ゼノ・ブレイカー 戦い続けた英雄は魔法科学を使って異世界を無双する

午前の緑茶

プロローグ〜英雄と呼ばれた異端の破壊者


この世界は残酷だ。


力を持たないものは奪われ、殺される。


信じていたものに裏切られ、絶望し、現実を突きつけられる。


勝手に期待され、勝手に失望される。


最後には切り捨てられ唾を吐かれる。

 


「こんな世界生きたくない」



後悔して死ぬのならば、誰もが思うだろうその言葉。


全部を世界のせいにする。


あらゆる後悔、失敗、自殺願望を。


ああしとけばよかった、こうしとけば良かった。


そう思った頃にはもう遅い。



これは来世を信じ、今世を捨てて戦い続けた独りの男が歩む物語。



ーーーーー



ブー、ブー、ブー、ブー、ブー......


警報ブザーが最後の警報から長い年月を超え再起動した。


無機質な白色の近未来的空間の中に、1人の男がデスクに腰掛けている。




「ディスプレイ起動」


男の前におびただしい数の空間ディスプレイが浮かび上がった。


計測数値やそこから得られたデータを男は一目見る。



「亜空間通信コード、ナインアルファオープン。パスワードは“白木雄璃a10-864”」



一つのディスプレイに映る正十二面体に向かって男は喋りかける。



『通信オープン、亜空間防御システムが虚数を検知、物体がワープレベル5で太陽系に接近中』


「了解した。全基地から全艦発艦、防御体制28に則って全ての敵艦を撃滅、太陽系を死守しろ」



ホログラムが太陽系を映しだした。



『太陽系艦隊出撃準備完了、出撃します』



男は一つの浅いため息を付き、立ち上がった。



「敵はあとどれ位でワープを解除する?」


『あと5秒です』



ディスプレイを操作しながら男は歩く。


ガシャ、ガシャ、ガシャ。


どこかぎこちなく、足を庇いながらキッチンへ向かった。



「そろそろ新しいのにする必要がありそうだな」



着ているジャケットを脱ぎ、カウンターの椅子にかけてそこに腰掛けた。


男は右のズボンの裾をめくり、光に反射する銀色の義足を見た。



『配置完了、全搭載体宙対艦戦闘機発艦、全艦全武装を予想敵ワープ地点にロックオン、太陽系防御シールド生成、電磁パルス発射、全通信網を亜空間通信に切り替え、攻撃準備完了』




「ご苦労」



男はコーヒーを白色のマグカップに注ぎ、ミルクを入れながら頂上船室の窓から見える白の大群を眺めた。



ピー、ピー、ピー。



『敵艦ワープ解除確認、距離45000m、座標修正、敵艦160万8902隻確認、攻撃開始』



黒、赤、緑、青、と色々な色の宇宙船がどこからともなく大量に現れる。



白色の宇宙船80万余りと倍の混沌とした艦船が戦火を交えた。



レーザー光線、ミサイル、ワープ式魚雷、対空兵装、戦闘機が飛び回り、爆発が絶えず起こり、船体の破片が飛び散る。



男が乗る船もまた多くの敵を落としながら、ジェネレーターを唸らせ進み続けた。



「作戦を続行。全艦、核融合炉爆破準備、相手の懐に入り込んで同時に爆発しろ」


船を爆発が襲い大きく揺らす。


『シャトルを用意します』


「いや、いい。お前たちと行くよ」



男は椅子を掴みながら立ち上がって言った。



『......了解』


「すまない、アルファ」


『思考プロトコルに異常の数値を検知......私は......何かを感じています』


正十二面体が移されているディスプレイに、砂嵐のような映像の乱れが起こった。



「それは...感情だ。まさかAIに感情が芽生えるとはな」


『記録。敵艦15万256隻撃沈、損害2万808隻、敵最後尾、敵旗艦へ到達まで800m』


「コードワンアルファ、パスワードstt0fn100、自爆シーケンス開始」



カップをカウンターに置き、窓まで歩いていく。


爆発していく自分の船と、それに巻き込まれ破壊されていく敵の船を眺めた。



『距離500』


「もうやり残したことは...ないな」


『距離400、300。損害30万2847隻、敵艦56万3008隻撃沈』



男はディスプレイを操作してあらゆるデータファイルを一つにまとめた。



『距離200。損害67万3788隻、敵艦109万130隻撃沈』


“アルファ”のスペースにそのデータファイルをダウンロードする。


『距離:(/?、/、.(「!、い5//-----bzv、-0!/jv#しve「あbJH#2JB%VS!M_n%md?:」0/」て!:?:?2@10」/?るb~」djbdj-------』



一瞬で、残った10数万の船が爆発した。


太陽系は揺れ、白色の破片と閃光が全てを切り刻み包み込む。



ーーーーー



2050年宇宙人侵攻から25年間戦い続けた男「白木雄璃」は、誰の記憶にも熱く、深く刻まれている。


白木雄璃は異端の力を持ち、全てを破壊する兵器を従えた。


 

彼は、白い閃光と自身の抱える巨大な船団とともに死んだ。


 

自分の生に意味を見出したかったという想いを抱えて。

















《申請を承認》


《超越者をユニバース08から09へ送ります》


《ご武運を》





《“英雄”ゼノ・ブレイカー》




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る