第十一話
「待たせたな」
磁場送電マスクONI-mk4
二つの角がある鬼の仮面で、角には無線送電をするための魔素回路がぎっしりだ。
磁場はいちばん身近にあるもので言えば、地球が持つ固有の“地磁気”だろう。
この“ONImk4”は、地球などの惑星が持つ磁場を利用して、何処から何処でも好きな時に好きな量の電気を流すことが出来る。
「私達はあなたの事を知りません!」
二人がこちらを警戒し始めた。
「俺はレオの知り合いだ」
「...ご主人様の?」
クロが首をかしげ、こちらをジロジロ観察してくる。可愛い。
「お前らは知らなくてもいいことだ」
シロとクロがコソコソ話し始める。
これからどうするか話し合っているのだろう。
まあ俺の考えとして、“レオ”にこんな強すぎる力は必要ない。
今の俺は“英雄”として接することに決めたのだ。
ガラガラ...
その時、空爆によって破壊された壁の瓦礫の方から音がした。
ガラガラドッカンバシンバシン!!!
瓦礫の方から肌色の気味悪い魔物が瓦礫を押しのけ四つん這いで出てきた。
上半身の服はどっか行き、目を血眼にしている姿は正に魔物と言って良いだろう。
あのクソジジイ(父親)のオキニである立派な花瓶も粉々だ。
「オイッ!?いい所だったのに邪魔す
「うるさい黙れ」
バチイィィィィィィン!!!!!
脂肪の真上から屋根を突き破って雷が落ちてきた。
「ぐふぉ」
シロがこちらを向いて話し始める。
「ではご主人様は何処にいるのですか?」
「あいつは今怪我を負って、協会で治療を受けている」
へえ、「フルシカト」ってこういう事か。
友達がいなかった俺にはよく分からん。
「そんなっ、早く行かないと!」
「場所を教えて!」
ぉぉおおお...!!
二人がこちらに迫ってきた。
俺の今の視界は天国と言って良いだろう。
可愛い。
彼女らが身を乗り出すと同時に、甘い香りが漂って来る。
俺はこの時完全に油断していた。
闇の魔力の気配がして、後ろを振り向いた瞬間
ピシャ!!
穴が空いた壁から、黒紫の触手がクロとシロを掴み引き寄せた。
「きゃあああ!」
「むうううう!」
「おやおや」
カツカツと足音がしている。
俺は足音の方を向いた。
「英雄”の宝物が二つもぉ、奪わない訳には行きませんねえ」
今度は骸骨かよ。
骸骨から出ている触手が二人のメイド服を弄る。
それが2人のスカートの下に入り始めた。
ちょっと見たい気持ちもあるが。
「こういうの好きでしょぉ?」
「このクソ野郎が」
そう俺が呟いた時だった。
「んうううう!!」
「んんんんん!!」
シロから純白の魔力が、黒から漆黒の魔力が吹き出した。
白と黒が混ざり合い周囲に嵐を巻き起こす。
ビュゴオオオオオオオ!!!
凄い風圧だ。
シロとクロは口を触手で塞がれ、体にぐるぐるにまかれていたが、それも粒子となってパッと消える。
「何してるんです!!!」
「それはだめぇ!」
嵐の中で何かが起こっているがよく見えないな。
「光魔術ライトチェーン!!! やってしまいなさいクロ!!!」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
ドオォォォォォン!!!
「ぶベラッ」
ドドドドドドドドドドドド!!!
「ギャアアアアアアアアアア!!!」
ドドドドドドドドドドドドド!!!!!
「後悔しなさい!!!光魔術ライトスラッシュ!!!!」
「死刑!!!」
ザシュッドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
「ギャアアアアアアアアアア!!!!」
ザシュザシュザシュザシュドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
ものすごい音だ。
工事現場かよ。
変態への恨みは凄い。
ザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュザシュドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
「まあ、ほどほどにしとけよ。俺は用事があるから」
ぴたっ
「なっ、ちょっと待って!!」
「まだ詳しい位置を聞いていません!」
俺は逃げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「進めえ!!」
「「「「うぉおおおおおお!!!」」」」
「伝令! 第3小隊共に第4小隊壊滅!! 」
「第3魔術師師団の援護はどうなってる!!!」
「団長!! こちらの魔術が相手の魔術に吸い込まれて攻撃が通りません!!!」
「第3騎士師団の半数が壊滅!! 相手の数は増える一方です!」
「魔弾が来たぞおおお!!」
地面が木っ端微塵に破壊されていく。
「「「「炎魔術ファイアーウォール!」」」」
「「「「水魔術ウォーターウォール!」」」」
ドカアァァァァァァン!!!!!
「ぐあああ!」
「痛ああい!!」
「防げてないぞぉぉ!!」
「母さん...会いたいよ」
「逃げろぉぉぉ!!」
「衛生兵!! 衛生兵!!」
戦争は、国を平和にする奴らの逃げ場所だ。
そう思っていた。
今回の戦いは俺の初陣だった。
しかも敵は魔王軍だと聞いた時は嬉しかったさ。
手柄をあげられると思ったから。
でも実際来てみれば、これは戦争じゃない。
明らかな虐殺だ。
帰ったら結婚するやつ。
今まで一緒に育ってきた親友。
実は影で俺が好意を抱いていた同僚の女騎士。
俺の隣で下半身が無かったり、頭が無いそいつらが横たわっている。
俺は両腕を“ゴーレム”のような化け物に飛ばされた。
「皆持ちこたえろおおお!! 十強の“戦神アズ”
が来たぞぉぉ!!」
結局はこうか。
強いやつが来るまで俺たち雑兵は足止め。
戦争で手柄をあげられるなんて真の強者しか出来ない。
「その思い、ぶつけたくはなぁい?」
ふと声がして、後ろを振り向いた。
骸骨に黒のローブ。
纏っている闇の魔力はえげつない量だ。
「貴方に力をあげるからぁ、この戦場をもっとぐちゃぐちゃにして?」
不思議だ。
俺の体が勝手に動いて立ち上がり、骸骨の方へ進む。
クラクラするけど俺は踏ん張った。
両の二の腕の切れたあとから血がボタボタと流れている。
すると骸骨は手に持っていた簡素な杖で俺に魔術をかけた。
「ぐあああああああああああ!!!!」
全身を激しい痛みが襲った。
痛い。
痛すぎる。
でも、力が手に入るなら良い。
壊したい。
全部。
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