第11話 好きと嫌い
” 。。。 ”
叶斗兄様の優しくて大きな手で撫でてくれるとこが好き、颯兄様の真面目で頭がよくていろんなことを教えてくれるとこが好き、燐音兄様の本を読む時の柔らかい声が好き、悠紀兄様の作ってくれたあの甘いお菓子を渡してくれた時の笑顔が好き。そんな兄様達のことが大好き。でも、兄様達なんて嫌いだ。
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家族を滅ぼす?僕より強い兄様達が居るのに……何言っているのだろう。
「力を必要としていない、だから僕の力は弱いまま。そういったのになんで僕にそんな悪魔みたいな誘いをするわけ。」
「ふっ、そうだな。お主に憎しみという名の憎悪を増させ、滅ぼすために力を欲するであろう?そうしたら、使える、そして滅ぼすことができるであろうよ。」
くつくつと笑いながら近寄り、僕の髪を一束手に取り口づけしてくる。
「だから、我とともに滅ぼさぬか?」
妖艶に笑う鬼に、わ、キモチワル、なんて思ったのは心にとどめておこう。
再度誘われた、そこまでにしてこの鬼は僕の家族を滅ぼしたいのだろうか?祓い屋なんて他にも居る。わざわざ強い家系から滅ぼすか?弱者からじわじわと内側を破壊するほうがいいだろうに。
「……僕が断ったらどうするわけ。」
正直、気になった。断ってしまえばこの鬼に味方がどのくらいいて戦力がどのくらいあるのかは知らない。けど、僕の力を必要としている感じ、そこまではない気がする。
そう問いかければ鬼は不敵に笑ってこう言った。
__そんなのお主の命を奪う一択なんだがのう。
要するに断れば殺されるということなのだろう。脅しとしては結構効果的に思えるのかもしれない。でも、正直に言うなら死ぬ死なないはどうでもよかった。自分の命と引き換えに救える命があるならそれでいい。
まぁ、建前であって綺麗事だ。俗にいう偽善者なのだろうか。
ああ、あとしいと言うならこの鬼に従ってはいけない気がした。家族を殺しても最終的には僕も殺される気がした。なら、断るべきなのだろう。
なのになんで、揺らいでしまうのか。
それは多分、いや確実に心のどこかでそれを望んでいるから。
「……、保留、それじゃだめ?」
少し整理したかった、というのもあるけど、今この場で答えても勢い任せだ。後悔する選択だけはしたくなかった。
鬼は少し考える素振りをしたかと思えば、まあよい、とぶっきらぼうに答えた。
「ただし、今宵から数えて三つほどまでにこの場所で答えを聞かせてもらうぞ。それ以降は待てぬ、過ぎたらお主の命を奪う。よいな。」
「…分かった。」
そう答えると鬼は闇夜に消えていった。
いつの間にか日の暮れたあたりはしんと静まっていた。
帰る気には微塵もならなくて、近場のコンビニに寄ることにした。何か甘いものを食べたい気分というのもあった。ついでに小狐君にお土産でも買おう。あそこのコンビニにはなんでか油揚げも売っているのだ。
公園をあとにして、歩きだす。
僕は、家族を兄様達をどうしたいのだろうか____
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