22日目 妄想的夏休みの宿題
8月31日 天気やや雨のち晴れ
朝目が覚める。
僕は顔を洗い、やり残した妄想的夏休みの宿題にとりかかる。僕の過ごしてきた夏休みは、ろくろあさんの妄想によって作られたものじゃないってことを証明する。そのために僕は母さんに聞いた。米子先生を知っているかと。そうしたら「あんた、何言ってるの?」だって。じゃあ孝先生は?って聞いても「だからあんた、朝から何を言ってるの」だって。
……やっぱり、お母さんは米子先生達を知らない。
僕は悲しくて涙がでてきた。でも、この涙はろくろあさんがそう言う風に書いたからでている涙なんだろう。
だって、僕の妄想をろくろあさんが書いているのなら、昨日僕が願った皆が元通りになっているはずだから。元通りになっていないってことは、僕はろくろあさんの小説のキャラクターにすぎないんだ。
「……ちょっと、あんた、聞いてるの?米子先生達がどうしたの?」
えっ?お母さん今なんて?お母さんが米子先生達って言わなかった?
「だから、朝から何言ってのって言ったのよ。米子先生も孝先生もあんたの学校の先生じゃない」
じゃあヤギさんを知ってる?か聞いてみる。
「知ってるわよ。学校で飼ってるインコでしょ?確かに三代目じゃなかったかしら?」
そこは三代目なんだ。とちょっぴり寂しい気はしたけど、米子先生たちの話ができるってことは……。
僕の過ごした夏休みはちゃんとあって、それをろくろあさんが書いてるんだ!
僕は出しそこねていた、算数と社会のプリントを見てみる。ちゃんと米子先生と孝先生のプリントで、回答もしっかりしていた。
僕は、もう1つ夏休みのやり残したことをすることにした。
大きく、息を吸って声を上げる。
「お爺ちゃん、見ぃつけた!」
後ろでガタッとした音と共に「なんだ、もうバレたのか。見つからないと思ったのにな」と言う声とお爺ちゃんがでてきた。
そう、姿をくらまし痕跡を消していたお爺ちゃん。色々考えてみた結果、家からでていない可能性が高いと思ったのだ。案の定、どこにいるかは分からなかったけど、あぁ叫ぶと爺ちゃんはでてくると思った。
僕は見つかったことが不思議そうな爺ちゃんをみて笑いがでてきた。
この夏は色んな事があった。
米子先生と孝先生の恋を応援したし、変なプリントもした。夏休みの自由研究もしたし、お爺ちゃんと国家レベルのかくれんぼもした。米子先生の不思議なLoopにも巻き込まれたし、不思議なヤギさんにもあった。もう会えないと思うと少し寂しい。
だけど、全部は誰のものでもない、僕が経験した夏休みだ!
そして、僕はここまでを夏休みの生活作文として書き上げた。
タイトルは「妄想的夏休みの宿題」
僕が全て妄想で生み出した、僕だけの夏休み。
この夏、沢山の妄想をして色んな日々を過ごした僕は、少しだけ大人になった。
えっ?お母さんなあに?米子先生が玄関にいるって?
えっ?孝先生と喧嘩したって泣いているだって?
ちょと、米子先生!ループさせるのだけはやめて!!
妄想的夏休みの宿題
了
妄想的夏休みの宿題 ろくろわ @sakiyomiroku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。妄想的夏休みの宿題の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます