閑話 2

インタビュワー:

 ありがとうございます。

 いや……お辛い話を……。

 本当に、ありがとうございます。


葉子:

 いえ……大丈夫です。

 お気に病まないで下さい。


インタビュワー:

 ええっと、それで、その後は?


葉子:

 町で出会った『カシマさん』という優しい男性のお家で暮らすことになりました。


インタビュワー:

 カシマさん?


葉子:

 ええ、本当に優しい方で。

 こんなね、何処の馬の骨とも知れない母娘をねえ……。

 背がとっても大きいんですけれど、笑うと子供みたいでね。


インタビュワー:

 ……なるほど。


葉子:

 あら、ごめんなさいね。

 こんな、おばあちゃんがねえ、いい歳して惚気て……。


インタビュワー:

 いえ……。

 それで、その方とは?


葉子:

 次に神隠しに合うまで……一年と少しは一緒に暮らしました。


インタビュワー:

 また、たった一年しか経たないうちに神隠しにあわれたんですか?


葉子:

 はい……。

 もうね、神隠しに合ってない期間の方が短いくらいで……。

 結局ね、二度目の時は十二、三年も彼の世にいたんですよ。


インタビュワー:

 13年ですか!?


葉子:

 そうなんですよ……。私もね……驚いちゃって。

 連れ去られたのが昭和二十四年で。

 逃げ出してきたら昭和三十七年だってんですから。

 娘も数えでもう十四になってました。

 誰に似たのか可愛い子で。


インタビュワー:

 はあ、それは……。


葉子:

 色んなことが変わっちゃってね。

 テレビなんて、ねえ、初めて見た時はびっくりしましたよ。

 町も戦後の、あの雰囲気なんて、ちっとも残ってなくて。


インタビュワー:

 いやあ、それは本当に、そうでしょうね。

 ちなみに、そこはいったい何処の町だったんですか?


葉子:

 東京です。


インタビュワー:

 東京のどちらですか?


葉子:

 それが……ごめんなさいね。

 私その当時、文字が読めなかったものですから。


インタビュワー:

 ……なるほど、そうですか。

 あの……ひとつだけ。

 その怪物のいた洞窟は、ずっと同じ洞窟でしたか?


葉子:

 え? どうかしら……。

 そうだったと思いますけれど……。

 洞窟なんて、ねえ、どこも同じような様子でしょうから。


インタビュワー:

 それと、逃げ出してきたのは本当に昭和三十七年でしたか?


葉子:

 ええ、はい……。


インタビュワー:

 ふうむ。なるほど……。


葉子:

 あの、何か……?


インタビュワー:

 ああ、すみません。ただの確認ですよ。

 ──それでは、3回目の神隠しについてのお話を。

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