4日目 黒猫の気持ち

ボクは黒猫のクロイノ。


毎日、ご飯を食べてはパトロールして、眠くなったらお気に入りの毛布で寝るんだ。


今日はニンゲン用トイレのパトロール。


ここはニンゲンが中に入る時しか開かないから、油断してると閉じ込められる危険な場所。


ボク知ってるんだ。


ジャーって水が流れると、ニンゲンは扉を開いて外に出ていく。

だから、その瞬間を逃さずに外に出るんだ。


時々、ジャーってする水で遊んでると、ニンゲンは困った顔で扉を開けたまま出て行く。


なんでだろ。


ボクのお気に入りのニンゲンは、なんか昔を思い出す優しさで、時々おいしいものをくれる。


昔は、暗くて、冷たくて、とても寒いところにいたんだ。

確か、その時は「お母さん」がいた気がするの。


お母さんは、時々いなくなると、しばらくして帰ってきて、ご飯をボクにくれた。


このニンゲンも、時々外に出て、しばらくすると帰ってくる。


帰ってくるのわかるから、出入り口で待ってるんだ。


「おい、ニンゲン。ご飯取ってきたか?」

「ちょ、お前、玄関から出るなよ? お外ネコになっちゃうぞ?」


相変わらずニンゲンの言ってる事は理解できない。

ボクの言葉も通じてないようだ。


でもね、なぜかこのニンゲンは帰ってくると、ボクを毛布でくるむんだ。


あったかくて、ふわふわで、ニンゲンの匂いがして。


ボクはいつの間にか毛布を両手でもにもにして、おっぱいを探してチュッチュしてしまうんだ。


ニンゲンがその様子をニヤニヤしながら見てるのも知ってるよ。


でもやめられないんだ。


もにもに。チュッチュ。


「おいニンゲン。次はお魚の肉をよこせ。あの味が忘れられないぞ」

「なんだよニャーニャー言って。お喋り猫かっ」


このニンゲンは時々「おべんとう」を食べていて、ピンク色のお魚の肉をくれる。


あれ美味しいんだあ。


一回だけ白いお魚もくれたけど、あれも美味しかったなあ。


このニンゲンは、夜になると元気がなくて、よくボクを抱っこして撫で撫でしてくる。


仕方ないから夜は側にいてあげるんだ。


でも昨日の夜は怒ったね。


もう猫パンチお見舞いしてやったね。


だって、お気に入りの毛布で寝てるところに、大きな顔をボクのお腹にグリグリしてスンスンしてくるんだよ?


ボクは臭くないっつーの。


もう怒ったボクは「ヴー」と唸りを上げて、それでもやめないから猫パンチ炸裂さ。


奴は鼻の頭に引っ掻き傷を作って痛そうな顔をしてたよ。


でも、なんか楽しそうだった。


ボクも、なんか楽しかった。


今日もニンゲンは元気がないみたい。


仕方ない、お腹に乗ってやるか。


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