第12話 迷い
” 家族 ”
僕は家族というのがいまいち分からなかった。優秀な兄の妹、名門の娘、加護持ち、だからたくさん期待されて、力が分かるまでの幼少期の間は愛されていた、はず。少なくとも兄様達とは仲が良かった。力の有無、強さを知るための試練がある日、あの日、僕は力は兄様達よりも明らかに弱く、通常より少し強いだけという、そんな結果だった。あの日以降、父様は冷たくなった、兄様達とはまだ仲が良かった。でも、僕が小学校に上がる頃にはもう、関係が冷めきっていた。力がないと分かった瞬間、離れていった。だから、家族とどうこうなんて僕には分からなかった。
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コンビニで油揚げとなんとなく売っていたいちごオレを買って、渋々ながら帰路についた。まだ、兄様たちはいるのだろうか、という不安はあるもののずっと帰らないのも小狐君に心配かけちゃうから。とはいっても、最近の小狐君はどこかに行っていることが多い。ずっと変わらず式神として居てくれた小狐君、長く一緒に居たとは言え、見限られてしまうことはある、最近はそれが不安でしょうがない。でも、聞ける勇気なんてなくて、こんなことを聞いてしまえば嫌われてしまう気がした。
そんなことを考えている時、誰かの走ってくる音が聞こえてきた。その足音は聞いたことのある感じの音。僕の予想があたっているのなら、今一番会いたくない人の足音だ。そう分かれば、ゆっくり歩いていた足が速まっていくのが分かる、それに伴うように聞こえてくる足音も速くなる。予想が確信へと変わった、気がする、そうと分かればやることは一つ、逃げる一択だ。
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「はぁっ、はぁっ、ここまでこれば…大丈夫、なはず、。」
ひたすらに走った、家が見えてきたけど、追いかけていた人が先回りしている気がして帰るのは気が引けた、だから目前で引き返して付近にある河原に来たのだ。走り疲れ、息を整え、辺りを見ると人影……いや、あやかしの影が見えた。あの影は…
「小狐君…?」
そう思い近づいてみると、そこにいたのは小狐君だった。
声をかければ少し驚いたように、目を丸くしくりくりとした瞳で見つめてきた。
「主様?こんなところでどうしたのですか、?」
問いかけになんて応えようか少し悩んだ。けど、嘘をつくのもめんどくさくて、鬼とのことだけ隠しつつおきた出来事を話し、買ってきた油揚げを見せ「食べる?」と聞いてみると頷いてくれた。そよそよ流れている川を小狐君の隣に座りながら見つめる。頭では鬼との話が思い浮かんだり、兄様達のことが浮かんだりと忙しい。その間、小狐君はなにがあったとか深くは問うてこず、ただ隣りにいてくれた。
それだけで安心することができたけど、それでも晴れることなんてなくてずっともやもやしたままだった。
どうするのが正しいのか。いや、断るのが正しい気がする。でも、それが僕の望みとはかけ離れている気がして、揺らいでいる。
どうすべきなんだろ___
そう悩みながらも、小狐君を撫でる。ふわふわとした毛並みが心地よく落ち着く。もし、一族を滅ぼしてしまったらこんな時間なんてなくなってしまう。兄様達にだってもう会えない。
そこまで考えて僕ははっとなった。会えないことが悲しいと思っていたからだ。嫌いなはずなのに、いや、嫌われてしまって、仲違いしてしまった兄様達。でも、会えなくなる方が嫌だ。そう思ってしまったのだ。
ここまで来たら、もう______
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