概要
家出少女の美春は友人宅を転々と渡り歩いていた。ある日、自宅に帰宅した美春は母親が寝室で毒の男と逢瀬を繰り返しているのを目撃してしまう。
毒におかされている母親。
男に捕まり、闇に引き摺り込まれる美春。
人生に絶望して家を飛び出した美春が向かった先で待ち受ける永遠の喪失とは。
今日も誰かの腕の中。
埋められない心の穴を慰めるように、染め上げる春が狂い咲く。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!地獄。その名は春
春をテーマにして書かれた作品です。
しかし地獄絵図です。季節的な春ではなく、身を売って命を繋ぐしかない、生き様としての春だから。梅も桃も登場しますが、何一つ幸せにしてくれない、目を背けたいものばかり。
美春と名付けられ、あたたかく育つことを願われながらも、現在の自分がそのようになっていない。朝、目を覚ますたび、そういう人生が続く悪夢。ならば春という名前は呪いの刻印でしかない。
死でしか終わらせることができない春。
誰かがうららかな春を楽しんでいる時、苦悩で楽しめない人がいる。
誰もが目を背けている春の影を、まるで呪うように全力で書いています。
願わくば美春の未来に、あたたかな春がやっ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!衝撃的な出来事を通して、あなたが見るものは?
約4000字、全5話。
この限られた字数の中で、主人公の物語の全てが描かれているわけではありません。
一見、母と同じような道を選んだように見える、主人公。
それでも生きることには、どんな意味があるのか?
自分の良識の限界が見えてくる。
常識、と思っていることの危うさを改めて突きつけられる。
ハルは生きる。
ハルの人生は、ハルのもの。
彼女の生きる力を信じたい、と思う。
そんな自分に私は出会いました。
これが"春"ならば、季節は続きます。
季節は止まることがないのだから。
あなたは、どう感じますか?
短編小説を読む醍醐味を味わわせてくれる作品です。 - ★★★ Excellent!!!一人ひとりに春のうつくしい花が咲きますように。
どうしようもならないほどの孤独感と春の関係性が切なく胸を揺さぶりました。読者に与えられる余白からは、主人公美春だけでなく、お母さまや他の登場人物の過去を連想してしまいます。一人ひとりがやるせない、鬱々としたものを抱えながら日々を過ごしています。
母親が残した言葉と行動は、美春の今後の生き方にも大きな影響を及ぼしており、辛く困難な現実をそれでも必死に生きようとしている、微かな希望の春を求めているようにも感じられました。美春の中で絶えないショックと望みが交互に連鎖し、絡み合う隙間でもがいているような印象を抱きます。背負っているものはとても辛いですが、美春がいつの日か、名前のように美しい春を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生きてさえいれば、きっと……春がくる。だから、諦めないで……。
この小説は、母と娘の関係性と彼女の人生観が描かれており、深い感情と葛藤が鮮明に描かれています。
物語は心理的な側面に焦点を当てながらも、愛情や人間関係の複雑さについて深く考えさせられる内容です。
特に母親との関係性を中心に描かれたストーリーは心温まるものでありながら、その後の展開で生じる予期せぬ展開も読み手に強い印象を残します。
よって、主人公の内面の葛藤や人生の岐路に立つ姿に共感しながら読み進められる作品だと感じました。
また、登場人物たちの繊細な心情描写が非常に上手く行われており、物語全体を通じて切なさや希望が入り混じった深みのある世界観を構築しています。
印象的だったのは、母親が…続きを読む