第5話

 10−5


 ペンギンが目覚まし型シェルターから大きな箱を引き摺るようにして出て来る。

万講は2本目の煙草を咥え、火をつけようとしている。

ペンギンは箱の蓋を開けると、鉄の塊を取り出す。


「ほう、モデルガン? それともエアーガン、ですか?」


「うん、こんなもんでお前が驚くとは思てへんかったし、予想通りの反応やな」


「勿論です。で?」


「うん、これ、ガバメント言うねん」


「そうですか」


「うん、正式名は、コルトM1911、言うねんけどな」


 などと言いながら、ペンギンはエアーガンの先に細長いパイプを装着している。


「ほう、サイレンサーを付けているという事は、エアーガンとは言え、よほどの威力があるようですね」


 それでも万講は、あのペンギンの小さな図体では撃つどころか、拳銃を持ち上げることさえもできないであろうと思っている。


「ワイの好きな拳銃でな、なんでこいつが好きか? 言うたらな、破壊力とかそんなんやのうてな、こいつがサイレンサー付けたらな、一番爆発音がサプレスされるんよ」


 万講は、既に興味を無くし、窓の外に向けて煙草の煙を吐いている。


 その時、


 パン!


 という音と共に、万講の咥えていた煙草が木っ端微塵に吹っ飛び、その後の窓ガラスが見事に砕け散る。


「あかん、的、外してもうた」


「ま、ま、ま、まさか?」


「うん、本物」


「ど、ど、ど、どう」


「どうやって手に入れたかってか? そないなこと、死に行くお前にはどうでもええことやないんちゃうの?」


「そ、そ、そ、それ」


「はぁ? それにしても拳銃を持ってるっておかしいやろ? って言いたいん? ほな、教えたろか、それはな、それはワイが、ペンギンやのうて、ぺペンギン、やからや。ほな、じっとしといてや、二発目、行くで」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る