第18話 おまけ話 ナイトZOOデートと二人の不安

涼子さんと正式に付き合うようになってから初めてのデート。


俺と涼子さんは、以前訪れた動物園に再び足を踏み入れていた。それも期間限定イベント、ナイトZOOに。


夜行性の動物を中心にひとしきり園内を見て回った後、ライトアップされた池の中をボートに乗り、二人きりの時間を過ごしていた俺と涼子さんだったが…。


ガコガコッ!タプタプンッ!!


「うわぁっ!ボート漕ぐの結構楽しいっすね!!」

「きゃあぁっ!広樹くん、あんまりスピード出さないで!前のボートにぶつかるわ!!」

「大丈夫っす。ハンドル左切って下さい。」

「ひ、ひだりぃっ!!」


ハンドル操作に自信のないらしい彼女は、壁や他のボートにぶつからないようにするのに必死でおよそロマンチックとは言い難い雰囲気になっていた。


「ふうっ…。やり過ごせたわ…。」


なんとかボートにぶつからずホッとしている彼女に、俺は苦笑いして、彼女が握り締めているハンドルに手をかけ、申し出てみた。


「涼子さん、大変なら俺、ハンドル操作もやりますよ?」


「え〜。でも、それじゃ、広樹くんに悪いわ?じゃあ、私も漕ぐ手伝いをさせて?」


と、涼子さんはペダルに足をかけたが、タイトスカートを穿いている彼女はひどく漕ぎ辛そうだった。

 

「いや、涼子さん、その格好ではキツイでしょう?俺、こういう運転結構好きなんで、任せてもらって大丈夫っすよ?涼子さんは、ゆっくりライトアップされた景色でも見てて下さい。」


「そ、そう?じゃあ、お願いしようかしら?」


俺がそう言うと、涼子さんはようやく腰を落ち着けてくれたが、その整った顔にはまだ不安そうな表情が浮かんでいた。


ガコガコッ!バシャバシャ!


「涼子さん、ボート誘っちゃってよかったっすか?もしかして苦手でした?」

 

「そ、そうではないわ。けど、ホラ!こういうボートってカップルで来るとよくないっていうジンクスがあるじゃない?ちょっと心配で…。」 


「ああ…。弁財天さんとか近くに祀ってあるところだとヤキモチ焼いて、カップルを別れさせるっていうジンクスを聞いたことありますけど、ここはそんなのないし、大丈夫ですよ。」


「そ、そうよね…。」


「はい。俺は涼子さんにぞっこんですから、少なくとも自分から離れることは絶対ありませんよ。」


ガタンッ!ダプンッ!!


「ほ、ホントッ?!広樹くんっ?!」

「涼子さ…おわっとぉ!!」


涼子さんが急に俺の方に身を乗り出したので、ボートが少し傾いてしまい、俺はバランスを取るのに苦労した。


「あ。ごめんなさい…///最近広樹くんバイトもう一つ入れて、一緒に過ごす時間減っちゃったから、避けられているんじゃないかと不安だったのよ。」


「ええっ。そうだったんすか?」


思わぬ事を言われて驚く俺に涼子さんは、気まずそうに頷いた。


「そうなのよ。ホラ、こう見えて私重い女でしょ?この間友達同士で重い女診断ってのをやってみたら、150点というゲキ重判定が出ちゃったの。

そう言えば、正式に付き合い始めたその日に関係を迫って、それから2週間後には両親の挨拶まで済ませようとするなんて、やり過ぎだったかと反省していたのよ。」

「涼子さん。自分が重いって気付いちゃったんすね…!」


やらかしたと頭を抱える涼子さんに、俺は思わず頷いてしまったが、すぐに親指を立て、笑顔を向けた。


「でも大丈夫っすよ。涼子さん!吹けば飛ぶように軽い俺には、涼子さんみたいなしっかりした重めの女性が必要なんす! 俺達きっと相性抜群っすよ!」


「ひ、広樹くん…♡」


涙目になっている涼子さんを可愛くもいじらしいと思い、バイトを増やして彼女を不安にさせてしまった事を深く反省し、きちんと説明しなければと思い至ったのだった。


「不安にさせちゃってすみません。

バイト増やしてたのは、俺、早く自分の車を持ちたかったからで…。


涼子さんにはもちろん助手席にどっしりと腰を据えてもらって、遊びに連れて行ってあげたいと思ってたんすよ…。///」


「そ、そうだったのね。嬉しい!ぜひ、助手席に乗せて!広樹きゅ〜んっっ…!////」


ギュムッ!!ドプンッ!ドプンッ!


