10話

 10−10


 ぺペンギンは目覚まし時計型シェルターの中でシングルモルトを一人で飲んでいる。

食事は済ませた。

万年講師も単なる馬鹿ではない。

ペンギンと言えば生魚であろうと、それなりの大きさの生魚をスーパーで買って帰る。

自分用の晩御飯となる弁当と一緒に。

仲間と共同著書の話をする時などは、居酒屋などで食事を済ませて帰って来る。

そんな時は、ぺペンギンの餌のことなどすっかり忘れている。

今夜は、そんな夜である。


 ぺペンギンは、ふと気になってシェルター内の冷凍庫を開けて中を再確認する。

まだ当分は保存食で生きていけそうである。


 万年講師は、自分が家で食べるときだけ、自分の食事分とぺペンギンの魚を買って帰って来るだけで、外で食事をする時などは買って来ない。

なんとかするであろう、とでも思っているのであろうか?

ペット以下の扱いである。


「独りよがりか、かなり我儘に育てられてきたんやろな」


 ぺペンギンは、シングルモルトを飲みながら呟く。

そして、


「手強い相手や」


 と呟き、またシングルモルトに嘴をつける。


「殺してくれ、ってか? あの性格では本気で願いかねんな」


 とまた呟き、ため息を吐く。


「頼まれて殺す相手のことなんか、全然考えてへん。もし、それ言うたったら、そんなことはありません。頼む時には、ちゃんと相手のことを考えて、その上でないと頼んだりしません、とか言うねんやろな。いっぱい理由つけてな。ほんまもんの殺し屋でも雇うんやろね。それやったら星に願いなんか掛けんかったらええのに。ワイらの星も舐められたもんやな」

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