Scene 4

 降り積もる雪の中……。


「マスター……」

 大破炎上するリヴァイアサンの操縦室にて。

「どうやら私は……ここまでのようです……」

 人型となったインヴィディアは、パメラとの別れを告げ、

「さようならインヴィディア……ありがとう……」

 自らを抱きしめてくれた主に微笑み、永遠とわの眠りへとつく。


 そしてコックピットハッチを開いたパメラは、異形の大鎌を右手に召喚し、


「アイ……」

 白雪に罪の足跡を残しながら。

 動かぬ骸となったAIの姿を遠目に見つけ、

「……それがあなたの本当の姿ですか? アケディアさん」

 天地を分かつ斬撃音が消えゆく中……。

 大鎌を一閃した先に浮かんだ、褐色の肌の、小さな妖精。

「これはAIが最後に構築してくれた器。……この子の想像では、私はこんな姿だったのね」

 肉の体を得たアケディアは振り向くことなく。

「この子が、どんな想いを最後に発したか覚えている?」

「……」

「私も愛している、と唇だけを動かしたこと、ちゃんと信号こえとして伝わった?」

 淡々と。熱の伴わぬ声でアケディアは問い、

「あなたを、殺します」

「そう……。奇遇ね。私もAIの命を奪った貴女を殺すつもり。この子にそんな最期の言葉を言わせた貴女を許せない。たとえ敵わなくてもね」


 ――だけどそれは、今ではない……。


「私は今、貴女に殺されるわけにはいかない。どんなに無様でも、どんなに傷つけられようと、必死でこの場から逃げ延びてみせる」

「……」

「私は、AIに託されてしまったのだから……」

 無言で大鎌を振り上げたパメラは、アケディアが泣いていることに気付き、

「私が死ねば……貴女とAIの想いを、守る者がいなくなってしまうのだから!」

「あ、あああああ……ッ!」

 怠惰の魔皇が命懸けで抱いていた、黄金こがね色の光に包まれし胞衣えなに。

「アイ……!」

 その胞衣に宿っている小さな命の存在に、パメラは泣き崩れた。

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