……と、思いましたが正直言うと我那覇先生の側から見てみると「このタイミングがベスト。これしか方法がなかった!」という最高のタイミングでもある。
とにかく、全てのカギを握る男、我那覇先生は計画を実行してしまったのだ。アオシマ編集よ、君は尊き犠牲となった。存分に振り回されるがよい。
と、思っていたのだが、どうやらY先生にもなにやら怪しいところが……?
いやそもそもこの「ファントム・オーダー」が世に出た時点で名乗り出なかったのがおかしいのだ。そうだ。このY先生もよくよく考えてみたら怪しすぎる。
「物語」をめぐって繰り広げられるノンストップサスペンス。まだ第1部までしか読んでいませんがテンポが速くてとても読んでいて楽しいです。
出版記念パーティまで行った作品が盗作だった──そんな告白を作者である我那覇から受けた若き編集者アオシマが、彼に翻弄されつつも真実に近付いていく
本作品は、こういったあらすじの物語だ
まず、特筆すべきは題材であり、あくまでレビュー者の知る範囲内に限るが、他に似たような作品を見たことはない
盗作をテーマにした作品はあるが、それは得てして「気の迷いで盗作してしまったことを隠す」といった内容になりがちで、本作品のように「バレてもいいから本当の作者に会いたい」という目的の作品は初めて見た
そこに、盗作がバレても構わないという我那覇と、バレれば明らかに迷惑を被るアオシマとの立場の差がスリルとなって、アオシマと共に胃が痛くなりそうだった
果たして我那覇の真意は、本当の作者は現れるのか、先が気になって仕方がない作品だ
※アカウント利用停止措置を受けたため、本レビューは再投稿となります
まず第一にネット小説で、僕が唯一読み切った長編の作品がこちらです。基本的にネット小説より、家に置かれてる本屋で買った小説読んだ方が大概は完成度も高い。挙句ネット小説なんかは無料で、飽きたら他の娯楽をすればいいのだから。そのハンデの中で、ネットに上げられた無料の小説を最後まで読ませるという時点で、最高評価なのは間違いない。最後の方、職場の休み時間で読むぐらいハマってましたからね。
で、この小説は作者の知能の高さ、知識の深さ、それらを含めたうえでの文章力の高さに支えられている小説だと思います。僕は生きていて世の中に対して全く思考を働かせたことがないんですけど、この作品は専門的な事柄、知識などフル動員されて書かれている。参考文献なんて出てくる小説そうそうありませんしね。この作品は俺には絶対かけない。俺はアホだから。
ただ、このレベルの小説に対しては、その辺の有象無象のネット小説と比べてしまうと絶賛することしかできないので、書籍化以上の作品と比べての感想を書かせていただくと、確実に要素を入れすぎだなと思いました。この作品の内容は、一章と二章で間違いなく2冊のそれぞれ全く別途な本が出来あがる要素があります。悪い言い方をすれば、作者の能力以上のことをやってしまったと表現できるのですが、そもそもこの内容(テーマと言い換えてもいい)を両方違和感なく取り込んで小説を書ける小説家なんて、誰がおるんだと。盗作と〇ロなんて組み合わせるテーマじゃない。もし組み合わせることが可能な作品があったとしても、それはこの作品ではない。それでも、書き遂げてしまうのが、我那覇さんの能力の素晴らしさなのだとは思いますが。中村文則の教団Xですら、核となる要素は宗教とテロなので、まだ近い。つーか、最後まで読んで俺は完璧に小説の理解(特にラスト)を果たしているのか? なんとなくの『こういうことなんだろうなぁ……』というのは理解しているつもりではありますが。
ということを超真剣に書き込むぐらいにはのめり込んだ作品でした。最近読んだ小説だと、米澤穂信のインシテミル(面白かった)と同じ程の満足度がありました。(プロ小説と互角の勝負するネット小説かって何?)大変良かったです。ありがとうございました。
編集者アオシマは担当作家の出版記念パーティを終えた翌日、作家本人から「この作品は盗作だ」と知らされた。既に出版日は決定している。何故盗作したのか、何故このタイミングなのか。
