第四話


 魔術の属性は全12種類で、

普通属性である「火・水・風・土」

上級属性である「雷・氷・空・地」

希少属性である「光、闇、聖、邪」


 別に普通より上級のほうが強いとかはない。

使う現象が違うだけだ。


 10歳になると、魔力適正持ったもの達はそれぞれが持つ属性ごとに、「精霊の祠」というところを訪れる。


そこで精霊と契約を交わし、魔法を使う時に様々な恩恵を受けられるようになる。


1番の恩恵は使える魔術の数が増えることだろう。


まあ俺は属性無しなので、誕生日には祠に行かなかった。




でも気になるだろ?

俺は精霊というのがどういう存在なのか自分の目で見て知りたい。


というわけで俺は今光の祠に来ている。

この前シロとクロにお願いして体の魔脈を見せてもらったら、シロは光魔術の回路と合致していたのだ。


しかも結構上級のやつ。


 クロは闇魔術の魔脈を持っていた。


こちらも上級のやつ。


契約の仕方も予習してきたので準備は万端だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ここは祠の中に入って階段を降りた先にある地下だ。


目の前には祭壇のようなものがあり、様々なものが貢がれている。


酒だったり肉だったり、どうせ時間がたてば取りに戻るのに何の意味があるのだろうか。




 現在シロが光の精霊と対峙している。

 


 〘あなたは素晴らしい器をお持ちのようで〙



 「っ、ありがとうございます!」



 〘精霊王様をお呼びいたしますね〙



 精霊王?精霊は10級から1級までと、その上が特級精霊、さらにその上が最上級精霊だったはずだが。



 「あなたがシロの精霊になったくれるのでは無いのか?」



 〘私なんかではこの方の器に耐えられませんよ、せいぜい最上級ですからね。少々お待ちください〙



 自称最上級精霊が戻っていくと、シロが慌てだす。



 「精霊王様っておとぎ話の中の話ではないですかッ!!??」



 「まあ良かったじゃないか、できるだけ強そうなやつを貰おう」



 「緊張しますっ!」



 しばらくすると、先程より圧倒的に眩しい光をまとって一人の女性がでてきた。



 「私は光の精霊王イーリス。久しぶりに私に耐えられそうな方がいらっしゃいましたね、歓迎します」



 白髪でおっとりしている虹色の目、体は聖女のように美しく、彼女自身から放たれる虹色の魔力も凄まじい。



 「本当に私なんかでよいのですか?」



 「何を言ってるいるのですか。あなたはそれだけの素質を持っている、自信を持ちなさい」



イーリスが慈悲深い目でシロを見つめる。



「それで、私は早く契約して久しぶりに人の街を見たいのですが、どうですか?私が与えられる恩恵は凄まじいですよ♡」



 「っ、お願いします!」



 そう言ってシロは右掌を差し出し、術を展開する。


イーリスがシロに問う。

 


「汝、我に何を求む」

 


 「我、汝に光、幸福、力を求む」



 そうシロが言うと、彼女の右手の甲に複雑な光の魔法陣が編まれていく。練習通りにできた様で何よりだ。


膨大な虹色の魔力が祠に中を満たす。


魔力で風が吹き荒れ地下に大量の空気が流れ込んだ。



 「これで契約は終了です。これからよろしくお願いしますね?シロ」


 「こちらこそです! イーリス様!」



 グフッ、可愛すぎるッッ!


尻尾をブンブンしているシロの可愛さは世界をひっくり返せる。


そうやって一人で勝手に興奮していると、なんか隣のクロからものすごい寒さを感じた。なんでだろう。

 


 そうして一連の流れが終わると、イーリスが



 「私はシロの後ろにいる男の子と少し話がしたいです。こちらの異空間に入ってください。」



 そう言うとイーリスは虹色の光で出来た豪華な門をその場に作り出した。


 面白そうじゃないか。俺の正体も見破られている気がする。



 「ええ、喜んで」



 入った瞬間、眩しい光に俺達は包まれた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



私は光の精霊王として他の精霊たちを従えてきました。


昔は人間と精霊が関わる事は全くありませんでしたが、今となっては人間が魔術使うために精霊は必ず必要となる存在。


1000年前、この私もただ1人、人間の女の子に仕えました。


仕えた最初の頃はまだ10歳の子供でしたが器は本物でした。


しかし、その子はまるで最初から知っていたように私の魔術を超えたものを使い始めたのです。


私は問いました。



「なぜあなたは魔術を魔法のように使えるのですか?」



本来魔物以外は体の中にある魔脈を使用して、魔術を使うことができるようになりますが、その子は1から手の魔法陣を作り出していました。


魔物は世界のイレギュラー的存在なので魔法を使ってくる個体もいるのです。


惑星ひとつは簡単に消せるレベルなのですけどね。


おそらく、私と契約して使える魔術のレパートリーを増やさなくても元々使えたものがほとんどだったでしょう。



「私転生者なんだ」




転生者。




この世界、すなわち宇宙は全部で10個あり、それぞれが平行世界として成り立っています。


魂を持つものたちが生を失うと記憶を無くし、またひとつ先の宇宙へと送られる。


それが世の運命だと聞かされて精霊たちは育ちます。


「死ぬ前にある人に会いたいって思ったら“申請を承認、超越者をうんたらかんたら”って聞こえたんだよね」


「超越者」はその宇宙で神の領域に入ったものや、世界に関わる重大なことを成し遂げたものに送られる称号。


これは精霊王である私と、私たち精霊をお作りになられた精霊神様しか知らないことです。しかし、精霊神様はこのユニバース9の創造に直接関わったお方。


もっと深くまでご存知でしょう。


私の知る限りでは、その称号の効果は、コードネームを与えられ、元々持っていた記憶と力を保持したまま次の宇宙に転生できるという報酬。



「それで、超越者“勇者”ゼノ・スパークルって呼ばれたよ」



「、、、私にはよく分かりませんね」



「ははっ、ごめんね。でも聞いてきたのそっちだよ?」



私がその少女の正体を知ったと同時に、火、氷、土、雷の精霊王達から連絡が来たのです。


それは、どれも初めて仕えたもの達が超越者だったというものでした。


生憎、精霊神様はこの宇宙と私たち精霊をお作りになられた後、ずっと姿を現しておりません。


相談する相手もおらず、私たち5人の精霊王はそのまま仕えることにしたのです。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それから長い年月がたち現在に至ります。


超越者達はそれぞれ同じ人物を探しているらしく、皆この広い宇宙のどこかへ旅立ってしまいました。


私もなにか協力出来ることは無いかと思い、日々魔力を張りめぐらせて世界を観察していましたが、ちょうど七年前に特徴的な純白の魔力を捉えたのです。


真っ白で綺麗だと思えても、それを作るのは深い影の部分だとわかりました。


おそらくこれを発したのはこの少年。


今も完璧に魔力を体に押さえ込んでいますが、感じるのです。




彼女らと同じ存在だということを。



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