何だよ」
「なら、ダリウスさんはできるんですか?」
「俺は植生学にはうとくてな」
「さっきと言ってる事違うじゃねぇか」
ダリウスは苦笑いしながら、少し肩をすくめた。
「まあ、森に生きると言っても得意不得意はあるさ。俺は狩りや戦闘の方が向いてるってだけだ。ミアほど手際よく畑を作るのは、さすがに無理だな」
ミアはふふっと笑いながら、フォレストヤムの種を丁寧に植え込んいる。
その姿は真剣そのもので、土を扱う手つきからは長年の経験がうかがえた。
彼女の周囲は自然と調和しているようで、見ているだけで安心感を与える。
「ミアさんは本当に手際がいいわね。さっきまで森で探してたのに、もうこんなに畑が整ってるなんて」
マリアは感心したように声をかけると、ミアは小さく頷きながら答えた。
「この土地は良い土だから、植物がすぐに根を張るんです。フォレストヤムもプランタビートも、すぐに育ってくれると思いますよ」
「それにしても、一人で全部やるなんて大変じゃない?」
マリアが少し心配そうに尋ねたが、ミアはにっこり笑って首を横に振った。
「いえ、これくらいなら大丈夫です。畑仕事は好きですし、皆さんが護衛してくれたおかげで安心して作業ができました。だから、これは私のお礼のつもりです」
「お礼ね……。それならなおさら私たちも手伝わせろって言いたいところだけもまあ、ミアが楽しんでるならそれでいいわ」
マリアはミアに微笑み掛けた。
「ダリウス、俺たちは次の任務までの間はどうする?」
新しい剣術の型を教えて欲しいと思いつつ、ぼんやりと遠くを見ながら聞くと、マリアが即座に答えた。
「もちろん、休養でしょ? 今日は戦闘をしたし、ここで少し体を休めるのも大事よ」
「その通りだな。ここに来てから訓練詰めだ。無理して動き回るより一度休息をして次に備えた方がいい」
「……わかった」
拠点なら身体の疲労が早く取れるから問題ないのにと思いつつ、ミアが再び作業に没頭しているのを眺めながら、みんなは少しの間のんびりとした時間を過ごした。
静かな風の音や、土に触れるミアの穏やかな動きが心地よく、この短い平和な時間は貴重な癒しとなっているように思えた。
「よし、これで全部植え終わりました。しっかり育つといいなあ」
ミアは最後に手をパンパンと払って畑を見渡し、満足そうに息をついた。
「立派な畑だな。これからの収穫が楽しみだ」
ダリウスがそう言うと、ミアはにっこりと微笑んで答えた。
「ええ、きっとみんなの食卓を彩ってくれると思いますよ」
彼女の笑顔を見て、全員が自然と微笑み返す。
その日の夕方、太陽が壁の向こうに沈みかけた頃、俺たちはミアが作った畑を眺めながら夕食の準備をしていた。
フォレストヤムとプランタビートはまだ育っていないが、植えずに余った部分を使った料理が並ぶ予定だ。
「これで少しは食料の心配も減るな」
火をおこし水の入った鍋を上に載せる。
「それに、良い毛皮も手に入ったし、冬が来る前に防寒具が作れるといいのだけど。いつ裁縫ができる方が来てくれるかしらね」
ミアはそのやりとりを聞きながら、笑みを浮かべて夕食の準備を進めていた。
畑で採れたものはまだ少し先だが、それでも今日の収穫を元に料理をすることができることが嬉しそうだ。
「さあ、そろそろ食べましょうか」
出来上がった料理をみんなの前に並べた。
フォレストヤムの焼き芋料理と、プランタビートを使った温かいスープが湯気を立てている。
「これは……美味そうだな」
ダリウスが目を輝かせた。
「こういう食事が戦闘の後に最高ですね」
ハンナも頷いた。
みんながそれぞれ一口を運ぶと、ミアの料理の腕前に感嘆した。
フォレストヤムの甘みが引き立ち、プランタビートのスープは優しい味わいだった。
「これなら私たち、ずっとここで過ごしても良いかもしれませんね!」
冗談めかして言うと、ミアは笑いながら答えた。
「もしそうなったら、毎日新しい料理を考えなきゃいけませんね。でも、皆さんと一緒ならそれも楽しそうです」
その穏やかな会話の中、夜の静寂が徐々に森を包み込み、焚き火の揺らめく光が周辺を優しく照らしている。
ふと視線を感じて、方向を見てみると貴族様達がこちらを見ていた。
「働かざる者食うべからず。アイツらに食わせるなよ」
少し厳しめ声でダリウスが言う。
まあ、誰もあんな奴らに上げたりはしないだろうがもう一人の人物が気掛かりだ。
俺たちが出かけている間に男の方の小屋も穴が塞がっている。
「それならリサさんには良いですよね」
「当たり前だ。持っててもらえるか?」
「はい! 暖かいうちに渡してきます!」
器に料理を移して、女性用の小屋にハンナは向かっていった。
ハンナがリサの小屋へと向かう間、俺たちは残りの料理を味わいながら焚き火を囲んでいた。夜の冷たい風が少しずつ肌を刺すがミアの作った温かい料理がその寒さを忘れさせてくれる。
「リサもきっと喜んでるかしらね」
マリアが少し遠くを見つめながらそう言った。
「そりゃな」
ダリウスも頷きながらスープを一口すする。
その時、ハンナが笑顔で戻ってきた。
「リサさん、喜んでくれましたよ! 」
「そうでしたか。それはよかったです」
焚き火のパチパチという音が心地よく響く中、夜がさらに深まっていく。
俺たちはそれぞれ疲れを感じ始め、焚き火を囲んだまま静かに語らう。
「さて、そろそろ休もうか」
ダリウスが立ち上がり、焚き火を布で消していく。
皆もそれに従って、それぞれの寝床に向かう準備を始めた。
ミアは最後に畑をもう一度確認し、土の状態を確かめてから静かに戻ってきた。
「明日にはもっと畑が馴染んでくれると思います。少しずつですが、これで食料も安定しますね」
「本当にありがとう、ミア。これで俺達はもっと戦える」
「こちらこそ、みんなの力になれて嬉しいです」
その穏やかな言葉を残して、ミアも小屋の中へと入っていった。
夜は更けていく。
俺も明日のために眠りについた。
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