第一章 始まりの叫び

第3話 レア召喚が1回行われました

【全てのチュートリアルが終了しました】


【レア召喚が一度だけ無料で行えます】


【レア召喚が実行されました】

—————————————————————

レア度: ★★★☆☆

キャラ名: ダリウス

種族: エルフ

職業: 剣士

性別: 男性

年齢: 32歳


ステータス:

• 筋力: 14

• 体力: 13

• 敏捷: 15

• 知能: 14

• HP: 120

• MP: 20


スキル:

 •エルフの剣術(中級) - レベル 1

 •回避術(初級) - レベル 1

 •治癒魔法(初級) - レベル 1


固有スキル:

 •エルフの俊敏: 敏捷性が通常より高く、素早い動きが可能。

—————————————————————


【レア召喚された英雄は高いステータスと高度なスキルを持っています。

戦闘に出すも訓練所にて他の英雄にスキルの伝授やステータスアップに貢献させるのも選択は貴方の手に委ねられます】


【これにて全てチュートリアルは終了します。

引き続き“ラグナロク”をお楽しみください】



***


「はぁ、はぁ……」


生きて帰ってきた。

何もわからずに戦い、目の前で二人死んだ。

訳がわからない。

なんなんだここは。


三人の絶え絶えの呼吸だけが拠点と呼ばれるこの空間に響く。


「大丈夫か?」


ふと知らない男の人の声が聞こえた。


「……エルフ」


最初、あの場にいたのは間違いなく人族の五人。

俺たちと同じようにこの場に強制的に連れてこられたのか。


「大丈夫だ」


二人は死んだが三人は無傷だ。

肉体的疲労や精神的疲労は凄まじいが立ち上がり話すだけの余力はある。


「アンタも気づいたらここにいたのか?」


「そんなところだ」


「……そうか」


この意味のわからない世界からの脱出。

そうしなければいつか死ぬ事になるだろう。

じっくりとあたりを見渡す。

街を囲む大きな壁。

空は薄く霧が掛かった雲と太陽の光。

壁をつたっていけばどこかに出口はあるだろうか。


「それで君たちいったいどこから?

自己紹介も含めて少し話さないか?」


エルフの男は三人を見渡す。


「自己紹介の前に休ませてもらってもいいですか? 先ほど色々あったもので」


「それはすまなかった。

先ほど水飲み場を見つけたからそこで話そう」


重たい足取りでエルフの男の後ろをついていった。

遠目からは小屋が立ち並ぶだけだったがおよそ集落と呼べる物の中心には井戸があった。

エルフの男はバケツを井戸に放り込み、水をすくい上げると古びたコップに入れて配り回った。


「まずは俺から自己紹介をしよう。

名前はダリウス。見ての通りエルフ族だ」


「私の名前はハンナです! よろしくお願いします。ダリウスさん!」


「ああ、よろしく」


「俺の名前はアレックス。よろしく」


「私の名前はマリアよ。よろしくね」


「アレックスにマリアだな。よろしく。

それで本題だがここについて三人は何か知ってるのか?」


「ごめんなさい。私達も先ほどここに来たばかりで知らない事だらけなの。

今ここに井戸がある事も初めて知ったくらいに」


「……そうなのか。一応、あの小屋に数日分の食糧になる乾燥したパンがある」


食糧の話をした途端にお腹がなり出す。

極度の緊張状態と戦闘により、体は食料を欲していた。


「取ってくる。三人は話しててくれ」


「ありがとう。お願いするわ」


多くのモンスターを倒した二人を動かすのは申し訳ない。

それにダリウスは既にここの情報を俺たちより知っている。

三人に情報交換をしてもらった方が有益なはずだ。


小屋の扉を開けると棚に粗雑にパンが置いてあった。

カビが生えていないのが不思議なくらいだ。

乾燥し、水分が抜け切ったカチカチのパンだが他に食糧らしい物はない。


「本当にこれだけしかない」


「今はこれで十分よ」


噛み切るにも一苦労なパンを口に放り込み、口の中で水で柔らかくして胃に放り込む。


【英雄達が食事をしています】


【今は素朴なパンだけですがより良い食事を提供できれば英雄のストレス値が低下し、任務遂行率が上がります。

食材は通常任務、自由探索任務、曜日ダンジョンなどで多く入手できます。】


【自由探索任務は3階クリア後、曜日ダンジョンは5階クリア後に開放されます】


視界のすみで忙しなく文字の羅列が動く。

食事の時くらいは消えて欲しいとそう思うと視界のすみの窓が消えた。


「この鬱陶しい窓、消えろと思えば消えるのか」


「ほんとですか?」


「ほんとみたい。いい発見。助かるわ」


 しかし、すぐに別の光の道が視界に表示され嫌な予感がして再度窓を表示させた。


【第2階層の攻略を始めます。門へと集合してください】


「ふざけないで。また戦えっていうの!?」


「また? どういう事だ?」


「さっき、私達3人はすでにゴブリンと一戦交えてきたばかりなの」


「つまり、これは戦えという意味ということか。拒否したらどうなる?」


「わからない。でも今は拒否するわ」


【マリアが出撃を拒否しました】

【アレックスが出撃を拒否しました】

【ハンナが出撃を拒否しました】


【連続で出撃させる場合、英雄が出撃を拒否する場合があります。十分な休暇を与えましょう】


口に出さなくとも意思的に否定する事ができるようだった。

そして、光の道は消えていく。


「拒否できるのね」


「よかったー……」


【訓練所の指南役にダリウスが設定されました。ログアウト中にも英雄は成長します】


【……ログアウト】


「よくわからないが俺は君たちを指導する立場のようだ」


「ダリウスさんはこれまで何してた方なんですか?」


「地元の衛兵だよ。小さい村のな。

だが、剣の腕には自信がある。回復魔法も少しだが習得済みだ」


「魔法! 私、魔法使える人は初めて見ます!」


「軽い傷程度しか直せないがな」


「それでも凄いです!」


先ほどまで疲れ切っていたハンナだが魔法使いに目を輝かせていた。

確かに魔法を使える奴は珍しいがそれよりも俺が今後生き抜く為にしなくてはいけない事は……。


「ダリウス。俺に剣術を教えてくれないか? 俺はここで死にたくないんだ」


初めて会う人にこんなお願い普通は断られるだろう。

しかし、今の状況なら。


「ああ、もちろんだ。明日から教えよう」


「私もお願いできるかしら?」


「もちろんだ。だが、マリアは剣の心得があるようだがそれでもか?」


「不思議な事を聞くのね。見ただけで貴方は私よりも優れた剣士よ。勘だけどね」


勘だけではないだろう。

発達した腕の筋肉とゴタゴタとした手はこれまで見てきた衛兵以上の物だ。

服一枚を挟んでもわかる隆々とした筋肉。

この男は強い。


「私はどうしましょう」


「すまない。弓は使えないんだ。

下手に教えるなら実践形式でハンナが独自にコツを掴んでいく方がいいと思う」


「実践形式……。お手柔らかにお願いします」


「善処しよう」


「なんで、もちろんって言わないんですか!」


「いや、手加減した訓練で君に死なれるよりかは遥かにマシだと思ってね。もちろん、心得のある方はより厳しくできると思うよ」


「そうしてくれ」


手加減した訓練はいらない。

俺はこの場の誰よりも遅れをとっている。

最低限、身を守る力を備えるためにも厳しい訓練が必要だ。


「よろしく頼む」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る