作家・我那覇の告白から始まるミステリー作品です。
導入から衝撃的な書き出しがなされ、これは凄いと感じざるを得ませんでした。我那覇の独白、アオシマの困惑。私もその場に居合わせたかのように思わせる、臨場感溢れる描写と表現。
たとえばアオシマの『気分が乗った日』に行われる『モーニングルーチン』。丁寧に描写された『それ』が、我那覇の告白により駄目になってしまいます。
駄目になりそうなのはそれだけではありません。出版記念パーティまで行った『作品』自体が駄目になろうとしているのです。
私も末席ながら小説書きに身を置く者。この物語は読者が『小説に携わる者』であればあるほど、引き込まれてしまいます。
そして物語は進み、アオシマは共犯関係に身を置いてしまいます。その心理描写は見事です。
プレッシャーから逃れ、保身に走る。誰しもが経験、またはその誘惑に駆られたことがあるはずです。アオシマに感情移入し、自身を重ね合わせて読んでしまう。
その仕掛けがまた巧妙なのです。
シーン4 [アオシマ]にて、我那覇は読書家俳優との対談で『作品について作者が語る内容はネタバレではなく、すべて演出です。』と言っています。
あらすじや宣伝で自作品を語る時、『作家』は演出を意識し、『読者』はそれを読んで判断する場合があるでしょう。この記述からもこの作者様の『仕掛ける視点』が確たるものだと感じました。
そして小道具やワードが素晴らしい。
シーン2 [アオシマ]の『モーニングルーチン』、シーン10 [アオシマ]の『マインドマップ』や『特別な料理』。シーン6 [我那覇]での、作中作である『ファントム・オーダー』の扱い方。
この『ファントム・オーダー』が魅力的なのです。
登場人物を『ブレードランナー』のアンドロイドや『沈黙の春』の作者と絡める台詞廻し。SFが近未来ならば、『今』起こっていることはその近未来に影響を与えるのではないか、という『思想』が見え隠れします。
『ええ、僕は人間を信頼しています。真実を知れば、人間は変わります』と書かれていますから。
思想信条、背景の一部。どのように受け取るのか、読み飛ばすのかは読者に委ねられます。
作中の登場人物は絞りに絞られ、我那覇とアオシマを含め、主だった人物は片手で収まります。
その中でもシーン5 [アオシマ]に登場する編集長・金田の、逞しいというべきか図太いというべきか、こうでなくては務まらないのだろうなと思わせる人物像は秀逸です。
まさに『猛獣使い』。
そうそう。ここで私も告白しましょう。
私はこの『亡霊の注文』を読むのは三回目です。いえ、厳密には二桁に及びます。この掴みどころのない、のらりくらりとした『我那覇』。作者様があちこちに潜ませた仕掛け、魅力的なワードがこの作品の魅力でありながら、『解像度』を上げれば上げるほど作者様に踊らされる。
シーン2 [アオシマ]にて、我那覇はアオシマに『殴ったりしませんか?』と問い、アオシマは『しませんよ!』と答えます。
今、私がその場にいればこう言うでしょう。
『えぇい! アオシマ、殴ってしまえ!』と。
え? どちらの『我那覇』を、ですか?
ふふふ。それはもちろん――。
今回は文字数の都合もあり、第一部だけのご紹介となりますが、第二部はまた違う『危うさ』のあるストーリーとなっております。
10万文字少々の作品ですが、読み応えばっちりです。
お勧めです。
ぜひご一読ください。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係ありません。
「若手編集者のアオシマは、本の発売初日に作家本人から「この作品は盗作です」という告白を受ける。
どうしてこんなことをしたのか問うアオシマに、作家の我那覇キヨは動機を語る。」
このあらすじの通り、物語はアオシマの視点を中心に語られる。
劇中の『我那覇キヨ』が描いた物語は盗作だった。
物語は盗まれたモノだが、そのヒットと読者に与えた感動は本物。
では本当の作者はどこにいるのか? 我那覇はなぜ盗作をしたのか? アオシマは、出版社はこの事実にどう向き合うのか?
