閑話 4

インタビュワー:

 ──はい、ありがとうございます。

 いやあ、これもまた、不思議なお話で……。


葉子:

 いえ……。


インタビュワー:

 ええと、この後のことは──


葉子:

 ご存知ですよね?


インタビュワー:

 ……はい。

 僕も当時小学生だったんで、よく覚えています。

 それと、今回インタビューするにあたって過去の記事も読み直してきました。


葉子:

 何かご質問は御座いますか?


インタビュワー:

 ──ええと、施設からそのまま……警察署に、連れて行かれたんですよね?


葉子:

 はい、どうやら花子と間違われたようで。

 山奥の施設でね、私達は自給自足で暮らしていたのですが、それがどうやら近隣の方から怪しく思われてしまったようです。あの、ほら、何か東京の方で、少し前に大きな事件があったとかで……。


インタビュワー:

 はい、はい、なるほど……。

 それで、その後は?


葉子:

 取り調べ、って言うんでしょうか。そういったものが、しばらくはありましたが。私が花子でなくて葉子だとわかっていただけたようで、それ以降は、特に……。

 住む場所なんかは、施設幹部の皆さんから色々とお世話していただいて。青山さんが経営されている介護施設の方でね、ご厚意で、一部屋お貸しいただいてね。本当に、皆さんには何から何まで……。


インタビュワー:

 色々と、その、週刊誌やテレビの取材なんかが殺到したのは、その頃ですかね?


葉子:

 そうです。

 私はただただ実際に体験したことをお話したんですが……。

 雑誌やテレビはずいぶんとあること無いこと……。


インタビュワー:

 なるほど。それは大変なご苦労を……。

 一部のメディアでは、葉子さんを詐欺師や病人扱いするようなものもありましたが、何か、危害を加えられるようなことはありませんでしたか?


葉子:

 いえ、青山さんが対応して下さったので、私個人には直接の被害などはありませんでしたが、施設の方はかなり対応に困ったみたいで……本当に、申し訳なかったです。


インタビュワー:

 今回、貴重なお話を聞かせていただきましたが、つまりはそれが真実、ということでよろしいんですよね?


葉子:

 はい。私が見たもの、感じたものを、そのままお話させていただきました。


インタビュワー:

 ──はい、ありがとうございます。

 ええと、長時間、お疲れ様でした。

 それではまた質問等ありましたら──、


葉子:

 あの、すみません。


インタビュワー:

 はい?


葉子:

 お話は、これで終わりではないのです。

 今日はそれをお話したくて。


インタビュワー:

 ……と、言いますと?


葉子:

 その後、私は、もう一度……五度目の神隠しにあっているのです。


インタビュワー:

 え!?


葉子:

 あれは1999年の七月。世間では世界の終わりだとかなんだとか、誰も彼もが騒ぎ立てていた頃です。


インタビュワー:

 はあ……。


葉子:

 私はひとり新宿の街を歩いておりました。ひとと会う約束があったのですが、電車が少し遅れてしまったため、小走りで人混みをかき分けていました。

 大ガードを抜けて、交差点を渡ろうとしたその時です。耳元で声が聞こえました。妖しげな、少女の声です。「こっちへおいで」と、雑踏の中にもかかわらず、いやにハッキリと聞こえました。

 その瞬間、周りの音が全て消え、あんなに沢山いた人間が一人もいなくなりました。驚いて足を止めると、いつの間にか交差点の真ん中に真っ赤な鳥居が建っていて、その下で美しい和装の少女が私を手招いていたのです────。

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