第2話

 10−2


 万年講師と呼ばれている男が家に帰って来る。


 扉を開けると、


「うん? 煙草の匂いがする?」


 彼も煙草を吸う方なので、嫌では無いが気になる。


「はて、私は煙草を消して出勤した筈なのだが?」


 書斎へ向かう短い廊下で、さらに煙草の匂いが強くなる。


「消し忘れたにしては、こんなにも長い間、匂いが籠るのもおかしいが?」


 書斎の扉を開けると、微かに煙が漂っている。


「うーん、やはり、煙まで残っているとは、どう考えてもおかしい」


「いや、考えなくてもおかしいが?」


 取り敢えずは窓を開け放とうと、窓の方を見るが、


「なんと!」


「なんと?」


「なんと?」


「なんと!」


「なんと?」


「あのー、なんと、の言い合いやめへん?」


「なんと、ペンギンが、煙草を」


「あかんの?」


「ぺ、ペンギン? なんと、日本語まで」


「せやし、あかんの?」


「いえ、結構ですが、日本に、ぺ、ペンギン・・・?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る