4日目 三日坊主がやってきた

 8月13日 天気 晴ればれ


 引き続きお爺ちゃんの捜索が続く。有名な大阪の高校生探偵にも頼んだが「あかん、工藤。これはお手上げや」「せやかて工藤」だって。誰なんだろう?工藤って。

 お父さんもお爺ちゃんを探すって「じっちゃんの名に懸けて」って。

 その爺ちゃんが行方をくらましてるんだけどね。


 さて、今日は遅れて三日坊主が見えてきた。

 部屋の片隅に毬栗頭いがぐりあたまの三日坊主がいる。

 めっちゃ、こっちを見ている。

 みんな、見たことあるのかな?三日坊主って。

 お母さんが「宿題やったの?」って言った時から実はもうこの家に来ていた。

 こいつがやばい。まず装備がやばい。

 上半身裸に海パン。右手にSwitchライト。左手にドリームキャスト。足元はローラースケートを履いている。背中の鞄からはお菓子が溢れてる。そして、ずっと僕を誘ってる。


 遊ぼうよ。

 宿題なんてしなくていいよ。

 立派な大人は宿題なんてしないんだよ。

 ドリームでキャストでトゥギャザーしようよ。


 だって。


 誘惑の仕方がエロい。

 もうとてつもなくエロい。


 僕が大人ならイチコロだっただろう。

 そして、三日坊主は歌を歌う。


 CHA-LA HEAD-CHA-LA。


 気分はスパーキング。


 三日坊主のせいで「ちゃらへっちゃら」って日本語で打っても勝手にCHA-LA HEAD-CHA-LAになっちゃう。


 何だか宿題しなくてもへっちゃらな気がする。


 だから、お母さんに言ったのさ。宿題なんてしなくてもへっちゃらだよ!三日坊主もしなくてい良いって言ってたよって。


 そしたら三日坊主、お母さんにしばかれて正座させられてた。坊主頭なのにお母さんに髪を鷲掴みにされてた。

 何処に掴む髪があったんだよ。


 三日坊主の大人が本気で土下座するところを初めて見た。

 成る程、三日坊主にならない人はこうして、三日坊主を粛清してるのかと納得した。


 だって、三日坊主をしばきながらお母さん、ずっと僕を見ているんだもん。



 だから僕は今日も妄想的夏休みの宿題を頑張る。


 宿題4日目

 マナー講座。「大人の土下座」


 お母さま。

 謝るときは3本指を立ててきちんと正座をして、頭を擦るように床に伏せるのですね。

 ごめんなさい。宿題をしますね!


「せやかて工藤。宿題なんてしてたら犯人もつかまえら」


 あっ、高校生探偵もお母さんにしばかれてる。



 続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る