第12話 新たに英雄が召喚されました

「なるほどね」


現状の説明を新しく来た五人に行った。

しかし、上の空を見上げるような表情をしていた。


「確認したいことがいくつか。まず一つ。なぜ戦わないといけない?」


「それはこの空間から出るためで」


「戦ってれば出られるのか?」


リサにそう聞かれ、確かに戦い続けていれば出られるのは俺たちの憶測でしかない。

だが、出入り口がない以上クソ神のいうことを聞く以外に何もできないが俺たちを使い潰すだけの可能性もある。

ただの都合のいい駒なのか?


「それは……わからないわ」


「二つ。クソ神の言うことを無視したらどうなる?」


「それは……」


マリアは押し黙った。

もし今の現状を伝えたら目の前の五人はおそらく共には戦ってくれないだろう。

だが、真実は伝えなければ後々面倒な事になるのは目に見えている。


「俺たちは何度か拒否してる。だが、何も起きてないのが現状だ」


「アンタら馬鹿だろ。なんで、そんなでワザワザ死地に出向いている?」


ある種の目に見えない恐怖に怯え、盲目的にクソ神の言うことを聞く。

客観的に見たら確かに俺たちはただの馬鹿だ。


「まあ、確かに馬鹿かもな。だが、俺たちはそのクソ神のチカラでここに呼ばれ、閉じ込められているのが現状だ」


「なら、使えない駒は元の場所に帰されるって可能性もまだあるわけだ」


他の男三人がざわつき始める。

もう一人のおとなしそうなエルフはどっちにつくか迷っているようだった。

こうなってしまったら納得させるのは無理だろう。


「わかった。お互い好きなようにやろう。でも、食糧は自分達でなんとかしろよ」


「ああ、それでいこう」


お互いの行動指針がある程度決まった。

だが、問題はそれだけではなかった。

寝床となる小屋だ。

元々、男性と女性で分けて二つで使っていたが現状その二つしかない。

仕方がないから新規メンバーと共に寝るが狭い。

そして、何より汚い。


「こんなところで寝ろってか?」


「俺たちもここで寝てる」


虫が湧いてるかもしれない藁布団。

男三人はどうやら村か都会のそこそこいいとこの出身みたいだ。

先ほど食糧庫を案内して食べてる物を見せたら露骨に嫌な顔もされている。

おそらく、俺はコイツらと仲良くできない。


「そういえば倉庫に布があったな。いいとこのぼっちゃん達が身体を冷やしちゃ悪いだろうからそれを使って寝るといい。限られた資源の中でも貴重品だから綺麗に使えよ」


「なんだ、あるんじゃないか。お前ら本当に馬鹿なんだな。藁なんかで寝るなんてよ」


「俺たちには十分だから早く寝ろよ」


三人は小屋を出て行った。

やっといつもの空間だと胸を撫で下ろした。


「てかアレ。ゴブリンのふんどしかなんかだぞ」


「現状の貴重品である事は間違いない。お前も明日は何があるかわからないんだから早く寝ろ」


「そうだな」


俺も横になるとしばらくして三人が戻ってきた。臭いだなんだと騒いでいるようだった。


「たく、子守唄が必要な歳でもないだろ」


眠りに落ちそうな時に鈍い生々しい音が何度か響くとのと同時に三人の声が消えた。



「そっちは寝れたのか?」


「こっちわね」


ハンナは昨日の夜のうちにミアと仲良くなったようで楽しそうに今も談笑している。

ただ、俺たちの時と違い誰も戦闘方面の経験は一切ないようだった。


「それになんか、そっちの小屋綺麗になってないか?」


隙間風が抜ける程度には穴が空いていたりしたはずだがそこが綺麗に塞がっていた。


「リサさんが治したのよ。女性が住む小屋に穴が空いてるとかどんな冗談だよって」


思い返せば確かに今まで気にしなかったが世間一般的にはおかしな状態の小屋だった。

木材は倉庫にいくつかあったからそれを使用したのだろう。


「意外と悪くなかったみたいだな」


「まあね。そっちの三人は?」


「残念ながら」


今のところはこれといった特技は見せてもらってない。


「貴族は基本徴兵を課されているのかと思ったが違うんだな」


「あの男三人は貴族なの?」


「多分な。環境が悪いと文句が止まらんから」


「そうなのね。でも、一応訂正しておくけど貴族がみんな徴兵されるわけではないわ。徴兵されるのは家族の中でも一番下の位の人達よ」


「そうなのか」


なら、それなりに高貴な奴らなのかもしれやい。

その高貴な三人組は今も遠くで何かを探すようにウロチョロしている。

出入口はないと言ったのに自分で確かめないと性に合わない性格なのかもな。


「皆さん! 聞いていください! ミアさんはなんと元々農家だったみたいなんです!」


「は、はい。基本的な植物でしたら面倒を見ることはできると思います」


「そうなのか」


だが、ここではそんな経験……。

役に立たないと思ったがそういえばやたらと土がある場所があったはず。


「ミア、ちょっといいか?」


「はい。大丈夫ですがどこへ?」


「見て欲しい所がある」


俺は別に土地の専門家でも植物の専門家でもないわけだがあの土壌ならたぶん。


「ここ一体が他の地質と違うが植物の栽培とかできたりするか?」


「こんな場所あったんですね」


小屋や訓練所と少し離れた位置にある。

普段、そこを行き来しかしないなら目に入らない場所だろう。

ミアは土を触ると固かった表情が緩み、微笑んだ。


「できると思います。やわらかい良い土ですよ」


「そうなんですか!?」


「でも、現状種がない。アストラルの森に行けば何か見つかるかもしれないけど」


「アストラルの森は多くの植物があると聞きます。ですので、何か見つかるかもしれません。なので私を連れてって頂くことはできますか?」


「……うーん。どうしますか?」


戦闘経験のないミアを守りつつアストラルの森を散策することは十分に可能だろう。

前回もモンスターとそこまで遭遇しなかったし、数も決して多くはなかった。


「ダリウスに相談してみよう」


健康を意識するなら野菜も食べないといけないとダリウスが言っていた。

ここで植物を栽培できるなら健康を意識した食事はかなり改善されるはず。


「一応、カルミナ草はできるか?」


「十分にできると思いますよ」


それなら何も見つからなかったらカルミナ草を栽培してもらえればいいだろう。



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