あとがき
中高生の頃、ライトノベルのあとがきを読むのが好きでした。物語が完結しているにせよ、「続く」で終わっているにせよ、ライトノベルにはあとがきがあるのが一般的で、物語の世界にたっぷりと浸った余韻の中、ちょっとした裏話や作者の日常が垣間見えるあとがきを読むのは、ずっと大人で作家という特殊な職業についている作者を身近に感じさせてくれる貴重な体験でした。
自分が大人になり、一般小説や純文学を読むようになると、あとがきはないのが当たり前になり、むしろ一人で物語の余韻に浸りたい、あとがきなんてノイズだと思うようになりました。
さて、WEB小説の世界では、あとがきはあるのが普通なのでしょうか? ないのが普通なのでしょうか? なくても困らないですが、今は特にノイズとも思わず、あれば楽しく読ませてもらっているのは確かです。
私はこの作品をここで発表するまで、WEB小説というものをあまり読んでいませんでした。そのせいでWEB小説の流儀というものを未だによくわかっておりません。
ただ、カクヨムには「近況ノート」というものがあるので、作者の近況や裏話はそっち書けばいいか、棲み分けできるのはWEBならではの良さだな……と思い、当初この作品にあとがきは付けておりませんでした。
しかしながらちょっとした理由があり、完結後ではありますが、この度あとがきを付け足すことにいたしました。
最大の理由は、「カクヨムでは8万文字以上の作品が『注目の長編』として取り上げられる候補になる」という話を耳にしたからです。
この作品の発表時の文字数は79698文字。8万文字までわずか302文字。なんともったいない。せっかく『注目の長編』に入る機会を300文字の差でみすみす逃していたことになります。「だったらあとがきを付けて8万文字を超えたほうが良いのでは?」という単純な理由です。小説の内容は変えたくはないですが、あとがきを書くことで読んでいただく機会が増えるなら、やらない手はないですよね。
もう一つの理由は、意外と近況ノートが読まれていないらしい(作品に比べて「いいね」があまり付かない)、ということです。まあ別に近況ノートも読みたい方だけ読んでくれれば良いので、ぜひ読んでほしいというわけでもないのですが、今後作品が増えた場合、どの作品とどの近況ノートが対応しているのかも分からなくなりそうですし、これを機に少しまとめてみたいと思いました。
以下は以前に書いた近況ノートとかなり重複しておりますが、ご容赦ください(ここまで書いた時点ですでに8万文字は超えているはずですが……)。
私事ですが、というかあとがきなんてほぼ私事ですが、私は普段、別名義でゲームのシナリオを書いています。しかし、いつの頃からか与えられた題材でシナリオを書くのが当たり前になり、自分自身の「書きたいもの」を見失っていたことに気づきました。
もちろんゲームは企業が大きな資本を投下してチームで作るものなので、自分が「書きたいもの」を押し通すことはできません。とはいえ、与えられたコンセプトの中でいかにユーザーに喜んでもらえるものを作るか、ディスカッションを繰り返しながらシナリオを作っていくのもまた楽しいものです。しかし一方では、物語を作り始めた頃の初期衝動を取り戻すべきではないかという想いもあり、自分が本当に書きたいものはなんなのか、私は自問自答を繰り返していました。
そのときに頭に浮かんだ物語が、この『サマーナイト・レポート』でした。
そんなわけでこの小説、WEB小説の流儀とか、どんなものが流行っているかとか、まるで意識せずに書かれています。
そもそもWEBで発表するか公募に出すかも決めずに書き始めて、初稿が上がってようやく考え始めたという……。
内容的にもこれがライトノベルなのかSFなのか純文学なのか分からず、公募に出しても漏れなくカテゴリーエラーになる気がして、結局ここで発表することにしたわけですが、今度はジャンルをどうするかという問題にぶち当たりました。
読んでくださった方はご存知かと思いますが、この作品は徹頭徹尾、彼女の話が嘘か本当かは分からない、というスタンスで書かれています。それ故にSFとも現代ドラマとも断言できません。
結局、物語の主題は恋愛と青春なので、現代ドラマとして発表しましたが、どう解釈するのも読んだ方の自由、というつもりでいます。
プロキオンのシーンも、現実とも主人公の想像とも解釈できるように書いたつもりです。なのですが……。
実を言えば、私の想像に反して現実と解釈される方が多かったので驚きました。もちろんどちらに解釈していただいても良いのですが、思ったより偏ってしまったな、と。自分の読みの甘さを痛感しましたね。
ということで、このあとがきを書くに先立って、プロキオンのシーンを少しだけ修正しました。発表済の作品をあまり改変するのも良くない気もしつつ、まあ細かい表現のレベルなのでご容赦くださいませ。
さて、新たにここまで読んだ皆様はどう感じられましたか? お時間がありましたら感想などいただけると小躍りして喜びます。★などいただけるとスクワットして喜びます。★1でも★3でも、感じたままにご評価いただけますと幸いです。
最後になりますが、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。「自分の書きたいものを書く」という目的で書いた作品ですが、「自分の書きたいもの」は誰かに楽しんでいただくことで完成するものです。楽しんでいただけたのであれば幸いです。
それではまた、別の作品でお会いしましょう。
二〇二四年一〇月 瀬谷酔鶉
(謝辞)
『ぶちぬけ!2008!』の歌詞はdoriko様に許諾を得て引用させていただきました。
突然のメールにもかかわらず快諾いただき、doriko様には大変感謝しております。ありがとうございました。
『ぶちぬけ!2008!』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm1853135
サマーナイト・レポート ~10代最後の夏。自称“人工生命体”な彼女と、夜明けの海までの二人旅!~ 瀬谷酔鶉@男♂️だけどガールズバンドやる @suijun
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