第6話 駄菓子

お題 ①犬 ②お菓子 ③肉球


「おいでー」と手を叩くと、真っ白いふわふわが突進してくる。飼い犬のラコだ。ラコはマルチーズ。人懐こくて、呼べばすぐ飛んでくるような子。去年、家にお迎えした。

「ラコちゃん可愛いねえ」と抱き上げて頬擦りする。大人しくて良い子だ。ラコの前に飼っていたおじいちゃん犬のクーは本当に大変だった。クー先輩、すぐ噛む子だったからなあ。

ラコを抱っこしたまま、前足を軽く握る。

……肉球。最高。

前足を軽く握ったまま、ラコの後頭部に顔をうずめる。猫吸いならぬ『犬吸い』ってやつ。ああ、最高。可愛い! ついでに肉球、もう1回にぎにぎしちゃおう。

「ラコ、あんた本当に大人しいねえ」


ちょっと涼しくなった夕方。ラコの散歩に行くことにした。赤い首輪とリードを付けて出発。商店街の辺りを、ぐるっと1周する。

商店街には小学生のころ通った、小さな駄菓子屋さんがある。当時は、おばあちゃんが1人でやっていたけれど、いつからか息子さんが、その後は若い女の子が店に立っていた。

丁度、駄菓子屋の前を通りかかる。店の出入口であるガラスの引き戸に、1枚の紙が貼られていた。

『動物好きのあなた! かわいい肉球グミはいかが?』という文字が、太いマジックペンの線で書かれていた。その下には商品らしき写真と、犬や猫の写真が貼ってある。

「へえ……今、こんな可愛いお菓子あるんだ。可愛くてたべちゃいたい! ってやつが叶うわけだ。うんうん」

私が頷いていると、ラコが前足で私の脚を引っ掻いた。

「明日、仕事お休みだし買いに来ようかな。ね、ラコ!」

ラコに笑いかける。9年ぶりの駄菓子屋。ちょっと、いや、かなり楽しみだ。

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