第十話
「かはっ、礼を言う、助けてくれてありがとう...」
女騎士が俺にお礼の言葉を述べると、彼女のからだから青色の魔力が抜けていった。
「カレラっ!!??」
少女の声が更地となった森に響く。
女騎士の後ろの方からさっき受け止めた少女が駆け寄ってきた。
「どうしてこんな傷を!?まさか!!」
少女がこちらを向いて俺を思いっきり睨みつけた。
俺は少女の真っ黒な目を見た。
バチン!!!
同時に俺と少女の間に赤色のスパークが走った。
あの骸骨はこの時に俺を“飛ばした”のか。
俺は急加速し、少女の背後に回ってその頭に手を添える。
俺は魔素を光の魔力に変換させて、少女の体に流し込んだ。
同時に黒く紫をまとった禍々しい魔力が飛び出し、周囲に吹き荒れた。
「あのドラゴンが消されるとは、思いもよりませんでしたぁ」
徐々にその魔力が俺の目の前に集中し始めた。
「私の名は
俺は変身を待ってあげないし、変身に時間をかける馬鹿でもありたくない。
「俺を異空間に飛ばすんだろ?」
1度消していた神戒をまた作りだし、それを骸骨に向ける。
骸骨の動きが止まり、俺を凝視した。
「...何故それをぉ?」
俺の体から放出している魔素が段々と白色になっていき、それに合わせて魔素回路や目、コートの色が白色になって行った。
骸骨が足元に倒れた少女の手にある「杖」を手に取る。
「これにはあなたの“魔法”の一部が入っていますぅ」
骸骨の手に握られている杖から闇の魔力が吹き出し、広大な空に広がっていった,
「残念ですがぁ1000億年という短すぎる時間では、あなたの魔法の極一部を複製するのも一苦労でしたねぇ」
杖の両端が伸び、骸骨の身長ほどの棒になった。
今も絶えず闇の魔力が放出されている。
「複製できたのも一つだけでしたよぉ」
闇の魔力が回転し始め、固まり始めた。
「複製魔法」
闇の魔力が周囲から寄せ集められる。
「こんな馬鹿げた魔法を創りあげるなんて頭おかしいですぅ」
徐々に魔力が固められていく姿は正に空島を創造しているようだ。
「これには膨大な知識と魔力、技術と時間が必要だったでしょうねぇ」
完全に魔力が個体と化し、雲が押しのけられ太陽が“それ”を眩しく照らした。
それは俺とともに宇宙を旅し、共に戦った相棒とも言える存在。
「...なんで俺の宇宙艦が?」
ボオオオオオオオオオオオオオオオオオ
全長50kmを超える大陸のように大きく、どす黒い紫色の船が、大量の闇の魔力を纏っている。
「殺ってしまいなさあい」
俺に紫色のビームと弾と爆弾の雨が一斉に放たれた。
「おいおいマジかよ、それはねえぜ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ご主人様は私を置いてどこに行ったのでしょうか。
街に行くのならば絶対に私とクロを連れていくはずなのに。
ご主人様と居たい。
「クロは何か知っているでしょうか」
私は自室から出てクロを探しました。
クロは食堂に居ました。
クロは奴隷ですけど表面上人懐っこい性格で皆に好かれています。
今は料理長に餌付けされてますね。
おそらく新作のデザートの試食でしょう。
何故あんなに食べているのに太らないのでしょうね。
本人曰く、
「逆に食べて太ることってあるの?」
です。
殴っていいですか?
まあとりあえず話しかけようと食堂に入ろうとした時。
急に空が暗くなり、濃すぎる魔力が私を襲いました。
おそらくこれは闇の魔力。
気分が悪くなり、私は膝を着きました。
光の反対は闇。
それは属性にも言えることです。
光属性を持つ私は息をすることすら精一杯でした。
屋敷が騒がしくなっているのがかすかに聞こえます。
視界が徐々に狭くなってきました。
「なんなんだこれは!!!!」
「魔王の再来だ!!!」
「なぜよりによってこのシリウス領に!?」
「皇都に知らせを!!!」
「兵を招集して...」
「しっかりしてシロ!!!」
クロが走り寄って私を立たせようとしてくれました。
でも、クロの体から漆黒の魔力がゆらゆらと立ち昇っているのが分かります。
紫とは違う...?
「これ、ついさっきから勝手になったんだ」
「光魔術、ライトパッシブ」
私は光の魔力で体を覆いました。
「この大量の闇の魔力が引き金と鳴ったのでしょうか」
これで幾分かマシになるはず。
まだ私では虹色の魔力を使えません。
「とりあえずご主人様を探しましょう、絶対これに関わってます」
「だね、断言出来る」
私達は忙しなく動き回る屋敷の人間たちに見つからないようにしながら、屋敷の裏口を目指しました。
「おやおや、2人ともどこへ行くのかな?」
やれやれ、めんどくさい“ゴミ”に見つかりましたね。
「今君たちの大好きなご主人様はいないようだね」
ゴミはニヤニヤしながらこちらに手を差し伸べました。
「一緒に来ないか? 僕と一緒に居れば、この魔王襲来からも守って見せよう」
アルフレッドというご主人様の弟に当たるクソ野郎です。
「ぐふふ」
赤髪黒目まではいいのです。
ただものすごくデブ。
でき物だらけの顔面、おまけにフケとシラミだらけのベトベトな髪の毛はものすごく汚いです。
デブで不清潔なのは全人類が嫌な人種と言えるでしょうね。
「何突っ立ってるんだ! 早く行くぞ!」
こっちに脂肪の塊がドスドス来ますが何も怖くありません。
年下ですし。
「申し訳ございません。所用のため同行は出来かねます」
「べーーー」
私がいつものセリフを言うと、クロがあっかんべーをしました。
「クソっ、黙って俺の言うことを聞いておけばいいものを!!」
アルフレッドの野郎が、懐から取り出した15cm程の杖をこちらに向けました。
「あいつが居ないならヤリ放題なんだよッ!!
今が絶好のチャンスなんだ、逃してたまるかッ!!」
赤色の魔力が杖の先に集まっていきます。
「炎魔術! ファイアーボール!」
私は咄嗟に魔術を唱えます。
「光魔術、ライトウォール!」
ドオオオオオオオオオオン!!!
瞬間、私達と、アルフレッドの野郎の間に紫色の大爆発が起きました。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
「うわあああああああなんだあああああ!?!?」
「くっ」
巨大な紫色の空島が大量の闇魔法を撃ってきてます!!
「クロッ、中に入って身を
その時でした。
ブウォォォン
不思議な音と共にどこからか現れた、全身真っ白のコートを着た男性。
男性が左手を空島に向けました。
魔力...では無い何かが集まっていきます。
《失せろ》
バアァァァァン!!!
何語か分からない言葉を言った瞬間、真っ白が世界を覆いました。
光が収まると、空島が遠くへ弾き飛ばされて行っているのが見えました。
「あなたはっ、一体?」
男性がこちらを振り向きました。
白色の怒った怖い仮面を被っています。
「待たせたな」
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