それぞれの思惑が絡み合い、二転三転しながら謎解きとサスペンスが進行していきます。
メタ的な構造を利用して『物語』を『物語』で語る構造が素晴らしいです。
物語の都合上多くは語れないのですが……この物語はフィクションです。
だから。安心して良いのです。
たぶん。おそらく。
本作について、何を書いてもヤボになりそうですが、とりあえず書かせていただきます。
ミステリー故に、やや抽象的になってしまうのはご了承ください(ちなみに、私は謎解きが大の苦手です……)。
尚、本作を「物語」というとややこしいので、「本作」と作中の「物語」は分けて言葉を扱うこととします。
では、本題へ。
盗作の功罪を認めつつも、『面白い作品があって続きを読みたい』という気持ちに従うが故に、罪を犯してまで盗作をした我那覇。
実際に作品を書いたY先生を探すために編集者・アオシマと盗作した作家・我那覇は行動する。
アオシマの葛藤。我那覇の真意。Y先生の行方と捜査。これらが序盤のピースです。
そのピースが「物語の創作」の話、あるいは「物語のような妄想」に飛躍していく辺り、編集者と作家という設定が際立ちます。
そして、中盤、本作は大きく動き出します。
物語の哲学とその限界。我那覇の恩師への疑惑。妄想であって欲しいという願い……。
それらが繋がって、第二部では思いがけない展開となりますが、ここでは口にチャックです。
どのように書いてもネタばれになってしまうので……。
それでも、一言で言うとタイトルにもある「亡霊」とは何を指していたのか? ということです。
後半の展開からすると、アレの比喩なのかな、と思うところはあります。
そうなると「注文」の意味も、アレとかコレとか、と読後も思考を巡らせる楽しさがあります。
第二部のピースは「物語」です。
「物語」が持つ影響力、功罪、発信力……、それを理解した上で扱いに注意を呼びかけています。
では、何故、そのような注意がされるのか。
これらの謎は、実際に呼んでみて体験してみてください。
あまりにリアルな作品展開に、度肝が抜かれるはずです!
盗作の告白から始まるミステリー📘
古き良きミステリーがはじまると思い読み進めましたが、良い意味で裏切りがあります。それが罪深く斬新。
作中のペンネームが作者と同じ。ここにセンスを感じました。
『物語』が与える影響。物を書きたいと願う者は身にしみていると思う。私も自分の思考は今まで読んだものによってつくられている。書きたいという衝動もしかり。
難しい題材を一つの物語としてまとめ上げている技量はさすがだと思います。後半の力強い語り口調にも引き込まれました。
最後に謎が解けたとき、最初から物語を思い起こして、遅れてくる納得感が最高です。
最後まで読んでペンネームがなぜ同じか捉えて完了と解釈しました✨
個人的には後半の登場人物がとても好きです✨ミステリーだから言えないのがもどかしい。
この方にはここでしか会えません。気になる人は読むしかないです。
まずは、よくこのテーマについて切り込んだなと、作者様の勇気、そしてそれを完結させた実力に賞賛をお送りしたいです。
様々な文献を丁寧にお調べになったのだとよく分かります。そして、得られた様々な情報を緻密に盛り込み構成された世界は、作品の中盤になってから私たち読者に牙を剥き始めます。
物語の在り方によって変わるふたつの世界。読み進めるごとに募る違和感。
そして、「私が読んでいるコレは、一体何なのだろう」そう認識した時、物語は物語を飛び出してリアルになる。
私を私たらしめているのは何か。
物語とは何か。
読書好きとして、また執筆者として深く考えさせられる作品でした。
純文学がお好きな方には特におすすめできます。ぜひ。
パワーがある。
キャッチコピーからして「え?」と引っ掛かり(褒めていますよ!)を感じ、読み進めていきます。
さまざまなひとの視点を挟みながら、
時には作中作の引用や難しい用語を挟みながら進んでいきます。
読んでる時はずっと《彼ら》の手のひらの上で踊らされている感覚です!個人的にめちゃくちゃ楽しい!
どいつもこいつも信頼できない語り手がすぎる……!
内容に関してはご一読ください。としか表現できませんが、読了後、目次のタイトルを眺めているだけでかなり楽しいです。
個人的に作り込みに惚れ惚れしていまいます。
「我那覇キヨ」という名前そのものも大変良い演出だなと噛み締めております。
素敵な物語をありがとうございました。