妄想的夏休みの宿題

21日目 Last Day

　8月30日　天気は大雨

　今日から新学期。と言っても明日は土曜日でまた休みになる。それならやっぱり、8月末まで夏休みにしておけばいいのにと思う小学生は僕だけではないだろう。

　昨日気がついた、僕の世界の真実。

　この世界はろくろあさんが作った世界。僕が過ごしていた夏休みは、ろくろあさんの妄想に過ぎない。あんだけ、ハチャメチャに過ごしていたはずなのに、今は何だかその時の記憶が曖昧になってきている。

　米子先生のプリントが大変だったのは覚えているのに、問題が何なのか思い出せない。

　凄いヤギさんもどんなに凄かったのか思い出せない。

　全てはろくろあさんの妄想。

　夏休みの出来事は少しずつ、新しい記憶に補完されていく。田舎に行って、夏祭りに行って。スイカ割りをして。

　そんな記憶、無かったはずなのに。だけど記憶を遡るとちゃんとそこにある。現に今日の学校の授業でも、やっぱり米子先生も孝先生もいなかった。そして算数の先生も社会の先生もよーく思い返してみると、ちゃんと記憶が補完されていて、新しい先生として思い出せる。ただ教頭先生の名前が花菱　重倉先生なのは、少しいやらしいと思った。少し、僕の過ごした夏休みの話も混ぜ残しておくことで、全てを妄想だと過ごさせないようにしている。でもこれもろくろあさんのストーリー通りなんだろう。

　それなら、8月31日より先は僕には存在しないのだろうか。

　ろくろあさんの「ドキッ！妄想的夏休みの宿題はエンドレス・サマー」は31日までの話だった。つまり僕もそうなる。

　今の生活も悪くない。でも、あのハチャメチャな夏休みは、確かに僕が経験した夏休みだ。

　果たして、本当にろくろあさんの妄想で僕が体験したと思っているだけなのだろうか。

　もしかすると、僕の夏休みをろくろあさんが補完しているだけなのかもしれない。

　それなら？

　それなら、僕がちゃんとストーリーを考えればその通りの明日が来るんじゃないのかな？

　ろくろあさんが妄想して作った世界じゃなくて、僕が作った世界をろくろあさんが書いている。

　それなら？

　僕は少し、いやかなり重たい米子先生が好きだし、プリントで愛を叫ぶ孝先生も好きだ。礼儀にうるさいけど頼りになるヤギさんも好きだ。

　色んな別れや経験をして、少し大人になった気がする。けど。だけど、僕はまだ子供でいたいし、楽しいことを続けたい。

　だから

　僕は、明日の事を妄想する。

　妄想的夏休みの宿題を、僕はまだ終わらせてない！！

　明日は僕の妄想的夏休みの宿題をするんだ！！僕にはまだやり残したことがある。

　そうして僕は明日を妄想した。

　妄想的夏休みの宿題。

　21日目　LastDay

　明日への妄想

　続く。