第17話 ダメ猫な俺のほんの少しの前進と女豹なマドンナ先輩とのこれから
「広樹くん、ハイッ。玉子焼き、あ〜ん♡」
「あ〜ん♡」
ざわざわっ…。
「ね、猫田っ…!槇村さんに手作りのお弁当をあ〜んさせてもらっているっっ?
羨まけしからん!!」
「うわ、槇村先輩と猫田くん、本当に付き合ってんだ。ラブラブじゃん…!
飲み会のノリで冗談で言ってるのかと思ってた…。」
お昼休みー。
サークルでいつもお弁当を食べている空き教室で、彼女の作ってくれたお弁当をあーんで食べさせてもらっていた俺は、周りのサークル部員をざわつかせてしまっていた。
女豹なマドンナ先輩こと、槇村涼子さんと本当の恋人同士になってから、家も激近の俺達は、半同棲状態になり、甘々な日々を過ごしている。
来週には、親同士の挨拶と婚約式を行う予定となっている。
大学では、多忙な彼女と過ごせる時間は減ってしまうものの、彼女が作ってくれた弁当を一緒に食べられるお昼休みは俺にとってとても楽しみな時間になっていた。
「あれ?今日は魚沼くん、来ていないのかしら?一緒に飲む約束していたの今日だったわよね?」
「ああ…。あいつは、午後からの授業で、いつもギリギリにしか来ないんで…。授業終わったら、待ち合わせ場所に来るように言ってあるから大丈夫っすよ。」
聞かれて、俺が答えると、涼子さんはホッとしたような笑顔になった。
「そうなの!なら、よかったわ。魚沼くんは、広樹くんの事をちゃんと思ってくれるお友達だから、大事にしなきゃね。今日は沢山お祝いしてあげましょう。」
「ええ…。あいつは、本当にいい奴で、大事な友達です。
今日のあいつの誕生日は盛大に祝ってやりましょう。」
涼子さんと正式に付き合うようになった事を報告すると、悔しがりながらも、祝福してくれてた航を思い浮かべ、そして、俺は涼子さんに大きく頷いたのだった。
✻
俺が中庭のベンチで二人を待っていると…。
「あ、猫田く〜ん!久しぶりぃ!」
「…!」
ノースリーブにヒラヒラの膝上スカートという女子の最強コーデのツインテールの女子がこちらに向かって手を振りながら近付いて来た。
元カノ3人目の如月実兎さんだった…。
「如月さん…。久しぶり…。」
「今ヒマしてるぅ?デートでもしない?」
「や、今日は予定があって…。ってーかもう付き合えないって言ったよね?俺、もう彼女いるし。」
「そーなんだ。でも大丈夫!私、そういうのあんま気にしないから!
今まで付き合った男子の中で、猫田くんが、一番一緒にいて楽しかったなって思って?
彼女いてもいーからさ、友達として今度、飲みにでも行こ?ホラ、人生経験的な?」
「ほ、ほほぅ…?」
なるほど、彼女の中ではそんな思考になっているのか…。と思わず、唸ってしまった。
謎理論でグイグイ来る彼女にどう対応したものかと俺は首を捻っていたが…、俺は涼子さんのプクッと膨れた顔を思い浮かべ、ここは俺らしく思った事を素直に言葉にしようと思い付いた。
✻
「……。で、動物の像の前で撮った涼子さんの顔が本当に凛々しくって!野性の女豹みたいにカッコよくって…!」
「…………。||||」
「でも、その後行ったところでは逆に甘える姿が可愛…、あ、や、何でもない。//」
「?!||||」
「えと、その次の日、優雅に朝食バイキングのクロワッサンを食べている姿も気品があって…。」
「(いや、その不自然な時間経過何っ)?!||||||||」
能面のような表情の如月さんに、この前、涼子さんとナイトサファリに行った時の事を危うくアダルトなシーンまで言いそうになりながら、熱く語っているところへ…。
「あっ。広樹く…。 …!!☠」
「あっ。広樹…。…!!💥」
途中で合流したらしい涼子さんと航がこちらに向かいながら、ベンチの隣に座っていた如月さんの姿に気付き、固まった。
「き、如月さん…|||| また、広樹にアプローチを…?」
「如月さんっ!あなた、広樹くんの事をあんなひどい形で裏切ったくせに、よく顔見せられるわね!」
航はドン引き、涼子さんは如月さんと俺にプリプリ怒る中、如月さんは、すっくとベンチから立ち上がった。
「や、もう全然猫田くんとは、何ともないし!こんな一緒にいてつまらない人だと思わなかった!さよなら〜!!」
「なっ…!💢 広樹くんがつまらないわけないでしょ!尻が軽い上に、目も頭も節穴な人ね…!!」
ブンブン手を横に振り否定しながら、そそくさとその場を離れていく如月さんに、涼子さんは拳を握り、怒りを爆発させた。
「広樹くんも、もっとハッキリ言ってやらないと…!」
「すみません…。でも、もう彼女来ないと思いますよ?俺、やっぱ、キツイ事言って、断るのは苦手なんで、涼子さんへの愛を延々と語って諦めてもらいました。」
「え。///」
怒られて謝りつつ説明をすると、涼子さんはポッと頬を赤らめた。
そんな彼女を可愛く思いながら、安心させてあげたいと思い、親指を立てる。
「俺は、他の女子につまんねー奴って思われても、涼子さんだけに興味を持ってもらえれば大丈夫なんで、ヘーキっすよ?」
「も、もうっ…!広樹きゅんのバカバカッ!好きっ♡好きっ♡」
ポカポカポカ…!
