第19話 住居を改築しましょう

【探索で以下のアイテムを持ち帰りました】

ドリュサンテの木材 × 10


【建築スキルを持つ英雄が自発的に建物を強化していきます。優先順位を指示する事もできます】


【ステータスの更新があります】

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レア度: ★★☆☆☆

• キャラ名: リサ

• 職業: 大工


スキル:

• 大工技術(初級)- レベル1

• 目利き・木(初級)- レベル1 new

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探索を終え、無事に拠点へ戻った俺たちは、持ち帰ったドリュサンテの木材を見つめていた。この木材は非常に硬く、耐久性にもあり、建築するためには最適な材料だそうだ。

早速、彼女は作業に取り掛かる準備を整え始めた。


「リサ、優先的になにをするつもりなんだ?」


「まずは小屋だ。狭い、壁が薄いに加えて断熱性は皆無の隙間風残念住宅は懲り懲りだろ。この木材なら風雨に耐えられるし、生活の質がぐっと上がる」


「助かるよ」


「でも、職人は私しかいない。お前らは戦闘訓練でミアは農作業。時間は死ぬほど掛かるからな」


リサの言葉に俺たちは顔を見合わせる。

彼女一人に全てを任せるのは申し訳ないが、他に建築の知識を持つ者はいない。

俺たちには戦闘、そしてミアには農作業という各自の役割があるため、建築に時間を割ける状況ではない。


「リサ、何か手伝えることはあるか?力仕事なら俺たちも手伝える。」


ダリウスが声を掛けた。

リサは少し考えてから、ため息をついた。


「そうだな……手が足りないのは確かだし、単純な作業なら手伝ってもらえると助かる」


「了解だ。力仕事は体力作りになるから必要になったら構わず呼んでくれ」


「わかった。その時は頼らせてもらう」


リサは工具を手に取り、まずは小屋の改築から始める。

ドリュサンテの木材を使って屋根と壁を強化し、風雨を遮るための加工を進めていく。

木材は硬いが、リサの熟練した技術が着実に作業が進んでいるのが目に見えた。


俺たちは言われた通り、彼女が指定した部分を支えたり、木材を運んだりして手伝ったが、それでもリサ一人で全てを取り仕切るのは大変だ。

作業の途中で、リサが少し疲れた表情を見せる。


「少し休まない?」


マリアが心配して声を掛けると、リサは少し眉をひそめたが、すぐに頷いた。


「そうだな。今日の作業はここまでにしておこう。明日もあるしな」


全員で作業を一旦中断し、リサも休憩を取ることにした。

ミアが用意してくれた軽食を食べながら、リサは少しだけ笑みを見せた。


「手伝ってくれるのは助かるよ。ありがとう。だが、訓練の方はいいのか?」


「訓練の方はなんとかなる。それにこの仕事量をお前一人に任せるのは酷だし、俺たちもできる範囲で手伝うよ。」


ダリウスが言い、皆が頷いた。

リサはダリウスの言葉に安堵の表情を浮かべ、再び木材に目を向けた。


「ありがたい。明日からはもっと効率よく作業が進ませる事ができると思う。初めて頭をやってオヤジが何を考えて指示を出していたのか感覚的にわかった気がするからな」


「オヤジさんってどんな方なんですか?」


「ああ、ただの仕事大好き人間だよ」


リサは小さく笑った。


「オヤジは名の知れた大工でな。私も幼少期の頃から技術を叩き込まれた。何回も殴られたし、蹴られたし。女だろうが関係なく皆んなと一緒に力仕事もやらしてもらった。まあ、実際に一人で責任を持って作業を指揮するのは今回が初めてだかどな」


