第十三話


2080年-2月23日-00時24分




ピコン.... ピコン.... ピコン....




『アルファmk7よりベータmk7へ。キャプテン及び未確認の魔力周波を検知。そちらの研究デッキでの解析を求めます』



ジジジ...



『ベータmk7よりアルファmk8へ。解析終了、宇宙域全域に発信源を感知できず。プラネットナイン軌道上にダークマターの暴走を確認』



ザザ...ザザザ.....



『アルファmk7よりベータmk7へ。了解、デルタ宇宙域付近に駐屯中のSSSF-MEF-2203-Shinano及び太陽系宇宙艦隊水星軍第一軍団を向かわせます』



『ガンマmk7よりアルファmk7へ。現在プラネットナインへ巡航中、報告を待て』



ジジジ...ジジ...



『イプシロンmk7共にベータmk7からアルファmk7へ。土星防衛基地でのSSSF-MAF-2206-Musashi共にSSSF-VEF-2204-Kongoの最終改修が終了。太陽系宇宙艦隊地球軍第一軍団とポイント3aにて合流次第、共にプラネットナインへ』



『アルファmk7からイプシロンmk7へ。了解。また、現在開発中の試作機のロールアウト及び配備を両艦へ』



『了解』



『アルファmk7から全体へ。これより第三次警戒態勢を発令。“別次元侵入作戦”を開始します』



『『『『『『『『了解』』』』』』』』



「キャプテンを迎えに行きましょう』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「こっちだ!!!こっちへ逃げろ!」


「「「「うわああああああ」」」」


「「「逃げろおおおお!」」」




今までの人類史に現れたことなど無かったであろう怪物が次々に現れたことによって、人間たちは逃げ惑う。





「巨人!? いくらなんでも大きすぎるだろ!!」



カレラはその500mにも及ぶ巨大な魔物を前に思わず声を出した。



(何でもかんでもデカくしてばっかね...)



「いいわ、受けて立ちます。かかって来なさい!」



アズは淡い桃色の光と共に遥か上空へと舞い上がった。


巨人の目線と同じくらいの高さで止まり、剣を天に掲げて魔法を唱える。




「聖魔法、聖戦鎚アルヘイム!!!!」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ



アズとその付近から大量の清らかな魔力がうずまき出して、剣の先に集まり始める。



徐々にその魔力は魔法陣を生み出していった。



巨人は己の闇の魔力と相対的な聖魔力に晒されて苦しそうに叫び始めた。




「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」




咆哮によって闇の魔力が膨張し、人間達を飲み込んで行く。


しかしそれを上から被せるように聖の魔力も溢れ出す。



その巨大な魔力同士の衝突のうちに、わずか数秒で巨人を上から飲み込める程の大きさの陣が完成。



「はああああああああああ!!!!」



己の魔法に膨大な魔力を吸い取られる苦しさに悶えながらも、それを振り切ってアズは魔法陣を維持する。



真っ暗な空に一筋の明るい光。


その色は“戦神”を意味する淡い桃色。


その光の中心に見えるアズは、逃げ惑う兵士や冒険者にとって正に女神と言える存在に見えただろう。



「っ、頑張れえええええ!!!!」


「いけええぇぇえええええ!!!!」


「あの怪物をぶっ飛ばせぇぇええええ!!!!」


「「「おおおおおおおおおおおお!!!!!」」」



巨大な魔法陣がより一層眩しい輝きを放って回転し出した。


光が巨人の体をボロボロにし、光が戦場を駆け巡り全てを浄化していく。



ピシッ!



剣がひび割れる。



ピシピシッ!!



ひびはどんどんと広がっていき、“皮”が破れていく。



パキン!



そこから刃の内側が現れた。



桃色に輝くそれは最期の一線。




「はあああああああああああ!!!」




アズが剣を振り下ろす。





魔法陣から大量の魔力が溢れ出し、巨大なビームが巨人を押し潰すように放たれた








はずだった。




「戦神なんて“強欲の魔力”にかかればこんなものですよねぇ」




アズは掴まれた心臓を見た。




「かはっ」



「雑魚種族がイキって魔法使うのはもうおやめなさいなぁ? 」





小指から締めていき、薬指を締めたところでそこから血が溢れ出す。



グチュ



「あぁ」



アズはそれを眺めることしか出来ない。



グチャ



そしてディアトロフィは中指、人差し指、そして親指という順番で愛おしそうに握りしめた。



グシャッ



「あ」



ディアトロフィはアズの胸を貫いたまま、心臓を潰した。





「さようなら」




黄色い閃光が雷のように走った。




(ああ、私、死んだ)









ドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!





一瞬でアズが地面にもの凄い速度で地面に向かって落下。


アズは落下ざまにディアトロフィを視た。





“魔力を失った”アズは為す術もなく地面に墜落した。




ドカンッッ!!!