「ハハッ、涼子さんっ…。全然痛くないっす。」
目をうるうるさせて俺をタコ殴りにしてくる涼子さんと戯れていると…。
「俺…、も…、帰ろっかな…。」
「航、待てって!!」
「魚沼くん、待って!!」
ダメージを受けて、体の輪郭線が薄くなってしまった航がその場を離れようとしたので、俺と涼子さんは必死に引き止めた。
✻
「「ハッピーバースデー!航(魚沼くん)!!今日は俺(私)達の奢りだから沢山頼んでくれよ(ね)?」」
「あざーず!」
それから、俺達は、いつもサークルでよく行く、おでんが美味しい居酒屋を訪れ、中生ジョッキで乾杯をしていた。
「しっかし、NTRの不遇に遭っていた広樹が大学のマドンナ、槇村先輩を捕まえるとはね〜!人生、分からねーもんだなぁ…。」
「ああ…。自分の事ながら、今でも信じられないような気がするよ…。」
柚子胡椒のかかったおでんをつつきながらら、航と共にしみじみと頷いていると、涼子さんが苦笑いしていた。
「どちらかというと、捕まえたのは、私の方だけどね?もう婚約も控えているんだから、いい加減に信じて?」
「かーっ。婚約!羨ましいな。今度広樹のご両親も、さぞかし喜んだろうな…!」
「ああ。メッチャ喜んでたよ。」
電話で涼子さんの話をした時に、狂喜乱舞していた両親の事を思い出し、ついでに少し疑問に思っていた事を口に出してみた。
「そう言えば…、自分の顔がよくて、性格がワガママだと思い込んでたの、鉄男の他に、母さんもそう言ってからってのもあるんだよな…。何で、そんな事を言っていたんだろう?」
「そうねぇ…。どんなにいい人でも、母親の前では、ワガママも言うでしょうし、性格がワガママと言っていたのは不思議じゃないのだけど…。」
「顔が良いって言われたのは何でなんだろうな…。広樹、両親の写真とかないのか?」
「ああ…。えーと、確か今年の正月の時に撮った写真が…。ホラ!」
「「……!!💥💥」」
俺がスマホを取り出し、今年の正月に実家に帰った時に、神社の前で撮った写真を見せると、二人は驚いたように目を見開き、声を揃えて叫んだ。
「「お父さん、広樹(くん)にそっくり!!」」
「え?そ、そうかぁ…??」
ふくよかな母の隣にひょろっと背の高い眠そうな猫目の父が写っている写真を見て俺が首を捻っていると、涼子さんが笑い出した。
「ふふふっ…。お母様、きっと、お父様のお顔が好みだから、そっくりの広樹くんの事を顔が良いと言っていたのね…。
何だか、気が合いそうだわ。
お会いするのが、楽しみよ♪」
「涼子さん……。///」
「広樹、槇村先輩、お幸せに!式には呼んでくれよ?」
茶化すような航の声に、俺と涼子さんは同時に答えた。
「何言ってんだよ、航、まだ気が早い…」
「もちろんよ。ちょうど1年後に挙式予定だから、よろしくね?」
?!!!
ダメ猫な俺も、少しだけ前進したような気がしていたが、まだまだ女豹なマドンナ先輩の素早さには敵わないのだった…。
******************
元カノファイル③
広樹と大学1年の時、同じゼミで出会ったのをきっかけに付き合い始める。
性格は明るくて社交的。女の子らしい服装で一見清楚に見えるが、結構な肉食で、過去五股までした経験がある。
広樹と出会った時が、ちょうど男が切れるタイミングだった為、しばらくは誠実な付き合いが続いたが、文化祭に遊びに来ていた鉄男の誘いに乗り、ホテルに行ってしまう。
その様子を見ていた同級生の子から、広樹にその事が伝わり、破局。
その後すぐに鉄男とも別れ、
「縒りを戻したい」と広樹に迫るも、
「親友の元カノと付き合ったら、奴に辛い思いさせるから、復縁は出来ない」と言われる。
しかし、あまり物事を深く考えない性質だった為、その後も広樹に何度もしつこいアプローチを計る。
広樹に槇村先輩の惚気を延々聞かされて、ようやく諦める。
その後も奔放なところは変わらず、服やアクセサリー代を稼ぐ為、夜はキャバクラで働く。店でNO1に駆け上がったかところで何故か急に仕事を辞め、大学も中退して、実家に戻る。
彼女に何があったのかは、誰も知らない…。
✽あとがき✽
最終話まで読んで下さりありがとうございました!
次回のおまけ話で完結となりますので、そちらもどうかよろしくお願いしますm(_ _)m
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