「うわ、涼子さん、危ないって…!///」


うるうる目を潤ませて飛び付いてくる涼子さんを辛くも受け止め、スワンボートは揺れに揺れてしまったのだった。

         

        ✻ 


不安がやっと解消された様子の涼子さんにもう一か所寄りたいとお願いして、その後、俺達はある獣舎の前を訪れた。


ガサッ!


綺麗な斑点としなやかな体を持つその生き物は葉っぱの下から、俺達を警戒するように様子を伺っていた。


「はぁ…。ユキヒョウさん、キレイっすね…。涼子さんそっくりです。」

「いや、あのね。私のどこが豹なのかしら?広樹くん?」


その美しい佇まいにため息をついていると、涼子さんがジト目でこちらを見遣って来た。


「強くて美しくて、時々めちゃめちゃくちゃ可愛いところですよ?」

「も、もう、広樹くんったら…///」


大真面目に言うと、涼子さんは照れて頰を両手で覆っていた。彼女のそんなところを愛おしく思いながら、俺は獣舎にいる彼の前に頭を下げた。


「お父さん、涼子さんをお嫁さんに下さい。お願いします!」


「ガル??」

「もう、広樹くんたら、何やってるの。いくら似てるからって、私、豹のお父さんを持った覚えはないわよ?」


俺の突飛な行動に、ユキヒョウさんは首を傾げ、涼子さんは、呆れ気味にポンポンと肩を叩いた。


「いやぁ、予行練習ですよ。ご両親にお会いする当日は、お、俺、本当に食い殺される覚悟で頑張りますんで…。」


ビビって震え声の俺に、涼子さんは面白がっているような笑顔を向けてくれた。


「ふふっ。そんなに心配しなくて大丈夫よ。会えば分かると思うけど、うちの父は猛獣のように怖いタイプじゃないから。」


「そ、そうなんすか?」

   

それを聞いて俺は来たるべき両親を交えた会合の日に向けての不安を少しだけ減らす事が出来たのだが…。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳


料亭「猫山亭」にてー。



「「「ほ、本日はどうかよろしくお願いします…!…!!」」」


「「「こちらこそ、本日はよろしくお願いします…!」」」


涼子さんのご両親と顔を合わせた時、緊張していた俺と父、母は目を丸くした。


にこにこしている涼子さんの両隣には、

涼子さんそっくりの美人なお母さんと、お父さんが立っていた。


柔和な笑みを浮かべる涼子さんのお父さんを見て、取り敢えず、男性陣はすぐに打ち解けられそうな予感がして俺はホッと胸を撫で下ろした…。


※なお、涼子さん父は洋風猫系、広樹くん&父は日本猫系のお顔立ちでありました…(ΦωΦ)

******************


主人公ファイル 猫田広樹


M大学文学部史学科2年生。映画サークルに所属している。


高身長だが、猫目のフツメン。

天然でマイペースながら、優しく温かい雰囲気で、周りの人を自然と惹きつけてしまう内面的魅力を持っている。


幼馴染みで親友の金田鉄男には長所と短所を逆に吹き込まれ、長年自分は性格の悪いイケメンと思い込まされ、その上、元カノを3回NTRされる。


もはや、恋愛を諦めていたが、今の彼女で、同じサークルの先輩、槇村涼子の協力を得て、偽の彼女としてNTRの謎を解明され、本当の自分の姿を知らされる事になった。


涼子を傷付けようとした鉄男と訣別し、偽の恋人として交流する内、惹かれるようになった彼女と付き合うように…。

         

なお、元カノ①刈野小鳥②大上千愛には全く気付かない内に再度無自覚ざまぁをかますが、元カノ③如月実兎は自らざまぁ&撃退する。


それから2週間後、両親同士の挨拶の場が設けられ、婚約(挙式は1年後)涼子父の会社への就職が決定される。


以前より大学内での評判も良くなり、友人も増え、バイト、涼子父会社への就職に向けて必要な勉強をし、充実した日々を過ごしている。


女豹のような涼子に人生をすごい早さで引っ張られていく事に戸惑いつつも、本人は幸せらしい。


涼子とは、半同棲状態。週末にはバイト代で買った車(ホ◯ダ シビッ◯)で、二人でよくドライブデートに出かけているとか…。

時々、ドライブ中に涎を垂らして寝てしまう涼子の姿を広樹が可愛いと思っている事を彼女は知らない。

 

