1章4節
1章4節
魔法使い達は、自らが入ってきた入り口まで辿り着き、洞窟内のひらけた場所に到着した。
「しかし、なんであんなところに科学兵、メタリアンがいたんだろうか」
火の玉を従えた魔法使い、ラファがもう1人の魔法師に話しかける。
「知らないね、気づけたんだし、結果オーライだろう」
「そうだよ、そもそもなんで火の玉が浮かんでいたんだ、あいつらは暗視ゴーグルがあるのに火を付けるのはおかしいだろ」
炎使いは疑問を追求し始めた。どうしても気になったからである。
「もういいって、それより他のメタリアンがいないか確認しろよ」
風使いのシドは自分の身を魔法で守っていないラファを警告した。
本来魔法使いは奇襲に備えて、自分の魔法を身の回りに浮かべることで、攻撃が直撃するのを防いでいる。魔法族は科学族と違い、体が頑丈ではないためである。
シドは自らを中心にしてつむじ風を起こし、攻撃の軽減と索敵を同時に行なっていた。
一方でラファは、考え事に熱中していたため、無防備な状態になっていた。それがシドにとって気がかりであった。
「おそらく敵に捕まった私たちの仲間が、抵抗するつもりで誘導してくれたんだろう」
「それは本当か」
「あくまで可能性としてだ。洞窟のどこかに捕まっているのかもな、だとすると敵がまだいてもおかしくない」
シドはラファを落ち着かせるため、話を続けた。
「そう考えると、身を守っていないのはかなりまずい、分かるだろ?」
「おう、念のために備えておくか」
そう言うとラファは魔法を身の回りに張った。
(敵がいるか……)
説得するつもりで言ったものの、自分でもあり得るとシドは考えていた。
敵がこんなところに1人で来るわけがない、そしてあの炎はどうみても松明などではなく、宙に浮いていた。今の技術力で炎を宙に浮かせられるのは、魔法の力以外ありえない。
(少し前にこの洞窟の奥へ進んだ1人が、行方不明になったが、洞窟内で敵と遭遇して捕らえられている可能性はある)
敵がここにいたのも様子を見に来たため、そうシドは考えた。
考えがまとまっていくと同時に、辺りがより明るくなった。ラファが魔法を使ったからである。
その瞬間に、シドは異変を感じた。
(つむじ風が止んだ……)
前を向くと、先ほど死んだはずの兵士が、自分たちの前に現れていた。
「おいおい、くたばってなかったのかよ」
2人の視界に、先ほど手榴弾を跳ね返されて死んだはずのモルゼが姿を現し、戦慄させた。
「もう一回寝てもらおうか」
2人は杖を構えて、その先端に魔力を込めた。
「ほう、なかなかの魔力だ、ルーンの変換もスムーズ」
モルゼは持っていた銃を捨てて、片手をかざした。
「かなりの腕、しかし相手が悪かった」
シドは風で斬撃を放とうとしたが、風を動かすことができなかった。
「手のひらをピッタリ合わせて、均等な力を加えると、お互い手は全く動かなくなる。俺はそれを風でやれる」
サマルが指を鳴らすと、シドの体が一瞬で燃え上がり、絶命した。
隣に居たラファも炎を操って止めようとしたが、炎はちっとも動かなかった。
(ダメだ、少しも動かせねぇ。精密性もパワーも段違い、何者だコイツ――)
サマルはラファの方に視線を動かした。
「体内の気圧を上げて、外の気圧を一気に下げたらどうなると思うか」
ニヤニヤとした表情を浮かべて、サマルは話しかける。
「上等兵、大丈夫ですか」
横の穴からアロン一等兵が様子を見に現れた。それを見たラファは、アロンに殺意を向ける。
「せめてコイツだけでも――」
その言葉が彼女の最期となった。頭は風船のように割れ、顔のパーツは暗闇に吸い込まれた。
「一体何が……」
アロンは敵が急に倒れたため、何が起きたかよく分からなかったが、モルゼが魔法を使ったことは、一目瞭然だった。
「うっ」
サマルはうめき声をあげた。
体内の魔力を使い切って、サマルはその場に伏した。目の前の状況を理解するのに、アロンは思考を働かせるので精一杯だった。
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