第三話


 一番前の大男が戦斧に手を添える。


 「痛い目みたくなきゃあ大人しくそいつらを渡すんだな」


 何だ何だと俺たちの周りに人だかりが出来る。


なんてったって、冒険者ギルドの目の前だからな。


仕方ないか。

 「ボス、ここは俺たちに任せてくだせぇ」

 

 「ふん、いいだろう。なるべく傷つけるなよ」


 「わかっていやすよ」


 おそらくボスとやらの手下かパーティーメンバーだろう。


前にぞろぞろと出てくる。


 「おらぁ、さっさと渡せや。多少喧嘩が強えからってイキんなよ貴族のボンボンが」


 「今夜が楽しみだぜぇ」


 「性奴隷なら使われてるだろうが、俺たちが塗り替えてやればいいだけのこと」


 「「「グヘヘヘへぇ」」」


 それぞれが妄想しだし、勝手に息子を起こしているが...無論、


 「渡すわけ無いだろう」


 俺はその場で軽く地面を蹴った。


今回は多くの人が見ているし、相手の数も多いので路地裏に誘い込むことはできないだろう。


俺が喧嘩強いという噂も広まっているらしいならここは強行突破だ。


 俺は一瞬で手下ども全員にアッパーカットを下顎へ納品してやった。


魔力も魔素も何も使わなくても己の改造済みスーパーボディなら一発さ。


前世の全身機械には遠く及ばないがな。


 「ぐへあああっ!!」


 「ブフォッ!!」

 

 「ンゴォッ!」


 「ブベラッ!!」


 「ンガァッ!!」


 これでも力は1%も出していないのだが、手下たちは一瞬で気を失い地面に倒れた。


 「ッッッ何ぃぃぃ!!??いつの間にッッッ!!」

 

 「お前もだぞハゲゴリラ」


 大男の懐へ一瞬で入った俺はそいつのみぞおちに右手小指を突きつけた。


別に波◯の呼吸を使えるようにするわけじゃないぞ。


 突きつけたままその1点に力を集中させると、男は息ができなくなったように苦しはじめた。


まあいわゆるツボというやつだ。


 「カッハァァッッ!ハァハァ、オエェェッ」


 キラキラを道のど真ん中に吐きやがったぞこいつ。


 「今までもそういうふうに女性たちの人生を狂わせてきたんだろう、せいぜいもがき苦しめクソ野郎」


 周囲から歓声が上がると同時に驚愕した表情で絶句する者たちも出てきた。


 「あの戦鬼と手下たちが一瞬でッ!!??」


 「アイツ素行は悪かったがこの街でも有数のBランク冒険者だぞッ!!??あんな簡単にッ」


 どうやら俺がコイツラを倒したことに驚いているようだ。


まあ褒め言葉として受け取っておこう。


 「ご主人様めちゃくちゃかっこよかったです!!、、、ヌレルッ♡」


 「ご主人様かっこいい、、、キュンキュンシチャウッ♡」


 「二人共ありがとう。さあ、今日はもう帰ろう。」


 「うんっ!」「はいっ!!」


 (これで好感度アップしたかな?)


 俺は一応二人を狙っているのである。


相変わらず最後の方は聞き取れないが、素直に褒めてくれているようで何より。


二人は唯一俺の近くにいる女の子たちだからな、気長に距離を詰めていこう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「それでどうだったのだ?」


 「はッ、今日の昼過ぎにシリウス侯爵領冒険者ギルド支部の前で、レオハルトとメイド二人はBランク冒険者である戦鬼ムンクらと戦闘になりました」


 「結果は?」


 「レオハルトが一瞬で相手全員を戦闘不能にしました」


 「、、、下がってよろしい」


 「はッ、失礼しました」


 あいつの護衛騎士長が執務室から出ていく。


 鑑定の儀からあいつは侯爵家の恥さらしとなった。


魔法を使えないのは貴族にとって大問題。


貴族は皆属性を一つは持っているというのに、あいつは魔法を使えない出来損ない。


 今まで食事に毒を仕込んだり、睡眠中に毒を盛って殺そうとしてきたがなかなか死なない。


 暗殺などやろうものならば、侯爵家のセキュリティーや戦力を他家から疑われてしまう。


毒ならば使用人一人を適当に吊ればそれで終わりだ。


 今回の件思いきってBランク冒険者にあいつを殺せという依頼を出したが、結果は惨敗。


 なぜアイツはあんなにも強いのだ?

あいつの4歳年下の弟もいるので、当主にするならば長男であるあいつを殺さなければ。


それに追放を何度もしようとしたが、王家への許可の文が毎回なくなっているのだ。


 消さなければ。どんなことをしてでも。


あんなやつに後を継がせたくはない。



 コンコン

 


 「入れ」


 「父上、参りました」


 「おお、アレフか」


 アレフレッド。アイツの4歳下の弟だ。


 「アイツを殺すためにお前に頼みたいことがある」


 「ッッッ!!、あの愚かな兄を消せるのならばどんなことでもする所存です!」


 待っていろよレオナルド。

お前に終わりを与えてやる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 どうもシロです!


ご主人様のメイドをやらせて頂いていますっ!


好きなものはご主人様で、好きなことはご主人様のお世話をすることですっ!


 ご主人様を悪く言う輩が沢山いて、心底うんざりします。


本当のご主人様を知らないくせに。喉引き裂いてやりましょうか。


 とにかくご主人様はかっこよくて、つよくて、やさしくて、わたしにとっての王子様ですっ!誰にも渡しませんっ!


 クロはわたしの永遠のライバルですっ!

幼馴染でも容赦しませんからねっ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 私はクロ。


ご主人様は私の物。


私もご主人様の物。


好きなものはご主人様。


好きなことはご主人様の(ピーーーー)を見ること。


体を洗っているときにチラチラ見えるんだよね。


いつか洗えたらなあ。ご主人様は自分で洗っちゃうから。


 私のご主人様はかっこよくて、つよくて、やさしい。


誰にも渡さない。


たとえシロでも容赦しない。


ご主人様を悪く言うやつは全員引き裂く。




   




 「ヘブシッ」


 誰か俺のこと噂してるな?




 


 


 


 

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