第8話 日が昇る
お題 ①車 ②茸 ③鳥
車の運転は得意。でも、親の車を運転するのは苦手だ。親の車なんて滅多に運転する機会がない上に、ハンドルの重さも車の大きさも、俺の車とは全然違うからだ。
この日、俺と父さんは深夜に高速道路を走っていた。遠方に住んでいるばあちゃんの家に行くためだ。
「ヨウ、次のサービスエリアで1回休むか」と父さんが言った。
「おう」
父さんと交代で運転しているとはいえ、ばあちゃんの家まで片道6時間、7時間かかる。でも1時間くらい運転しただけで、首も方も痛い。やっぱり他人の車って、疲れるんだよなあ。
サービスエリアに入り、駐車する。
「お疲れさん。もう3時かあ」
父さんが、サービスエリアの建物を指差した。
「父さん、ちょっと蕎麦でも食べたい。どうする?」
「うん。食う」
俺も、運転に集中してエネルギーを使っているからか、蕎麦という単語を出されただけでお腹が空いてきた。
店に入って券売機で食券を買う。父さんが、山菜の温かい蕎麦のボタンを押した。
「ヨウは何が良い?」
「うーん。じゃあ……俺も山菜にしようかな。茸と山菜の方」
「うん」と、父さんが茸と山菜の温かい蕎麦のボタンを押した。
食券を厨房の人に渡す。俺たちは手近な席に座った。
「ヨウ、疲れたか?」
「うん……背中痛い」
俺が肩を回していると「頑張ったもんな」と父さんが笑った。
「山菜蕎麦と、茸と山菜の蕎麦の方」
厨房から声がした。
「美味しかったな」
「うん。茸の方も美味しかったよ。深夜に食べるから余計だね」
俺たちが店を出る頃には、空が少し明るくなってきていた。
建物の横は、森らしかった。少し階段があって、その先は展望台になっているようだ。俺が展望台の方を見ていると、父さんが「展望台、行ってみるか?」と言ってくれた。丁度良い。ずっと座りっぱなしだったから、少し動かないとな。
階段を4段くらい上ると、小道になっていた。ほんの数メートル歩くと、視界が開け、とても綺麗な景色が広がっていた。
「おお! 綺麗!」
思わず2人で携帯を出し、写真を撮る。
下には大きな川が流れていて、周りは山。日が昇ってきたから、早朝の爽やかな空気も相まって、すごく気持ちが良い。
チチチと小さな鳥が飛んでいった。日がどんどん昇ってくる。清々しい気分。
「あと、もうちょっと運転頑張ろ」
それから、ばあちゃんにこの景色の写真見せてあげよう。
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