ゼノ・ブレイカー〜戦い続けた英雄は魔法科学を使って異世界を無双する

午前の緑茶

プロローグ〜英雄と呼ばれた異端の破壊者

 この世界は残酷だ。


 力を持たないものは奪われ、殺される。


 信じていたものに裏切られ、絶望し、現実を突きつけられる。


 勝手に期待され、勝手失望される。


 最後には切り捨てられ唾を吐かれる。


 こんな世界。


 後悔して死ぬならば、誰もが思うだろうその言葉。


 ああしとけばよかった、こうしとけば良かった。


 そう思った頃にはもう遅い。


 これは来世を信じ、今世を捨てて戦い続けた男の「今世」を幸せでハッピーにやり直すための「来世」の物語。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 俺の名前は白木雄璃。31才のおじさんです。

一応こんなんでも英雄と呼ばれていた。


俺は元々日本に住む日本人の中学生で、2050年に地球に宇宙人がやってきて好き勝手荒らし回った結果多くの国や土地が消滅した。

 

 奴らは魔法陣のようなものを用いて現代技術では到底できないような攻撃を一番下っ端の歩兵が使ってくる。

 

 ただの鉛玉や火薬の塊しか飛ばせない人間側は、徐々に追い詰められていった。各国はそれまで続いていた紛争や戦争に停戦協定を結び、ひとつになろうとした。


 人類と宇宙人との戦争である、後に「第1次地球独立対戦」と呼ばれる戦いは、10年間に及び続いた。


 人類は核を持ってしても侵攻を止めるだけで、戦線を押し返すことはできなかった。


世界の人口は3分の1まで減少し、残った国はヨーロッパ諸国、ロシア、中国、アメリカ、カナダ、日本だけとなった。宇宙人たちは地球の南半球を掌握し、北半球をも我がものとしようとした。


ここで大事になってくるのはこの「しようとした」だ。結果することは出来なかった。最終的に人類に宇宙人達は追い詰められ太陽系から出ていった。人類は勝利した。


ではなぜ人類が勝ったのか。


そう。この俺だ。


当時の俺はまだ小学6年生でただに素行不良なガキだった。しかし、そんな俺も変わらなきゃいけなかった。


ある日、宇宙人達に家族を殺され、片思いだった女の子も目の前で殺された。


 学校のクラスメイトや、仲が良かった親友も、近所のおばさんや仲が良かった叔父まで、皆殺された。


 俺の感情が死んだのはその時からだ。


 なんで俺だけ生きてる?


 なんで俺を生かしてる?


 そんな行き場のない自問自答をし続けた。

実際俺は宇宙人達に見向きもされなかった。


 それが悔しくて、悲しくて、家を潰されて帰るところもなくなった俺は宛もなく歩き続けた。


そんな時に、空から煙を立てて落ちている宇宙船を見つけた。


落下地点に行ってみると結構大きめで50メートルほどあったような。しばらく眺めていると、船から両足がもげ、片目を失っている宇宙人が出てきたのだ。


びっくりしたさ。だが同時に殺意が芽生えた。

俺はそこら辺に落ちてた船の残骸である鉄パイプのようなものを持った。とても重かったがそんなことどうでもよかった。


徐々にそいつに近ずき、力いっぱいパイプを振るった。


何回も


何回も


何回も


「死ね、死ね、死ねぇッ!!!!」


何十回か振るとそいつはグッタリとして、息絶えた。頭蓋が割れ、頭から大事なものがぐちゃぐちゃになって地面に垂れていた。


復讐のつもりで殺ったが、何も満たされなかった。そりゃそうだ。初めて人を殺したから。


 「あああああああぁぁぁぁぁッッッ!」


 叫び、泣き、体中のいたるところから液体を流した。最後には地面にできていた血溜まりにゲロを吐いた。

 

罪悪感と殴ったときの感触が俺を襲った。もうどうでも良くなって俺はそいつが乗っていた船に入り込んだ。


 ふらふらしながら入った宇宙船は木のようなものでできていて、全体から不思議な力を感じた。


乗ったと同時に扉がしまり、船体が浮いて猛スピードでどこ変え向かい出したときはどこに行くんだろうとソワソワしていたが、段々そのわずかな好奇心も恐怖心へと変わっていった。


