2章4節
2章4節
モルゼとサマルは、遊撃隊の陣地から抜け出し、海岸の方へ向かっていた。サマルに飛行を任せて、モルゼは小型の端末で調べ物をしていた。
「この近くに、ちょっとした街がある。そこで補給するぞ。お前は食糧まで持ってきていないだろ」
「ほう、確かにいいアイデアだね。でも、なんでそんなこと知ってるんだい」
サマルは不思議に思った。主要な都市ならともかく、街程の大きさの集落を、いちいち覚えていることに。
「ここら辺に土地勘でもあるのかい」
「いや、端末で調べた」
モルゼは来ている戦闘服の手のひらを広げて、もう片方の手でボタンを押した。
「この端末でマップが見られるのさ。しかも、マップだけじゃない。天気に電子決済、通信に計算機、色々な機能がある」
モルゼは端末をスクロールしてみせた。
「ただ、バッテリーは充電しないといけない。それもあって、休憩できそうな集落を探した」
「なるほどねぇ」
「おっと、そこを右に曲がってくれ。しばらく進めば着くぞ」
指示に従い、サマルがルートを進むと、モルゼの言う通り街が前方に見えてきた。
街の規模としては、学校や病院らしき建物、公園などが見えた。道はコンクリートで舗装され、そこに電柱が並び立っていた。
「おい、あれはなんだ」
サマルが指差したのは、映画館やボーリング場などが併設されているジョッピンクモールだった。1650年頃に科学族が山を越え、大陸の西側に集落を作って以来、西側で最大手の店である。
「あれは開拓時代から、物の流通に関わっている店だ」
「そんな店があるのが」
「正確には企業だが、まあそんなところだ」
サマルはその店に興味津々になった。今までも人間の店は見たことがあるものの、ここまでの規模は初めてであり、何があるのか見てみたいと思った。
「おい、あの店に行こうぜ」
「は、何言ってんだお前。俺たちは逃亡中なんだ、迂闊に人前に出るわけには……」
「それはそうなんだが。そうだ、変身を使おう。それなら問題ない」
サマルのあまりの熱量に、モルゼは押されていた。
「何でそんなにあそこに行きたいんだよ」
「特に理由はない、行ってみたいにそれ以上の理由を求めるなよな」
「なんだそれ」
モルゼ自身も、連日の任務で疲れていたため、喫茶店にでも行って、くつろぎたかった。しかし、サマルに連れ回されることを面倒に感じていた。
「分かったけど、ちゃんと体を休める時間をくれよ。お前もこの体の疲労感を感じてるだろ」
「オッケー。それじゃあ早速――」
早速行こうとした瞬間、悲鳴が2人の下から聞こえてきた。サマルはうんざりした様子で、急降下し始めた。
「2秒でカタを付けてやる」
怒り心頭に発した悪魔は、自由落下とともに銃を展開し始めた。
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