第五話


そこは広大な草原だった。


巨大な虹が空をまたいでいて、その向こう側に巨大な惑星が何個もあるのが見える。



俺はまだ、シロとクロには俺が転生者であることは話していない。


まだ10歳なので話しても分からないだろうしもう少し成長した時に話そうと決めていたのだ。



「さあ、中へどうぞ」



イーリスが後ろを見るように促す。


後ろを振り返ると巨大な純白の城がたっていた。


高さはだいたい250メートルくらいだな。


改造済みの眼で計測したら251.50メートルだった。


おしい。



中へはいると、それはそれは豪華で、全てがきらびやかだ。


侯爵家の城の100倍は豪華だな。



一際目を引くのは出入口の目の前にある巨大な地球儀のようなものだ。


惑星かと思ったが、時々画面が変わって今は宇宙を写している。



「ここは光の精霊が生まれる場所。光の神殿です」



黄色っぽい白色の光の玉がそこら辺でふよふよ浮いている。



「これは精霊の卵ってことか?だが全てイーリスのような虹色ではなく少し黄色っぽい光をしているぞ?」


「光の精霊は階級が上がる事に、少しずつ虹色の魔力を使えるようになるのですよ。ざっくり言うと、“光魔法”は虹色の魔力を必要とするのです」



イーリスの魔力が不規則に揺れる。



「...シロとクロは城の中を探検してきたら?外見も大きかったけどおそらくここは異空間だ。大きさは無限と言っていいだろう」


「ご主人様は?」



クロが寂しそうにこちらを見つめてくる。



「俺はイーリスに精霊のこととかを聞いて勉強してくるよ」


「私も行く!!」


「私も行きます!!」


「2人には難しいだろうからな、それに俺がよくやっている研究にも大事なことなんだ。言うことを聞いてくれないか?」



2人が「研究」という言葉を聞くと、渋々頷いてくれた。


俺が研究にほとんどの時間を費やして頑張っているからか、真剣な話だと受け取ったようだ。



「そちらの最上級精霊アヴィをお付けしますね、探検のお供にしてください」



自称最上級精霊は本当の最上級精霊だったようだ。



「先程お会いましたね。アヴィと申します」



外見は小さな少女で、目は虹色、髪はショートカットで金髪だ。


メイド服を着ている。



「このお城には獲物が沢山いる狩場があるんですよ。取れるお肉も絶品ですよ!」



シロとクロは目を光らせてヨダレをじゅるりとした。あの頑固な2人を一瞬でッ!?


今度俺も真似しよう。


小さな女の子たち3人は光に包まれ、パッと消えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺はイーリスと視線を交差させる。


瞬間、周りの風景が城の中から先程の草原に変わった。周りに建物は一切ない。別の異空間だろう。



俺は魔力を解放した。


俺の身長が伸び、180cmくらいになる。体を改造すると年齢も操れるのだ。


左眼が赤目から黒目に変わり、黒色の線が左目から首を超えて左腕を覆い、超複雑な魔素回路を作り出す。


左目を抑えれば、そういう感じになることができそうなほどかっこいい。


これを作った当初はそういうのちょっとだけやった。



ちょっとだけ。



ちなみに魔素回路は、入れた魔力の量だけ魔素を自動的に作りだしてくれる。


魔素回路が出来上がると、ナノマシンが真っ黒なスーツとコートを編んでいった。



汎用型戦闘用軍服-GF-MK20



その名の通り汎用できる超万能服。


宇宙でも深海でもマグマの中でも活動できる、前世でずっとお世話になっていた俺専用の戦闘服だ。


見た目は旧ドイツ軍の将校が着てそうなもの。


服が出来上がると、大きな黒い大鎌が二振り俺の左右に粒子状から形を生していく。



戦闘用ツインサイズ-神戒



刃の部分に魔素発生ナノマシンを散りばめた殺戮兵器だ。


動力源は棒の部分に詰め込んだ極小核融合炉で、そこから発生するエネルギーと魔素を組み合わせれば、世界を裂く斬撃を放つことが出来る。



イーリスが虹色の魔力を練り、巨大な円型の魔法陣を3重に重ねたものを右手に作り出す。


そこから発生した超高密度な虹色の魔力がイーリスを覆った。



「あなたは転生者...超越者ですね?その魔力では無い超高密度なエネルギーが物語っています」


「悪いが死ぬ直前の事は何も覚えてないんだ。願い事しててな。その超越者とは一体なんだ?」


「あなたがその身にまとっているものに施された魔法はどれも常軌を逸しています」


「だから超越者が何なのかを聞いて





ドオオオオォォォン!!!!!





