第10話 親友への連絡とマドンナ先輩の想い
『おう。広樹じゃねーか!どうした?』
電話をかけると、鉄男はいつものようにフレンドリーに応対してくれた。
「うん。実は、俺、新しい彼女が出来たんだ。」
『え。マジかよ!おめでとう広樹!』
テンション高く祝福してくれる鉄男の声に、嘘があるようには思えないが…。
『で?どんな子なんだ?』
「うん。大学の先輩。美人で優しくて、俺には勿体ないぐらい
鉄男に紹介したくてさ、今度一緒に飲みにでも行かないか?」
『へえ〜。美人の先輩!すげーな、広樹!おう。ぜひ!ぜひ!』
「じゃあ、今週の金曜あたり、どう?」
『おう、1日まるっと空いてるぜ!』
「じゃあ、17時頃、この前飲んだ居酒屋『とりQ』で。」
『了解。楽しみにしてるぜぃ!』
鉄男は、弾むような声でそう言い、ちょっと付け足した。
『俺達、元カノの事ではゴチャゴチャしちゃったけどよ。
俺は、広樹の幸せを願ってんだよ。本当だぜ?
だから、金曜日は彼女さんとの事、一杯祝福させてくれな?』
「ああ、ありがとな。鉄男。」
鉄男の言葉が本心からのものであって欲しいが…と思いながら、俺は電話を切った。
同時に鉄男に連絡を取ってほしいと言った後の、涼子さんとのやり取りを思い出し、胸が痛んだ。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
涼子さんは、とても神妙な顔で俺にこんな事を告げた。
「それでね。広樹くん。三人で会う機会に、恐らくNTRの謎は解明されると思うのだけど、その時、広樹くんは今まで認識していた自分と親友の鉄男くんとの関係や自分自身に対して、間違った認識を
持っていた事に気付くと思うの。
広樹くんにとって、それはもしかしたらとてもショックな事かもしれないけど、きちんと受け止めて、これからの事を考えて行って欲しい。私はそう願っているのよ。」
「涼子さん…。」
必死に訴えかける彼女の真剣さに気圧されながら俺は恐る恐る聞いてみた。
「やっぱり…、鉄男は、俺に対して悪意を持って、彼女をNTRしたって事なんでしょうか…。」
「じゃあ、逆に聞くけど、そうじゃなければ、どうしてあなたの彼女が全員親友に取られてしまうなんていう事態になるのかしら?」
「うーん、まぁ、俺が不甲斐ないから見限られちゃうせいもあるかもしれないけど、鉄男が、女性を惹きつける特別なフェロモンを持ってるんじゃないのかと…。」
考えながら俺が答えると、涼子さんは困ったように微笑んだ。
「ふふ。フェロモンねぇ…。そんなものがあるなら、鉄男くんとすぐ別れる事もないし、広樹くんに復縁を迫ることもないんじゃないかしら。
そこには、やはり、からくりがあるのよ。
親友の善意を信じたい気持ちは分かるけど、鉄男くんのやっている事はかなり悪質よ。このままでは、広樹くんもその恋人になる人も不幸になり続ける事になる。知った以上は私も見過ごす事はできないわ。」
「……。」
涼子さんの厳しい言葉に俺は俯いた。
「からくりを知っている私が鉄男くんに傾く事はないと思うけど、広樹くんが心配だというなら、約束するわ。
もし鉄男くんにフェロモンがあって、万が一私が彼に惚れてしまった場合でも、
謎は絶対に解き明かす。
私を信用してもらえるかしら?」
「はい。涼子さんは強くて優しい人っす。俺はあなたを信じます。」
迷いなく頷くと彼女は泣き笑いのような表情になった。
「ありがとう…。
私もね、広樹くんを見ていて、過去の悲しい別れにいつまでも捉えられてはいけないと思ったのよ。
この件が解決して、広樹くんが前へ進むのを見届けたら、私もようやく新しい一歩を踏み出せそうだわ…。」
そう言って、胸に手を当ててそっと目を閉じる彼女に、尊さを感じると共に、俺はそんな彼女を守ってあげたいと強く思ってしまった。
俺、ヤバいな…。
いつの間にか、涼子さんの事をこんなにも…。
*あとがき*
いつも読んで下さり、フォローや、応援、評価下さり、本当にありがとうございます✨✨
今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m
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