高嶺の薔薇令嬢、百合メイドの愛を知る。
詩月結蒼
第1話 ユースティシアとデイビッド
レイノルズ公爵家には一人の令嬢がいる。
「おはようユース」
「! デイビッド様……!」
ユースティシア・レイノルズ。
第二王子、デイビッド・グラントの婚約者で、レイノルズ公爵家の長女。
成績優秀、才色兼備な女性で、見目麗しい金髪碧眼の美少女の彼女は、デイビッドに深く愛されていた。
「今日も元気そうでよかった。僕のユース」
「…………」
「ユース?」
デイビッドの服は黒を基調としたシンプルなもので、銀糸の刺繍や装飾が施されている。
デイビッドの銀髪と揃えたものだ。
ユースティシアは淡い藤色を基調としたドレスとなっており、デイビッドと同じく、銀糸の刺繍や装飾が散りばめられている。
黒のレース記事を使用することにより、ユースティシアの落ち着いた雰囲気をより一層引き出している。
一目で二人が婚約者であることがわかるようにデイビッドが作らせたオーダーメイドの服だった。
ユースティシアは数秒デイビッドを見つめ、尋ねた。
「デイビッド様は少しお疲れのようですが、何かあったのですか?」
「!」
デイビッドは目を軽く開く。
ユースティシアに言われるまで、誰にも気づかれなかったからだ。
髪をくしゃっといじり、デイビッドは言い聞かせるようにユースティシアに言う。
「やっぱりユースには内緒ごとができないな……。安心しろ。少し忙しいだけだ」
「それならいいのですが……」
心配するユースティシア。
その愛らしさに耐えられず、デイビッドは抱きついた。
「心配してるのか?」
「っ、当たり前です」
ユースティシアは当然のように断言する。
デイビッドはその言葉を聞くと、さらに強く抱きしめた。
「なら僕と一緒にいて。僕を癒せるのはユースだけだから」
「そんなことでいいのですか?」
「そんなことだけで嬉しくなるんだよ」
デイビッドはユースティシアの手をとり、客間へと共に歩く。
そんな二人の姿をユースティシアのメイドであるリリーは静かに見つめていた。
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