第2話 最後のチュートリアルです。

「扉の先にまた扉。それを潜ったらまた知らない平原って……」


「ほんとに不思議ですね」


「ここはカルミナ平原だと思う」


……見覚えがある平原だった。

アルカディア帝国の最東端にあるカルミナ平原のはずだ。

地面に生えているカルミナ草がいい特徴だ。

ただ明確な位置まではわからない。


「この、カルミナ草は傷に効くから持っておくといい」


【アレックスが“カルミナ草”を入手しました】


【カルミナ草 : カルミナ平原に自生する薬草。すり潰して血止めなどに使われる】


【採取アイテムは拠点に持ち帰れます。できるだけ持ち帰り、今後の役に立てましょう】


「なんなのかしらね。この窓は」


「まあ、とりあえず持てるだけ持てって事じゃないんですかね」


「それは雑草だ。カルミナ草は少し赤みがあるから」


「あ、ホントだ。これでしょ」


【マリアが“植生学”を習得しました】


「俺はよくわからないっす」


「私も見つけました!」


【ハンナが“植生学”を習得しました】


ここは地質がいいのかカルミナ草が群生地帯になっていた。

こんなところがまだあるなんてな。

もう一束、カルミナ草を掴もうとすると視界のすみが淡く光った。


「この光に先に行けってことですかね?」


「多分、そうじゃないかしら」


「気をつけてください。この草原にはゴブリンがいます」


武器を持たされてこの草原なら万が一にも戦闘になる気がした。

知っている情報は話しておくべきだ。


「わかった。なら、私が先頭に立つから皆んなはその後ろをついてきて」


「マリアは兵士か何かだったのか?」


「まあ、一応見習いだけどね」


思ったとおりだ。

だが、他に戦闘経験がありそうなのはハンナくらい。

俺を含めて三人は戦闘経験がないだろう。


「全員屈んで!」


マリアの指示に俺とハンナは素早く反応したがジャックとトムが咄嗟のことで屈まずにそのまま突っ立ていた。


「え、なに! なに!?」

「ちょっ! え?」


「ギャギャギャ!」


【任務開始! 全てのゴブリンを討伐】


「倒せって事ね。みんな私から離れないで!」


マリアが危機迫った声をあげる。

しかし、そんな指示を聞かずにトムは遠くに走って逃げ、ジャックの姿はない。


【トムがパニック状態になりました】


【パニック状態の英雄は指示を聞かないことがあります。戦闘経験を積ませることで影響を軽減または成りにくくできます】


アイツ、反応遅いくせに隠れるのはうまいのかよ!

いや、今は自分の身の安全だ。

ゴブリンの数は目の前にいる奴らで全部か。

数は5体。示し合わせたようにこっちと同じ数。


「戦闘経験はあるのか?」


「何度か。見習いだから多くはないけどね」


「私は動物としか。モンスターは初めてですけど弓の扱いなら」


「悪いが俺は一度もない。精々死なないように頑張るよ」


剣術なんてもってのほか。

剣なんて物を握る事が初めてだ。

奴隷に近い一般民が握る物はロープか重量物。


「やるだけやってみましょ!」


迫り来るゴブリンにマリアが剣を払った。

見習いだけはあり鋭い一振りだ。

しかし、戦闘経験が浅いからかゴブリンを掠めて刃は振り抜けていくが牽制にはなりゴブリンの歩みが止まる。

だが、五体のうち一体がトムに走っていく。


「一体そっちに行ったぞ!」


「ぅ、うわぁぁあああああ!!!!」


バリッ! グチャ!


「痛い!痛い!だれか!!」


【トムが出血状態になりました】

【トムが重症状態になりました】


トムの悲鳴が平原に響き渡る。

そして、段々と声が弱々しくなり、それと反比例して生々しい音が強く響く。


「助けに!」


「もう間に合わないわ! 諦めて!」


【トムが死亡しました】


【死亡した英雄は二度と復活しません。死なないよう的確な移動を指示してください】


視線に淡く光の道が映し出される。

ゴブリンの後方に迎えと言わんばかりの短絡的なルート。


「動いちゃダメ!」


俺も同意だ。

動いてゴブリンを刺激すればそれだけ死期を早めることになるだけだ。


【英雄達が指示を拒否しました】


視界の片隅で広がる文字の羅列が鬱陶しい。

逐一読んでる暇なんてない。


「ギャギャ!」


ゴブリンの一体が平原のある方向を指差した。

他のゴブリン達も空気の中に紛れる匂いを感じるように空を仰いだ。


ゴブリンの特徴。

でかい鼻と大きい目は発達している証拠だ。

……まさか!


「バレてるぞ!!」


【アレックスは“観察眼”を習得しました】


全てのゴブリンがジャックの元へと走っていく。


「なんで!! 来るな!!」


「ゴブリンの背後から一斉に叩くからついてきて!」


冷静で冷徹な判断。

ジャックを囮にしてゴブリンを倒す算段だ。

剣なんて払ったことなどない。


【ジャックが出血状態になりました】


でも、ここで俺は死にたくない。

生きるためにゴブリンを倒せ!!


「助けて! 早くぅぅ!!!」


【ジャックが重症状態になりました】


全力で力を込めてゴブリンの頭部に!!


「うぉおおお!!」


ゴブリンの頭骨が砕ける音が響く。

本来の剣の扱いである斬るとは全く別の鈍器のような使い方。

だが、今は一体でもゴブリンを減らすには十分だった。


俺とは違いマリアは綺麗にゴブリンの首を切り落とし、ハンナは矢で頭部を射抜いた。


すると残りの二体は焦ったように俺たちに背中を見せ、逃げようとした。

その隙を逃すまいとマリアはゴブリンの背中を斬りつけ、ハンナはゴブリンの頭部を射抜く。


【ジャックが死亡しました】


【任務完了】

・1000ゴールド

・くたびれた皮〈-F〉


【任務が完了されました。拠点へ帰還します】


【英雄のレベルが上がりました】

—————————————————————

• レア度: ★☆☆☆☆

• キャラ名: アレックス

• 職業: なし


ステータス

• レベル1→2

• 筋力: 6→7

• 体力: 6

• 敏捷: 7

• 知能: 7→8

• HP: 65

• MP: なし


スキル

• 探索 (初級) - レベル 3

• 体力強化 (初級) - レベル 2

• 観察眼(初級) - レベル 1 NEW


固有スキル

• なし

—————————————————————


• レア度: ★★☆☆☆

• キャラ名: ハンナ

• 職業: なし


ステータス

• レベル1→2

• 筋力: 8→10

• 体力: 9

• 敏捷: 10

• 知能: 9→10

• HP: 80

• MP: 0


スキル

• 狩猟弓術 (初級) - レベル 1→2

• 敏捷強化 (初級) - レベル 3

• 体力強化 (初級) - レベル 2

• 植生学 (初級) - レベル 1NEW


固有スキル

• なし

—————————————————————


レア度: ★★☆☆☆

• キャラ名: マリア

• 職業: なし


ステータス

• レベル1→2

• 筋力: 9→10

• 体力: 8

• 敏捷: 10→11

• 知能: 11→12

• HP: 85

• MP: なし


スキル

• 帝国剣術(初級) - レベル 1 →2

• 防御術(初級) - レベル 1

• 植生学 (初級) - レベル 1 NEW


固有スキル

• なし

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