第二話

 あの日から7年が経った。


今日は10才の誕生日。


今俺の部屋でささやかな誕生日パーティーが開かれている。


 部屋には俺と、シロ、クロ、セバスがいて、小さめのケーキに刺さっているろうそくに火を灯してくれている。


 「レオ様お誕生日おめでとうございます!!」


 「レオ様おめでとう」 

 

「おめでとうございます、レオハルト様」


 「ありがとう、みんな」


 みんなが俺を祝福してくれている。


俺はろうそくの火を息で消した。


 あれから七年間、俺は家に引きこもりながらこの世界での体の強化(改造)、新たな魔法を作り出したりして、ダラダラ生活していた。


それとは別で研究もしていて、この世界のことが少しずつ分かってきたのだ。


 引きこもってて社交辞令やら何やらは何も学んでおらず、地球式のものしかわからない。


パーティーの類は一回も行ってない。

 

奴隷の獣人二人を引き連れ街に繰り出していたので、周囲からの印象はおもいっきし最低だ。


 侯爵家の子どもだと知られずにチンピラが殴りかかってきた時は返り討ちにもしてやった。


なんだかんだ護衛は付いてるらしく、遠くから4人ほど騎士達がカモフラージュして俺たちを監視していたが、助ける気なんてほとんど無いようだった。


 絡まれるたびにクロとシロに待っててもらい、路地裏にさそいこんでこてんぱんにしてやったが、俺を見失った護衛たちはそのたびに俺を見失って慌てていたような。


現在公爵令息は喧嘩が強いと噂が広まっている。


 まあ中身の俺には関係ないことだ。


 こうやって貴族で金もあるのに跡継ぎにならなくていいのは都合がいいからな。


ぐふふ。


 10歳になると、自分が使える魔法属性の「精霊」がいるという祠に行って加護を受けるらしいが、俺は属性なし認定されているのでいかなくて良いのだ。


突然だがこの世界では魔力を使って現象を起こすことを「魔術」というらしい。


 逆に「魔法」とは、主に精霊たちや魔物たちが使い、世界の法そのものを変化させることを言うのだ。


 今の俺のレッテルはこうだ。


侯爵家長男のくせに魔法が使えない出来損ない、奴隷を束縛する貴族のボンボン、引きこもり、暴力令息など、散々な言われようだ。


なので俺は作戦を立てた。

  

詳しく説明すると、この国の貴族や平民たちは15歳になると、そこから三年間義務教育で学園に通う。


 15歳で成人ということなので、学園から出ればおそらく俺は追放されて平民となるだろう。


もう子どもではないから、俺を養う義務とかは関係なくなるのだ。


 しかし、それと同時に15歳になると貴族の長男は正式にその家の後継ぎとなり、領地経営も学ばなくてはならない。


 俺のあだ名やイメージは最悪なのでおそらく跡継ぎにはされないだろう。


4歳下の弟もいるのでそいつに跡継ぎの件は行くと思う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 大発見をしてしまった。


さっきまで自分の体をいじってたんだが、わかったことがある。


 この世界で俺の魔法科学がこの世界に「魔術」として存在しているのだ。


鑑定の儀のときに、魔法科学が魔法だということを認識していなかった属性の魔石は光らなかった。


 そしてもう一つ判明したことがある。


 俺は前世で「ナノマシン」を主に使って戦っていた。


回路さえ敷けば何にでも変化する魔力を見えないほどに粒子状に固めるのだ。


そしてそれを大量生産して体の至る所に入れておく。


 前世では一度に大量の魔力を一粒一粒に込めなければナノマシンは作れなかったが、魔法科学が魔法となったことで、俺の体に、より効率的な魔力回路が敷かれてあったのだ。


 なので今では1魔力で100ナノが作ることができる。


 要訳すると、魔法が魔術になったことで魔法科学をより自分の手足のように扱えるのだ。

 

 言うなれば「魔法科学魔術」だな。ややっこい。 

 

いやあ、満足満足。


自分のことを知れただけで俺の気分は上々だ。


俺は紅茶をすする。



 「アルファ、例の件はどうだ」

  

 DP-08-ALPHA


 俺専用の自我を持ったAI。復元できるかなと思い作ってみたが、まるで己の体の一部が出来上がった様な感触がした。


これも魔法になった影響だろう。


前世では07だったが、改良して08にグレードアップした。


声は女声に設定している。


 ホログラムが浮かんで巨大な大陸を映し出す。


 『煌聖02からの白い月エリア2の映像です。無事基地建設が終了しました』


 事情があって、3年前に打ち上げた衛星の内の一つである「煌聖02」。急遽、暗黒大陸を監視するために「煌聖シリーズ」を合計10機打ち上げたのだ。


そんな衛生どうやって打ち上げたのかって?