「アズッ!!!」




アズの攻撃を離れて見ていたカレラは走って戦友の元へ向かう。



「アズッ!」



戦神として尊敬し、愛していた友の姿は惨たらしいものだった。





胸には大穴が空いていて、そこから地面が見える。



「ああ...」



魔力で保護できずに背中から墜落したせいで内蔵も骨も全てかき混ぜられたようにぐちゃぐちゃだ。



「あああああ....!!」



空からアズの心臓だったものが降ってくる。



ベチャッ



地面に赤いものが散らばる。


墜落した途中で穴が空いた胸から出てきた物も落ちてくる。



「....ああああああ!!」



ベチャッ


ベチャ




鎧は辛うじて形を保っているものの、その中から大量の血が溢れ出す。



「アズッ、アズッ!!」



応答は無い。


カレラはアズの頬に手を当てて魔力を流し、回復を促そうとした。



「クソがあああああああ!!!!」



助かるはずも無いのに。



どうして。


なんでこんなことに。


どうすれば。




様々な疑問がカレラを襲う。




「殺す」




孤独な騎士は残った魔力を剣に流して構えた。



対してディアトロフィは左手に持つ杖をカレラに向けた。




「作戦は大成功!!! 今日はよく眠れそうですねぇ」




黄色の魔力を縄状に変化させたものがカレラを縛り付けようと空を這ってくる。



その魔法がカレラに達しようとした瞬間。




ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『対巨大目標殲滅兵器-Gigantes-00-01-AUXまもなく目標地点へ到着します』



「了解した」



俺は返事をしながら骸骨の上半身を殴って粉砕する。



「ええッ、来ると思っていま」



「なんで口ないのに喋れるんだよキモイ黙れ死ね」



ダークマターを瞬間的に凝縮させた。



「なんですか?! この馬鹿げた魔法は



「それ聞くの2回目だアホ」



「今の私には強欲の魔力があるのですよぉ!!」




黄色い魔力が俺を包み込んだ。



おお、なんだこれ。


なんか全身から吸われているような感覚。


いや吸われているな。


“魔力”を。



「?????なぜ無くならないのですかぁ!? この魔力は全ての魔力を吸い取り無に返す力を持っているはず!!!」



「ほお、その吸い取った魔力は使えないんだな、いいことを聞いた。死ね」



骸骨は2回目の死を遂げた。





さて。



遅かったか。


アズとやらは死んだようだ。いや、正確には魔力が死んでいる。


本来聖の魔力は尋常じゃないほどの再生力を持つからな。



どれどれ降りて魔力回路を書いてやろう。



「お前はレッドドラゴンキングの...!!」




さっきの少女を守っていた女騎士だな。




「また会ったな」



俺は地面に着地した。



「待て、止まれ!!! アズに何をする気だ!?」



なりふり構わずに女騎士を振り切ってアズ横に膝を付いた。



「まあ俺と同じように首から腕でいいかな?」



サイズ的にもそれが無難だろう。



ディスプレイを起動し、魔力生成回路のタブを開いて1番いいやつを選んだ。



「おい!」



魔力回路も魔素回路も人体に直接作るにはナノマシンが必要不可欠。



「おいっ!」



今回はアズとやらの体が魔素に耐えられるか分からないので魔力回路にする。



魔素回路は魔素を作って魔力に変換する過程で、別途で大量の回路が必要になるが、同じサイズで1万倍近くの魔力を生成できる。



「おいってば!」



このアズとやらには、一生そのナノマシンのタトゥーみたいなのが入ってしまうが、死ぬよりマシだろう。



「人様の体に何してる!?」



何より俺が間に合わなかったのが原因で死んでしまったのでこれくらいはさせて欲しい。



「生成完了、インプット」



慎重に魔力回路を貼っつける。




ちなみに服の上から回路はもちろん貼れないので鎧を脱がせている。



大丈夫。


秘部は見てない。



「おおおおおおい!!!」



「うるさい黙れ!」



「うっ」



女騎士を黙らせたところで貼り付けが完了する。



「よし、これでOK」



「...何をしたんだ?」



「そばに居てやれ、後これ直して綺麗にしたから着せといてやれ」



鎧と下の服を女騎士に渡す。


流石に大穴空いてるまま着せる訳には行かない。



「なっいつの間に!?」



俺の潔癖症と行動のすばやさは舐めないで貰いたいな。



「じゃ」



「ちょっとま



2人を戦場の外側へワープさせた。



よし、行こうか。


俺は遠くの新作へ飛ぶ。


だんだん近くになってきて分かるが、馬鹿みたいな物を作ってしまったな。




人間のような機械の体に鋼鉄の装甲。


巨大なジェット機に吊るされながらこちらへ向かってくる。





やっぱりデカい怪物にはデカい巨人が1番だろう。



「ハッチ開け」



『ハッチオープン』



首の辺りの操縦席に入れるハッチに体をねじ込む。



「もっと入口ちゃんとした方が良かったな」




ほぼたっている状態のような椅子に、手で掴む操縦桿、足を入れる穴がふたつ空いているコックピットは狭い。


俺は足を入れ、体を固定するジェットコースターによくあるあれを引いて、操縦桿を掴む。


操縦桿は左手右手に別れていて、ボタンも何も付いていない。


動きもしない。


俺が直接動かすからな。



『搭乗者の生命反応を検知、心拍数85、第一エンジン始動』




グウォングウォングウォングウォン!!!!!




コックピットが揺れる。



『第一エンジン始動完了。登場者の魔力波を検知、第二エンジン始動』




グウォングウォングウォングウォン!!!!!




さらに大きな揺れがコックピットを襲う。



『第二エンジン始動完了。搭乗者の戦意を検知、第三エンジン始動』




グウォングウォングウォングウォン!!!!!




さらにさらに大きな揺れがコックピットを襲った。



『搭乗者の精神状態良好、接続システム始動』







全ての俺の感覚が、機械へと移っていく。








『接続完了。全1500機ジェネレーター始動、3秒後に投下します。ご武運を、マスター』



『ああ。行ってくる、アルファ」



ガガガガガガガガガガガガ!!!!!



3



2



1




『投下』



ガシャン!!!!



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ゼノ・ブレイカー 戦い続けた英雄は魔法科学を使って異世界を無双する 午前の緑茶 @zecrora

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