なんせ俺の乗っていた船は宇宙船のなかでもいちばん大きい船に近づいていたのだから。


後からわかったことだが、その巨大な船は全長300メートルの巨大宇宙空母だったのだ。


 今更引き返すこともできず、 そこで宇宙人たちにバレないように3年の月日を過ごした。それはもうたくさんの試練が待ってたさ。何回も死にかけた。


 奴らの知識を勉強して頭に叩き込み、それを使って自分の体を改造し、俺を見つけた宇宙人は全員殺した。


 時々人間達が人体実験を施されている区画があり、何度も煮えたぎる様な怒りを感じた。俺も見つかったら何をされるかわからず、全員を助けることができなかった。


 脱出の目処が立つと、そこにあったデータやら技術やら素材やらを掻っ攫い、地球に戻った。


なぜこんなことが出来たのか不思議に思った人がほとんどだろう。


その答えが「魔力」だ。


宇宙人たちは全員パワードスーツを身につけているが、中身は全員人間に似た生物で、違うところは肌の色が青いことと、2本の角がこめかみの辺りから生えていること。

そして1番違うと言って良いところがもうひとつあるのだ。


それは「魔力適正」である。

地球にはない魔力と呼ばれる物質があるのだ。

宇宙人たちは魔力適正を持っていて、魔力を使うことで宇宙を自由に飛びまわり、地球に来ることが出来た。


俺は魔力適正がカンストしていて魔力でなんだってできちゃったのだ。

大体の人が適正を持っておらず、微量の魔力に当てられるだけで死んでしまうのが普通だったのだが何故か俺にだけその力があった。


俺が宇宙人たちに見向きされなかったのも、魔力を持っていたおかげで、宇宙人たちは人間を魔力の有無で見分けるそうだ。

結果俺は同じ宇宙人に見間違えられたわけだ。


 人体実験をしていたのは魔力適性がかすかにあった人間たちだった。


俺は地球に戻ったあと、宇宙人たちの知識を使って地球を復興した。


人類のために本来学生であった期間を全て戦争に費やし、宇宙人を殺した。殺して殺して殺しまくり、次第に俺は「英雄」と呼ばれ、その期待に応えるために戦い続けた。


時に仲間が殺され、時に仲間に騙され、 時に仲間に裏切られた。最初は15人いた魔力適性を持つ人類の最高戦力たちも、最終的に俺を含めて6人に減っていた。


何回も死にかけ、最終的に左腕を消し飛ばされた。


「もうこの世界も終わりだ」


片腕を失った俺が街に帰ってくるとみんなが絶望した。誰も心配なんてしてくれなかった。でも俺はまた戦いに参加した。


 機械の義手をつけ、自分で作った魔法を用いてさらに戦争にのめり込んだ。






 なぜそこまで戦いに己の身を投じたのか。


 怖かったんだ。ただひたすらに。


 戦わない自分になんの価値もないような感じがして、そんな自分を好いてくれる人がいないと思い込んで、戦った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


戦争開始から10年目、俺は敵軍の最高司令官を討ち、戦争を終わらせた。


その時に俺は膨大な魔力の呪霊魔法をぶつけられ、常に瀕死の体となってしまった。


 仲間たちは最終局面で俺を庇って全員死んだ。


 世界は救ったがその代償があまりにも大きすぎたような感じがした。

その五人以外誰も信じられなくなっていた俺はそんな現実から目を背けたくて、魔法の研究にのめり込み、外界とのつながりを切った。


俺は魔力を使った技術を「魔法学」と名付け、魔法学と科学の融合を目指し研究にあけくれた。


それからもう10年、現在に至る。

宇宙人たちの魔法文明をも超えた「魔法科学」を成立させた俺は既に人間の領域を超えていた。

自身の体に施した機械化は数知れず。

敵にかけられた呪いから延命する為に自分の体を改造し続けた。

もうすぐ潮時かな、そう思った時だった。


 奴らが戻ってきたのは。


部屋の警報システムが鳴る。


10年前に追い返した宇宙人たちが、数百倍の戦力を宇宙人達が投入してきたのだ。中には1000メートル越えの宇宙船が画面越しにちらほら見えた。


俺は死んだ者たちのために、今を生きるものたちのために、最後に全身全霊で戦うことを決意した。


幸い他の5人たち意外に親しい友達はいない。家族も死んでるから悲しむやつはいないだろう。そんなことを思いながら。


  俺は目を閉じ、異空間デバイスの電源を切った。


 外気が肌に触れて少しくすぐったい。


「最後の仕事だ、お前ら」


その言葉を待ってましたと言わんばかりに、太陽系が振動する。


 太陽系のあらゆる惑星と太陽から白鉄の軍団が現れる。


 太陽系宇宙艦隊地球軍旗艦

 SSSF-EAF-1105-Yamato

 (Solar System Space Fleet)


この全長50000メートルを超える巨艦は地球の太平洋防衛基地から出てきた1隻だ。戦争の10年と研究の10年で改造し続けた1105隻目だ。


艦番号の前のFは旗艦であるflagshipを意味する。EAはEarthの略。


形は超巨大な円盤の下に長い長方形の細いパーツが円盤の先端から、後端にかけて付いている。後端の方は少し太くなっていて円盤の半径の長さ程飛び出ている。


 真横から見ると円盤は薄い台形になっていて、棒の部分はとても細いひし形になっている。


その太陽の光を跳ね返す白色は、地球を写すほど滑らかだ。


反重力装置を用いて軽やかに空に舞い上がり、棒の後端から白く目映い閃光を放ちながら前進する姿はまさに巨大な壁である。


その後ろに万を超える数の、一つ一つが1000メートルを超える白色の船達を引き連れている。


他に太陽、火星、水星、土星、木星、金星、海王星、天王星から続々と同じような船団が出てくる。


「目標を殲滅しろ」


俺の命令と共に白の軍団が眩い閃光をあげて攻撃し始めた。

打たれる魚雷、レーザー、ミサイル。


それは一瞬の出来事だった。


世界が閃光に包まれる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


後に白木雄璃は異端の力(魔法科学)を持ち、全てを破壊する兵器を従えることから「XenoBreaker」と呼ばれた。


 この最後の侵攻を食い止めたあと、彼は誰にも看取られず静かに亡くなった。

来世があるなら女の子たちとキャッキャウフフな幸せを手に入れたいと思いながら。

















《申請を承認》


《超越者をユニバース08から09へ送ります》


《ご武運を》





《“英雄”ゼノ・ブレイカー》




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