第1話 価値

僕の家族は祓い屋だ。それも他の祓い屋より優れ、衰えることを知らない、そんな祓い屋の一族。僕はそんな家族の末っ子にして落ちこぼれ、。兄様達は僕とは違う立派な人で、父様も母様もみんなすごい人たちだった。でもっ、僕は、僕には才能なんて、力がない、。


「だから、だから、みんな、、、」



ーーーー僕を見てくれないんでしょ。



(なんて、考えたところで無駄か、、、。考えている暇がもったいない、。できない分補わないといけないんだ。)

僕は落ちこぼれ。それでも他の人に比べればそこそこの力はある。こんなのでも一族の血を引いているから。そんな僕ができるのは家族の、特に兄様達の足手まといにならないこと。そのための鍛錬はおこたらないし、依頼も全部こなしてみせる。それが僕のできる最低限なんだから。

「叶葉様、当主様がお呼びです。」

不意に背後から声をかけられた、けどこの家では当たり前なのだ。

「…分かった。今から行きます、そう伝えといて。」

そう伝えるとふと姿を消す、これもまた当たり前の日常。なんせこの家には僕たち家族以外に妖狐、狛犬、猫又、鎌鼬とかいろんな妖が一緒に住んでいるから、伝達はだいたいその子達がしてくれる、だから消えたりとかするのだ。まぁ、妖らしいよね。

(あ、違う、そんなことしてる暇ないんだった。父様のところに行かないとなんだ、。)


「嫌だな……」


ぽつりと声に出す




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「父様、叶葉です。」

扉を軽く三度ノックしてから扉に向かって声をかける。

「入れ。」

「失礼します。」

扉を開けると無愛想という言葉が似合いそうな父と僕のことは眼中にもないといいたげな兄様、いや、叶斗兄様が居た。

(なんで叶斗兄様がここに、、、。)

正直、この場に叶斗兄様が居るとは思わなかった。任務以外ではどんだけ居るんだってくらいの婚約者?って人たちと居たりそこら辺うろついて僕と会話する気もない見る気もないような人だから、。

「……叶葉よ。ここに呼ばれた理由はわかるか?」

思考を遮るような重たい声、いや、けだるげな声、といったほうがあっているか。

それにしても理由なんてばかばかしい、依頼なら依頼といえばいいのに。

「依頼ですか?」

「ああ。今回は叶斗と協力し鬼を祓え」

は、?父様は今なんと?叶斗兄様と協力?

「とうさっ」



「父さん、こんな落ちこぼれと協力せずとも俺一人で倒せますよ?」



異論を述べる好きもなくサラリと反発し嫌味をいってくる兄。間違ったことは言っていない、それでも実の妹に言う事?いや、仕方ないか、父様の考えに瓜二つとも言える叶斗兄様だもの、。

そんな僕と叶斗兄様を見比べため息をついてはまた重たい口を開いた

「確かに叶斗の言う通り叶葉は落ちこぼれだ。」

「っ……」

「しかし我が水竜家で唯一水神の加護を得た。その事実だけは確かだ。その加護を利用せずどうする、それ以外に使い道なんてないのだから。」

「ああ、それもそうですね。」



この人たちは今なんて言ったのだろう。

落ちこぼれは事実だから否定はしない、でも水神様の加護を利用する?

そんなの、許されるわけない、

(僕は、僕は落ちこぼれなりに鍛錬も依頼も全部こなしてきた、それだけじゃだめだっていうの?)



”ああ、でもこんなこと分かりきったことか。”



どんなに鍛錬を頑張っても、依頼をたくさんやっても、水神様の加護を持っていようとも、兄様達には結局勝てない。だから僕を見る目は変わらない、兄様達に勝たなきゃ、兄様達より強くならないとこの状況も変わらない。

そもそも加護すらもなかったら本当の落ちこぼれになる、利用すらもされない本家の厄介者、。

この現状が虚しくない悲しくないなんて言ったら嘘になる、それでも僕には兄様達を超えられるほどの力がない、妖力も劣っている、そんな僕が勝てるわけない、、、。


僕の価値なんて加護を持っている、ただそれだけなんだ。

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