3日目 死後の世界

タソは時々、死んだ後の事を考えます。


誰も知らない、知り得ない事だからこそ、気になる。


色んな事考えてる人いるけど、タソはどこかに答えがあると思っています。


中には死後の世界を体験したなんて話もあるようですね。




【死後の世界その1】


何もない。虚無。


深い眠りに落ちた時と同じように、または全身麻酔で眠らされた時のように、何もかも無自覚となる。


それはまるで時間が止まったような、まさに永遠の眠りであり、きっと「死んだ」という認識も、「痛かった」「苦しかった」という事後の感情も何もないのでしょう。


「自我」という存在が消える。


何もかもなかったことに。


それが一つの答えである。




【死後の世界その2】


天国と地獄。


宗教の考え方として、天国に逝くとか、地獄に堕ちるとかいう残酷な答え。


そりゃ誰も地獄には行きたくないよね。


天国ってどんなところかなーとか、わくわくします。行けたらの話だけど。


キリスト教では、自殺未遂または既遂者は地獄行きだそうです。


つまりタソは地獄行きが確定しています。


某映画では、主人公が自己犠牲をすることで地獄行きの未来を変えていますが、タソにはそんなドラマチックな展開は訪れないでしょう。




【死後の世界その3】


輪廻転生。


これも宗教の教えのひとつ。


いつから人間に転生できると思い込んでいた?


微生物からやり直し。ミジンコや虫、カエルや鳥を経て、また人間に転生するまでに100万年掛かるかもよ?




【死後の世界その4】


ついに来た異世界転生。または転移。


夢の世界だね。望んでいる人も多いと見た。

タソは異世界行ってみたいなー。

チート能力がなくても、スローライフしてみたい。




【死後の世界その5】


実はもう死んでいる。


タソは2回目の自〇未遂の時、1時間ぐらいの記憶を失っています。


自宅のリビングが吹き抜けになってて、2階の一部屋に吹き抜けに面する内窓があるのです。

その内窓からロープを垂らしてやったのですが、折り畳み椅子に立って首にロープを掛けて、あとは一歩踏み出すだけでした。


でも、その一歩が怖くて、地獄に行くのが怖くて、凄く苦しむんじゃないかって。


そんな事を考えていたら、目は半開きで口からはヨダレを垂れ流していました。


いつの間にか暗くなっていて、奥さんが帰って来て悲鳴を上げたところで「あ、見つかっちゃった」ってなりました。


今でも思います。


本当はあの時成功してて、タソはもう死んでるんじゃないかって。


「死」に直面したことは何度もあります。


小学生の頃、お風呂が漏電していて、湯船が100ボルトなのに気づかず、足を突っ込みました。


腰のあたりまで電撃を感じて、慌てて足を引っ込めたのですが、あの時も本当は死んでたんじゃないかな。


遊具から落ちた時も、自転車で転んで車道に投げ出された時も、バイクで対向車線にはみ出した時も。


きっと今のタソは、「死を回避」し続ける「死なない世界線」のタソなんです。

そこには幾つもの並行世界があって、隣の世界線ではタソはもう死んでいるのです。


故に、この世界線のタソは、どうやっても死にません。


寿命すらも、何かしらの事象によって回避するのでしょう。




【死後の世界その6】


時間が逆再生する。


人は母から産まれて、やがて骨になる。

これが常識ですが、実は逆の世界があるのです。


何もかも逆。


親族や友人たちは泣きながら骨から肉や皮が再生し、心臓が動き出す故人の「誕生」を「悲しみ」、やがて小さくなって言葉を失い、母の体内へ入っていく「死亡」の様子を「希望」と「喜び」で祝うのです。


その後はまた正方向へ時間が流れ出し、今の世界と同じように「誕生」する。


実はこれの繰り返しであることを知るものは少ない。




以上がタソが考える死後の世界。


タソは死ぬ度に思うのです。


「ああ、なんだ。地球が地獄なんじゃないか」


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