「親父さんは厳しい方だったんですね。でも、リサさんはオヤジさんの事尊敬してるのが伝わります」


リサは少し照れたように肩をすくめた。


「まあな。親父の背中を追いかけてきたつもりだったが、こうして自分でやってみると、あの人がどれだけすごかったか、改めて思い知るよ」


リサは少しだけ遠くを見つめるようにして言葉を続けた。


「オヤジはどんな難題にも文句一つ言わずにやり遂げる人だった。それこそ、崩れかけた家だろうが、ボロボロの橋だろうが、材料がなくても工夫して仕上げてた。それを見て育ったから、私もできるだろうと思ってたが実際は簡単じゃないな」


彼女の声には自分への苛立ちが混じっていた。リサは自分の未熟さに苦しんでいるのかもしれない。


「焦るなよ。オヤジさんだって最初から完璧だったわけじゃないだろ?」


リサは少しだけ口元を緩めた。


「まあ、そうだな。無理せずにやっていくさ」


その後、休憩が終わると、リサは再び作業の段取りを確認しながら準備を整えていた。

明日からも作業は続くが、彼女の決意は固まっているようだ。


「まずはこの小屋をしっかりとしたものに変える。その後で、他の建物にも手をつけていくつもりだ。時間はかかるが、確実に生活は楽になる」


「そのために俺たちも協力する。全員で力を合わせれば、もっと早く進むはずだ」


「頼りにしてるよ。お前たちがいるなら、なんとかなるさ」


リサは笑顔でそう言い、再び手元の作業に集中し始めた。

俺たちも明日のために戦闘訓練に取り掛かった。


翌日、俺たちは朝からリサの作業を手伝うために小屋へ向かった。

彼女はすでに準備を整え、木材を整えていた。


「今日はどこをやるんだ?」


ダリウスが声を掛けると、リサは指で屋根を指し示した。


「今日は屋根の補強だ。これで雨漏りもしないはずだし、断熱効果も少しは期待できる」


今のところここで雨は降ったことはないがこれからも降らないという保証はない。

備えておくべき事はやっていくべきだろう。


「よし、手伝おう」


俺たちはそれぞれ指定された作業に取り掛かり、リサの指示に従って木材を運び、支えたり、組み立てたりしていった。

リサの技術は明らかに俺たちの誰よりも上で、細かい部分まで見逃さず、時々怒号が飛ぶ。

でも作業が進むたびに、小屋がどんどんしっかりとした構造になっていくのが目に見えて分かる。


昼過ぎ、ミアが飲み物と軽食を持ってきた。

皆が一息つくために集まり、リサもようやく手を止めた。


「今日は順調だな」


「そうですね。建物の形が変化すると進んだって実感も持てます」


リサは嬉しそうに屋根を見上げながら、微笑んだ。


「あと数日ってところだな」


「それもこれもリサさんの技術があってこそですよ」


彼女の頑張りに感謝しながら言ったが、リサは少し照れたように肩をすくめた。


「まだまだだよ。オヤジならもっと早く終わらせるだろうしな」


「それでも、俺たちは感謝してる。リサがいなければ、この拠点は今のままだった」


リサは黙って頷き、再び作業に戻る準備を始めた。

俺たちも休憩を終えて、再び手を貸すことにした。


数日が過ぎ、小屋の改築はほぼ完了した。

屋根はしっかりと補強され、壁も強化されて隙間風が入らなくなった。

断熱材として使われたドリュサンテの木材のおかげで、小屋の中は以前よりも暖かく、居心地が良くなった。


「これで完成だな」


【英雄達の住居が改築されました。ストレス値が上がりにくくなります】


リサは最後の仕上げを終え、工具を片付けながら一息ついた。


「本当にありがとう、リサ。これで安心して休める」


ダリウスが感謝の気持ちを込めて言ったが、リサは軽く手を振って笑った。


「まだまだやることはたくさんある。他の建物も強化しないとな」


「確かに。でも、ここまで来たのはリサのおかげだ」


「お前たちの手助けもな」


リサはそう言いながら、工具を片付け終わると、皆に向かって笑顔を見せた。


「さあ、次は何に手をつけるか決めようじゃないか」


俺たちはそれぞれが笑顔で頷き、次の計画を練るために集まった。

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