Scene 3
東京ジオフロント――。
十五年前、七の魔皇が一領、“暴食のベルゼブブ”が世界に出現した際、光の柱と共に壊滅した東京の爆心地跡に建造された巨大地下要塞都市。
遥か千メートル上空にある地表へとそびえ立つ“
荒廃した地上を含める半径十キロ圏内を絶対防衛圏とし、都市機能を維持するための居住区域、工業地域、交通網、給排水システム、食物製造工場、水耕農場、地熱発電所などが配置されており――。
日本政府が消滅して以来、この地下都市は“人類連合軍”の管理下に置かれ、各国の難民の受け入れを行いつつ半ば軍事拠点と化している。
その都市の一角にある軍の作戦本部にて、
「
黒い長髪を一つに束ねた齢十七の月夜は、上官に対し敬礼を行い、
「よく来てくれた中尉。まずは椅子にかけたまえ」
元自衛官・統合幕僚長だった壮年の司令官は話を進める。
「貴官も知ってのとおり、我が日本は横浜のリヴァイアサン、そして西の“
「はい」
「現状、日本で都市機能を保っているのは、この東京と大阪ジオフロントだけだ。そして地上を徘徊する“
過酷なる現状を知る月夜は沈黙し、
「だが……一筋の光明が、この地下世界に差し込んできた」
落とされた照明の中、正面スクリーンに映し出された映像に、
「これは……」
「
尋常ならざる速度で炎のアスファルトを駆ける、紅のコートをまとった少女。
「ドラゴン? ……あの究極の生体兵器と呼ばれていた?」
対悪魔用決戦兵器として、人類が総力をあげ開発した
その戦闘力と戦果は凄まじく……。
悪魔たちに対する反攻の基軸、各戦線の火消し役として、壊滅状態にあった各国の抵抗を長らく支え続けてきた存在。
「しかしドラゴン・シリーズは、数年前の戦いですべて破壊されたはずです」
「だが、最後の一頭が生き延びていた。しかもこの竜はオリジン――“始祖の竜”のすべてを引き継いだ特別な存在」
月夜の疑問に司令官は即答し、
「君のチームに与えられる任務は、東京ジオフロントに侵入した竜を撃破し、その遺体とコアを回収することだ」
「共闘交渉を行うのではなく、撃破……でありますか?」
「そうだ。この竜の精神は“怠惰の魔皇”によって乗っ取られており、非常に危険な存在となっている。君らでなければ――竜と同じく、肉体を対悪魔用に強化された“
「……」
夜叉という名称に、月夜は微かに表情をかげらせ、
「必要なのは制御不能となった竜ではなく、オリジンの心臓。――これさえ回収すれば新たな戦力を、そしてあの機体を動かすことができる」
「あの機体?」
うっかりと口を滑らせた司令官は咳払いし、
「とにかくだ。貴官の双肩に東京ジオフロントの運命はかかっている。なんとしてもミッションを成功させてくれ」
「はっ! 必ずやご期待に応えてみせます!」
立ち上がり敬礼を行った月夜の運命は、大きく変わろうとしていた。
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