魔力に決まってるだろ。


 現在02だけ白い月の周りを公転してもらっている。


 画面に白色の超巨大な正方形の地面が映る。


ちょうど100km四方の巨大な地面に白い光がカクカクと線になり模様を形成して広がっていった。


 そうして外枠まで模様が行きわたると、中心から2高さ5メートル、縦横100メートルのちょっとした四角柱が出てくる。


 これは暗黒大陸を殲滅する用の巨大魔力素子エネルギーレーザーカノン。

 

 魔力を構成する「魔素」と呼ばれる物質はそのままだと不安定なので魔力になろうとする。


 その魔力になったときに魔素は大量のエネルギーを放出する。


それらのエネルギーを無理矢理かき集めることができるのだ。


言うなれば魔素原子炉だな。


物質が変化するときの莫大なエネルギーを利用している。


 

 惑星級エリア殲滅用レーザーカノン-PL-12-ゴリアテ(PLはPlanetの略)



 惑星級以外に衛星級と言う一回り小さいものや、


恒星級、星団級、星雲級、銀河系級、銀河団級、超銀河団級、宇宙域級、宇宙級、


と段々大きくなっていく。


破壊できる大きさを表すだけで特別な意味はない。


前世では、最後の方の5個くらいは作ったはいいものの、オーバーキルすぎてお蔵入りになった。


 (動作不良はなさそうだな)


 四角柱の内側に大きな穴が空いて、エネルギーを充填しはじめた。


 他の画面に荒野が映る。


中心に黒色の高さ500メートルを超える巨大な塔が建っている。




 これは地球を襲った宇宙人たちの構造物に酷似しているのだ。


 おそらく地球を襲った宇宙人たちの本拠地だろう。


魔力探知モードに変えると、地下に大陸全土に広がる空間が1km下まであるのがわかる。



 地上にはそれ以外に構造物はなく、平地が続いている。


 宇宙人たちがこの大陸に留まっている理由がわからない。


征服しようとすればこの惑星を掌握できるのに。


 とりあえず俺は、もしこちら側に危害を加えてこようものなら、と思いこちらも迎撃する準備を整えていた。


 〈マスター、ゴリアテのエネルギー充填率が30%を超えました〉


 「50%だけにしておけ、地殻まで届いたら大変なことになる」


 まだ撃たない。戦争になるかもしれないからな。


だが念には念をだ。


 これからもっと戦力増強しなくちゃな。

アイツラについてももっと調べなくては。



もう、二度と大切なものを奪われないために。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今日も二人を連れて街に繰り出している。

 シロとクロは今年で10才。


俺と同い年だ。


メイド服を着ていて首には皮でできた奴隷従属の首輪がつけられている。

 

 奴隷従属は、俺の首にかかっている使い手のペンダントと強い魔力のつながりで維持しているそう。


この奴隷従属魔法は、専用の魔法を使わなければ取れない。


 なんでもその魔法を扱える人は、国内ではこの国にいる賢者だけだとか。


変態なんだろうかその賢者とやらは。


俺にとってはこれを取るのはめちゃくちゃ簡単だが、なんでも二人は


「取らないでください!」

「ゴシュジンサマノゲボク、、、ウフフッ♡」


「取っちゃだめ!!」

「ゴシュジンサマ、ワタシノモノ、、、ニシシッ♡」


と断固拒否られている。

 

 なんでだろうな。最後の方は声が小さすぎて何も聞き取れなかった。


 ちなみに二人共超美人だ。


シロは切れ目で目は金色。


クロはタレ目で目は紫色。


まだ幼女なのに体はボンキュッボンになる予兆しかない。


 「「このパフェめっちゃ美味しい‼」です‼」


 シロが敬語、クロがタメ口。


 「ああ、これすごいうまい。二人のも気になるな、食べちゃだめか?」 


 「「っっっっ!!?!」」


 「どうした、ふたりとも固まって、まさか毒が盛られてたとか!!??」


 俺はそう言いながら目に魔力を込めて二人の食べかけパフェを見ると全然そんなことなかった。


 「「!!!!!!?!?!?!」」


2人共さっと自分のパフェを背中に隠して、


 「ご主人様の女たらしいぃ...」

 「ご主人様と間接キッス...」


 めっちゃ小さい声で二人共呟くから何も聞こえなかった。


その後二人は俺を挟むようにゼロ距離でくっついてきた。


顔もすごい赤かった。なんか怖かったぞ。


 そんなこんなで最近は週一で街を散歩している。


 別にメイドが獣人であるのはおかしくないが、貴族、それも侯爵令息が使っているのが良くないらしい。


貴族の品位が下がるとかなんとか。


 貴族が使う奴隷は主に性奴隷で、そういう輩はたいていみんなから嫌われているが、俺もそういうふうに思われているんだろうか。


二人は上級奴隷で下級や性奴隷よりも健全な奴隷なのだがな。

 

 そんなふうなことを思いながら食べ歩きをしていると、目の前に1メートルはあるでかいバトルアックスを背負っている大男が現れた。


その後ろに取り巻きの男たちも群がる。


 「おいガキィ、てめえあのゴミクズ令息じゃねえか。ちょうどいい、その隣の性奴隷俺によこせや。それで見逃してやらぁ。グヘヘヘェ」


 「ボス、ボスが喰ったあとに俺たちも頂いていいすよねぇ!!」


 「残す気はないがな」


 「「「「おおおおおおおおおおお!!」」」」





 やれやれだぜ。


 

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