第9話 親友

お題 ①カラオケ ②テスト ③帰りたい


「盛り上がってんなあ……」

俺は呟く。でも、その呟きはクラスメイトで親友のタカとリョウの歌声に掻き消された。今、俺たちはカラオケに来ている。長く感じたテスト週間も終わり、リフレッシュしようということになったからだ。

さっきから、タカとリョウが、ずっと流行りのアニソンを何曲も熱唱している。

……俺の番は?

陰キャの俺は置いてけぼりにされても、そんなことも言えず、ただ聞く担当になっていた。幸いなことに、二人は軽音部で歌が、まあまあ上手いから助かった。これで、もし音痴だったら逃げ出してるぞ?

「おい。シンも歌えよ」と歌い終わったリョウに言われた。

「お、おう」

俺は、何となくマイクを受け取る。さっきまで「俺の番は?」とか思ってたのに、いざ歌えと言われると困った。とりあえず、3年前くらいに流行ったJポップを入れた。

曲が流れて歌い出すと、結構楽しい。2番目の歌詞に入るころには、結構ノリノリになって楽しく歌えていた。

歌が終わる。リョウにマイクを返そうとしたら、タカとリョウがにやにやとしている。

少しの沈黙。

「古っ!」と二人の声が重なった。爆笑される。

……うるせえ。流行りとか分かんないんだよ。余計なお世話だ。さっきから二人で勝手に盛り上がって、俺のことなんて、ほったらかしじゃねえか。あー、帰りたいわー。ったく、冷たい奴ら。

と、思った時。

「じゃあ、次は3人で歌えるやつにしようぜ!」とタカが言った。

「良いね!」とリョウも両手の親指を立てて、グッドサインを出してくれた。

「お、お前ら……」

良い奴らじゃねえか。やっぱり、親友たちよ! 最高だ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る