第8話 動物園デートとマドンナ先輩の哀切《前編》
「おお〜!すっげ!りんご一瞬で噛み砕いて、ゾウ、マジパネェっすね!」
「ふふっ。ホントね。ゾウ、マジパオンっすね?」
ゾウが飼育委員の投げたりんごをガッシュガシュ食べている様子に俺が歓声を上げていると、隣の涼子さんがこちらにいたずらっぽい笑みを向けて来た。
「なんすか、それ〜。」
「ふふ。広樹くんあんまり嬉しそうで、移っちゃった。さっきもカバの水浴びに大興奮してたし…。もしかして、大きい動物が好きなの?」
「あ、はい。動物は皆好きですけど、自分より大きい動物って、なんか圧倒されて、ガーってテンション上がっちゃって…。すんません。今日は涼子さんの行きたいとこで楽しんでもらおうと思ったのに、俺ばっかはしゃいじゃって💦」
聞かれて、さっきから、子供みたいにはしゃいでしまっている自分を振り返り、恥ずかしく思っていると、涼子さんは引率の保護者のような温かい目で俺を見ていた。
「いーのよ?私の大好きな場所に広樹くんと一緒に来れて楽しんでもらえて私、嬉しいわ?」
ううっ…。完全に子供扱いされてしまっている…。///
そう。バイト先に迎えに来てくれた涼子さんとデートに向かった先は、動物園だった。
前回の映画館デートでは、俺の好きな映画に付き合わせてしまったので、今回は涼子さんの好きな場所にしようと思い、ロインで聞いてみると、意外にも動物園という返答が帰って来た。
涼子さんなら、もっと洗練された大人な場所が好みかと思っていのだが、意外にも彼女は動物が大好きで、ここ、H動物園の年間パスポートを持っていて、休みにはよくここを訪れるのだそうだ。
俺のNTRの謎を解き明かす為に色々協力してくれている涼子さんに、楽しんでもらおうと動物園の事を色々調べている内に、結果、自分がはまってしまい動物を見て回って大喜びするという状況になってしまっていた。
「いや、俺、ワガママに人を振り回しちゃうところあるから、ダメなんすよね。
相手の事もちゃんと考えなきゃって思ってはいるんすけど…。」
元カノ達に車や自分の好きな車の知識をガーッと語って引かれた経験を苦さと共に思い出し、そんなんだから浮気されちゃったんだろうなと気まずく頭を掻いていると、涼子さんは首を傾げていた。
「うーん。広樹くん、確かに大分マイペースだけど、ワガママとまでは思わないわね…。のんびりしたゆるキャラみたいなイメージだけど…。それって、誰かにそう言われたの?」
「あ、はい。母と鉄男によく言われます。『お前は顔はいいけど、性格がワガママだなっ。』て。」
「ふぅん…。なるほどね?」
涼子さんは一瞬鋭い目をすると、ウンウン頷き、俺に向き直った。
「まぁ、私は不快じゃないけど、相手の事をちゃんと考えなきゃって思っているなら、今日は少しでいいから私の事を考えて欲しいわ。ねっ。広樹くん?」
「は、はいっ…。そ、それはもちろん。///」
至近距離に近付かれ、人差し指を突き出し主張する涼子さんに、俺はドギマギしてしまった。
「広樹くんから見た私ってどんなイメージかしら?何が好きか、何が嫌いか、どんな性格で、動物に例えるならどんな動物か?よかったら、デートが終わるまでに教えてくれる?」
「わ、分かりました。俺、涼子さんの事
考えてみます。」
こちらを悩ましげに見上げる大きな瞳、艷やかな唇に目が離せなくなりながら、コクコクと俺は頷いたのだった。
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