第16話 普通の少女




 リリーがメイド服を脱いだ。

 なめらかな白い素肌が露わとなる。


(綺麗な体……)


 案外細い肢体だ。

 にも関わらず、あんなにも早く動き、強い力を持っている。

 いったいどんな鍛錬をしているのか。

 ユースティシアは不思議に思う。


「……あの、ユースティシア様」

「? なにかしら」

「あまり、見ないでください」


 リリーが恥じらうのをユースティシアが見たのは初めてのことだった。


「ユースティシア様のように美しい体ではございませんし……」


 ユースティシアはそうは思わなかった。

 十分女性として美しい体をしている。

 そしてこれも初めてみて気づいたのだが、リリーはかなり女性らしい体をしている。

 夜伽は間違いなく成功するだろう。

 この体に何も思わない男性などいないのでは?と思うほど結構いい体をしている。


(少なくともわたくしはリリーのスタイル、いいと思いますけど……)


 人それぞれ理想は違う。

 ユースティシアが口出しすることではない。


「ごめんなさいね、リリー」


 ユースティシアは素直に謝った。

 リリーが着替えている間、ユースティシアはリリーに合う服や髪型を考える。


(今のネグリジェならハーフアップが似合うかしら。……あ、でもヘッドドレスを付けるなら難しいわよね。うーん……)


 お団子。

 ツインテール。

 三つ編み。

 髪型だけでも種類はたくさんあるが、それに加えてフリルやリボンをつけるとなると、さらにレパートリーが増える。


「ユースティシア様」


 リリーの着替えが終わったようだ。

 ユースティシアは目を開けた。

 そして、リリーに身惚れた。

 普段、ユースティシアのメイドとして引き立て役を務めているリリーだが、本人の内に秘める魅力を引き出せば、幾人も魅了することができる。

 可愛らしいネグリジェに慣れないのか、心配気な眼差しが初々しい。

 素足というのもまた珍しい。

 やはり「戦闘時に不利になります」と言った意見をばっさり切り落として正解だった。

 なにより、自分とお揃いだということに喜びが溢れる。


「どう、でしょうか」

「とっても似合ってるわ!」

「っ! ありがとう、ございます」


 照れているのか、可愛らしい。

 ユースティシアは棚の中に入っているリボンやピンなどを取り出し、リリーに椅子に座るよう言う。

 そして、リリーの髪に触れた。


「ユースティシア様。何をなさるおつもりですか?」

「リリーのヘアアレンジをしたいの」

「そうでしたら、私が自分で……」

「だめよ。これはわたくしがやりたいことなのだから。大人しくしてね」

「……承知しました」


 リリーはユースティシアにされるがままになる。

 数分もするとユースティシアはリリーから手を離した。


「うん。いいわよ」


 我ながら可愛くてきた、とユースティシアは満足げだ。

 リリーも気に入ったようで、「ありがとうございます」と礼を言った。


「私もユースティシア様の御髪おぐしに触れてもよろしいでしょうか」

「なら、リリーとお揃いがいいわ」

「かしこまりました」


 二人は主従であることを忘れ、どこにでもいる普通の少女だった。



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