第5話 長男

”    幼い頃に見た兄の姿    ”


泣いたときに撫でてくれた暖かい手が僕の名前を優しく呼ぶ声が好きでした。

兄様の力が実力が憎くて、妬ましかった、それでも兄様が好きでした、。



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師匠は少し遠くを見据えながらゆっくりと口を開き、叶斗兄様について話してくれた。



” 叶斗は幼い頃から才能があった。でもそんな叶斗を水竜家の守り神は見向きもせず加護を与えなかった。その事実は変わることもなく、叶斗はそれを未だに受け入れられていない、そして自分よりも幼く力もなかった妹が水竜家の守り神に愛され加護を与えられたことに嫉妬した。しかし周りは才能のある叶斗の方を大切にした、正確に言うと四兄弟を、。


この優越感に浸っていたい


そう思ってしまった叶斗は大切に、必要とされるように行動をした。そして妹を見下し、落ちこぼれと罵ることで自分は正しいと、上なんだと、思わせていた。

だけど叶斗は本心から妹を見下すことも罵ることもできなかった。理由は簡単でただ好きだから。好きだけど自分にないものを与えられた妹に嫉妬をし憎んだ。それでも好きというのは消えなかった。だから叶斗は妹を避けた。 ”



「……とまぁ、俺が知っているのはこれくらいだな。」

一息ついては悩みに悩んで買ったメロンソーダを飲んでは僕達の方に向き直る。

「つまり、叶斗さんは叶ちゃんを好いている、けれど嫉妬心があるってことなのか?」

「だとしたら叶ちゃんの言っていた行動にも納得がいくよな、。」


確かに冬君や柚君が言っていることは正しいのかもしれない。僕も、結局同じだったから。


「叶ちゃん?どうしたの?」

ずっと黙っていたのが気になったのか心配そうに顔を覗きこまれた。今、この場で考えるのは危ないかもしれない、。なら、、、。


「んーん、なにもないよ。二人の言う通り師匠の言ったことが本当なら納得いくよね、。」

「やっぱり叶ちゃんもそう思うか?」

「うん。あ、そうだ、僕用事思い出したからちょっと行ってくるね。」

「りょーかい、まだ病み上がりに近いんだから無理しちゃだめだよ!!」

「うん、気をつけるね。それじゃ、行ってきます。」

「「行ってらっしゃい!」」


僕は逃げるようにその場を去りゆっくりと歩いた。一つのことを、叶斗兄様のことを考えながらひたすらに歩いた、。目的なんてなにもないまま、ひたすらに、、、。


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叶斗兄様、僕ね。兄様が羨ましかった。


だって兄様には僕と違って術が劣ることもなくて、実力がちゃんとあって、周りから天才と称えられて、母様からも父様からも愛されていて、必要とちゃんとした評価をされていて、そんな兄様が僕は羨ましかった。兄様は確かにそばに居たはずだったのにいつの間にか遠い存在になっていた、離れていった。

久しぶりに話したかと思えば落ちこぼれと言われ見下された、今までそんなことはなかったはずなのに僕の知っている兄様がどこかに消えてしまったみたいに思えた。なのに兄様の本質が変わることはなくて、ただ兄様は僕が嫌いになってしまったんだそう思い込んだ、でもたまに見せる幼い頃に見た兄様の面影をみると追いかけてしまう、嫌いになんてなれなかった。


嫌いになんてなれるわけがなかった。


ずっと好きなままだった……。

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