        ♡

        ♡


今カノ(婚約者)ファイル 槇村涼子


M大学心理学部心理学科3年生。広樹と同じ映画サークルに所属している。


容姿端麗、スタイル抜群で人望もあり、大学中のマドンナだが、女子高出身で、実は恋愛には奥手。


高3の時に溺愛していた飼い猫の健太(享年13年)が亡くなって以来、ずっと寂しさを抱えていた。


しかし、大学2年生の時にサークルに新入生として入って来た、健太そっくりの猫目な顔立ちの猫田広樹に一目惚れ。


広樹のふんわり天然な性格にも惹かれて行ったが、健太にそっくりだから気になっているのか、恋なのか悩んでいる内に彼は如月実兎と付き合い始めてしまう。


失恋と同時に自分の気持ちを知り、落ち込むが、女友達の勧めで、自信を持つ為、文化祭のミスコンに出る事にし、見事優勝する。


しかし、広樹は、その時実兎と親友金田鉄男の浮気と別れに落ち込んでおり、自分を見てくれる事はなかった。


好きな人を手に入れ、守りたいなら全力で狩りに行かなければならない事を痛感し、広樹と親友の彼女をめぐるいびつな関係を調べ始める。


(また、いざと時の為にこの頃から、キックボクシングジム、Hawks Moon〈ホークス ムーン〉で護身術を習い始めていた。)


ミスコンでの人脈を駆使し、親友や元カノの身辺を調査し、NTRの真相に大体の推測がついたところで、満を持して、飲み会の場で広樹にNTRの謎を解明してあげると持ちかける。


偽の彼女として、デートを重ね、広樹との距離を縮め&元カノ①②を撃退。

※なお、元カノ①刈野小鳥に関しては、ほぼ本人だと分かっていたが、②大上(相良)千愛に関しては、苗字も変わり、容貌も変わっていたので、60%ぐらいの疑いであった。


広樹との信頼関係を築いた後に、広樹と共に鉄男と対峙。


推測通り、広樹のいないところで自分にNTRを仕掛けて来た鉄男を怒号と共に蹴り飛ばし、撃退。


広樹の前で、鉄男が長所と短所を逆に認識させていた事を指摘し、NTRの謎を解明する。


優しい広樹は、それでも親友を許してしまい、そちらを選んでしまうのではないかと危惧していたが、自分を傷付けようとした鉄男に怒り、訣別を告げてくれた事に安心する。(また、後に元カノ③如月実兎を広樹自ら撃退してくれた事に惚れ直している。)


改めて広樹と本物の恋人関係を結び、その日の内に処女を捧げ、2週間後には両親の顔合わせ&婚約(1年後挙式)と全力で獲物(広樹)を狩りに行く姿勢に、

周りの女子からは『M大の女豹』と称され、崇められる。


広樹とは半同棲状態で週末にはドライブデートを楽しんでいる。


幸せな日々を過ごす内、健太を失った寂しさも和らぎ、最近は猫カフェでバイトを始めている。


ついつい、同僚や客に猫のような彼氏への溢れる想いを語ってしまう事があるのを広樹は知らない。





✽あとがき✽


最後まで読んで下さり、応援下さり、本当にありがとうございました!!


現在、

フォロー1123 ☆343

になりまして、多くの方に応援頂けまして幸せです✨(;_;)✨


読んでよかった、評価してよかったと思う作品であれていたら嬉しいです。


読者の皆様に感謝の気持ちを込めて涼子さんをイメージしたお礼入りのAIイラストを近況ノートに投稿する予定ですので、よければご覧下さいね。


また、近日中に涼子さんと出会うのがもう少し早かったらというイフもののおまけ話を近況ノートに投稿できたらと思っていますので、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m



追記:イフもののおまけ話のURLになります。


https://kakuyomu.jp/users/koba-koba/news/16818093085784262987








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親友に彼女を3回NTRされたダメ猫な俺を女豹なマドンナ先輩が全力で狩ってくる 東音 @koba-koba

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