第2話 名前

”     水神の加護     ”



それは癒やしの力を持ち水を扱う者とは相性がよくその者の最大限の力を引き出し危うい状況下になればいつ何時であろうとも守りの力を発する、とそう言い伝えられている。そして水竜家はかつて水神を祀り自らの守り神としていたそうだ。それは現代へと続き今もなお守り神として祀っている。そんな水竜家ではまれに水神に愛されし子が現れるという。その子は………



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「さっさっとついてこい。落ちこぼれが。」

ぼんやりとしていた意識を引き戻された感覚、ああそうだった。僕は今、叶斗兄様と一緒に父様から指示された鬼の討伐に来ているんだった、。

「…ごめんなさい、少し考え事をしていました。」

「たく、これだから君は落ちこぼれなんだ。」

冷たい視線が突き刺さる。

「ごめんなさい、」

僕はただ、謝ることしかできなかった。そんな無力な自分が憎くてしょうがない。かと言いって僕になにかなせるのか、そう言われると答えはノーだ。簡単な話、僕にはなんの力もないからだ。って、これ今までに何回考えたんだろ、。思い出せないってことは、それなりに考えたんだろうけど、まぁ気にすることじゃないか。

その流れで昔の、僕が本当に小さいときのことを思い出してみた。物心が付き始めた頃、僕は泣き虫でよく泣いていた、あれが怖いだとか一人で居たくないとか転んで傷が痛いとか、いろんな理由で泣いた、今考えればなんで泣いたっだろうなっていううのもある。でもその度に兄様達が慰めてくれた、そう、昔は兄様達とは仲が良かったんだ。いつからこうなったんだっけ、。もう昔すぎて覚えてないや。



でもねこれだけは分かるんだ、また昔みたいになりたいってね、無理なんだろうけども。



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(それにしても一向に鬼の気配も何もない、怖いくらいに静かだな、)


あれから無言の時間が続いた。

僕たちの足音、動物たちの声が聞こえる、遠くからは街の音が。

父様曰く、その鬼は人の少ない路地によく出てくる、とかなんとか。そしてその鬼はここに入り込んだ人を誘惑し最終的に襲い喰う。だから祓い屋に依頼が来た。

正直なところ、僕が出る幕はほぼないに等しい。行く意味あるのかすら疑問になるくらいだもん、しょうがないよね、かといって父様の命令を断れるほどの地位や権力はない。

(なんで僕なんだろ、加護の力なんてあっても戦力外だろうに、。)

そんなことをぼんやりとまた考えていた時だった。



「!?叶葉っ!!よけろ!!」



一瞬で目の前の景色が歪んだ、その時一瞬だけ見えた叶斗兄様の慌てた顔に叫び声。

時間が立つに連れ足元がふらつき立っていられなくなる、地面を見ればなんでか真っ赤に染まっている、頭も割れるように痛い、それでも思考はいたって冷静だけど邪念ばっかりだった。


(僕、今どうなっているんだろ、頭でも殴られたのかな、ああでも、、、)



” 久々に叶斗兄様に名前呼ばれたなぁ、、、。 ”



僕の意識はそこで途切れた。叶斗兄様の心配している声を最後に……。

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