イーリスが虹色の魔力を纏いながら超高速で迫ってくる。


ソニックブームが発生しているので音速は超えているだろう。



俺は横に飛び退き躱した。


イーリスが通った後の地面がえぐれている。


俺は右手の大鎌をイーリスの方へ投げ、残った左手の大鎌でイーリスに斬り掛かかった。


ゼロヒャク加速なんてものは無い。


一瞬で光速を超え、イーリスに迫る。



「行きなさい!!」



イーリスが右手を掲げて空に魔法を放った。


それらは空高く上がると同時に、いくつも虹色の光が枝分かれして地上に激しく降り注ぐ。


膨大なエネルギーを無理やり固めた黒い塊(俺)は辺りを破壊しながら突き進み、空から降ってくる膨大な魔力が籠った虹色の玉を何千何万と斬り裂き、弾き、吸収して突き進む。



ドオォォォォォォォォン!!!!



突如、半径500mを超える虹色と黒色が混ざった大爆発が起きた。


まるでタイミングを読んでいたように、先程投げた大鎌がイーリスの周囲をおおっている虹色の魔力にぶつかったのだ。



「クッ...!!」



爆発の余波と、膨大な魔力がそこらじゅうの空気を圧縮させ破裂させる。



「ハアァァァ!!!」



イーリスが虹色の魔力を波紋上に広げて大鎌を吹き飛ばした。



「すばしっこいです!!!」



俺は光速を維持したまま上にジャンプし、空高く舞い上がった。



虹色の光が俺を追ってくるが気にしない。




右手をイーリスにかざして黒色の巨大な魔力回路を作り出す。


体の魔素回路と連結させた魔力回路は次第に白色に輝き出した。



この白色は魔素が魔力になる時のエネルギー量が一定を超えると発生する変化だ。




同時に俺の服、髪の毛、大鎌が白色に輝きとてつもないエネルギーと魔力が空間を覆う。



キュィィィィィィィン



手の先の魔力回路が「準備完了!」とばかりに光ると、あたりの魔力を一気に吸い込んだ。



「release」



俺がそう呟くと、右手から超巨大な白色の閃光が地に落ちた。


世界が無音になる。




ドオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ!!!




3秒間程で閃光を止めて俺は地面に降りる。



辺りを覆っていた砂埃を片手で吹き飛ばすとそこには巨大な穴ができていた。



覗いてみると、余裕で深さ1キロはありそうな穴に微かに虹色の光がきらめいた。




一応説明すると、俺には形態というものが存在し、種類がある。



色で別れていて順に、黒、白、...etcとなる。まだ何色も残っているがそれらはまた今度やろう。




そんなことを考えているうちに、虹色の光が上がってきて、俺の隣に来た。



「あなたやりすぎですよマジで」


「おそらくこの世界で精霊は死ぬ事は出来ないだろ?それに精霊は魂を持たない。何回死んだって再生できると思ってやった」



「あなたは一体どこまでわかっててどこまでわかってないんですか、、、さっき私500回くらい死にましたよあの閃光の中で」


「即時蘇生の魔法をこの空間に使っているのが悪い。それに今回俺は全力の100分の1も出していない」



徐々にイーリスの体が出来上がっていく。



「はあ...分かりました、あなたが知りたいことは全て教えてあげます。それと、急な戦いを申し込んだことを謝ります」


「まさかあんたがモールス信号を知っているとは思わなかったけどな 」



実は一瞬イーリスの魔力が揺らいだ時に、魔力を発するリズムがモールス信号になっていた事に気づいたのだ。


「昔あなたと同じ世界から来た転生者がいたのです。その方に教えてもらったのですよ」


「へえ、俺がその人間が来た世界と同じ人間かを確かめるためにもやったんだな」


イーリスが腕を組んでため息をこぼした。


「...あなた少しウザイわよ?見破ってても黙っててあげるのがレディの扱い方というものなのに」


「それは本当かありがとう肝に銘じておく」



イーリスの体が完全に出来上がった。服はもちろん無くなっている。



「そういうところよ、マジで」


「だいぶ口調砕けたな」



「誰のせいよ?」


「俺?」


「いいから城へ戻るわよ、疲れたわ」



俺は少しためらいながら聞いてみた。



「女性にモテる方法とかも聞いていいのか?」


「?、 それくらいならいいわy


「よし行こう早く行こう」



俺はそう言いながらロングコートを脱いでイーリスに渡した。


ずっとイーリスの目を見ていたので裸は見てない。


視界には写ってるけど。


凄かった。



ロングコートを脱ぐと俺の体は小さくなった。


来ていた服も元の服に戻り、徐々に髪の毛は黒に、眼は赤に戻る。









「...はぁ、優しいのか優しくないのかわかんないわよ」







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