Scene 3

 砲撃と銃撃の狭間を潜り抜け――。


「はぁ、はぁ……!」

 立ち込める黒煙の中。

 中央塔へと辿り着いたパメラは、生き残ったエレベーターを見つけ、

「東京ジオフロントが……燃えている……」

 上昇する昇降機の窓から見える、眼下の惨状に息を呑む。


 そして塔の中層へと差し掛かった直後、


「――ッ!?」

 激震と共にエレベーターは停止し。

 外部から差し込まれた触手によって、昇降機の扉は壁面越しに引きちぎられ、

「あ、あぁ……」

 粉塵の中、明滅する照明灯が浮かび上がらせたのは……。

 大広間にある心柱に取り付いていた、機人・三型レベル3の姿。

「ギ……ギギ……」

 数多の死骸を元に肉体を構築し、新たな機人たちを量産し続け……やがては“準悪魔の鎧”とも呼ばれるレギオン級へと進化する怪物の幼体。

「そんな……」

 醜悪な怪物に取り込まれた犠牲者たちの視線が、残虐な笑みと共に一点に集まり。

 パメラはその場に膝を付き、彼女を捕食しようと三型は再び触手を飛ばす。


 なれど、


「ガ、アアアアーーーーッ!?」

 伸ばされた二本の触手は、パメラに触れる前に灰塵と化し――。

 対象を獲物ではなく“脅威”であると悟った三型は、触腕の先端に雷光を集わせ、

「これは、どういうこと……?」

 放たれし熱線は、パメラの周囲に存在する見えない障壁によって弾かれ。

「どうしてわたしに……こんな力が……」

 飛散した粒子が階層内を照らし、床壁を融解させるさなか、

「勇気を出して、パメラ……」

 パメラは疑問を振り払い、再び立ち上がり、

「わたしは、まだ死ねない……アイと再び出会うまで生き残るんだッ!」

 決死の覚悟で通路を駆け中央エレベーターへと滑り込み、最上階へのボタンを押す。


 そして昇降機に乗り込んだ彼女を追い――。


「キィエアアアアァァァーーーーッ!」

 おぞましい奇声を上げた巨大な怪物は、タワー中心部にある心柱を這い登り、無数の鉄筋を破壊しながら猛追撃し、

「桟橋が……」

 パメラが辿り着いた屋上の外縁部。

 塔と地上を繋ぐ最後の桟橋は、その中央部から崩落しており、

「ロオアアアアァァァーーーーッ!」

 組み込まれた殺人プログラムに従い、得体の知れぬ対象を自爆攻撃で排除することを選択した三型は、その触腕を一斉に拡げ突進。

「アイ……!」

 迫り来る絶体絶命の危機の中。

 突如、三型は空から降ってきた人影に粉砕され、

「あ、ぁ……」

「パメラ……」

 傷だらけの竜の姿に。

「う、あぁぁぁぁーーーーッ!」

 目の前に現れた最愛の竜の姿に、パメラは号泣しAIを抱きしめた。

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