第8話 マリア ①
初めて自分の能力を自覚したのは、物心ついた3歳の頃だった。
明らかに兄姉達と違う容姿と、身体の中から湧き上がってくるよくわからない力のようなもの。
立ち上がったり走ったりする時にこのまま空まで飛べそうな感覚と、視覚の範囲のみならず遥か彼方まで見えそうな感覚。
皆が気にもしない人々の会話や物音が遙か遠くまで感じられた。そう、見えたのではなく聞こえたのではなく、感じられたのだ。
小国の第七王女として生を受けた私。
正妻の子とはいえ継承権は低く、政治の道具として何処かへ嫁ぐのだとわかり始めたのは成人の儀を受ける少し前の事だった。
この国では、十二歳で成人の儀を受ける。
近隣の他国では、成人となる十五歳から。
十五歳からなのは、それより前だと弊害が大きすぎるからだった。
弱小国家である我が国では、子供達の成人までスキル獲得を待てなかった。
戦乱や魔物達との戦いに必要な戦力として、幼い子達を当てにしなければならない程に国力が弱かったのだ。
その代償として、多くの子達の命が失われるとしてもだ。
十五歳まで待って儀式を行えば、命が失われたり障害が残るのは万分の一の確率まで下がるのにも関わらずだ。
王族だとしても例外なく行われる、幼年時のスキル獲得の為の過酷な儀式。
過去多くの失われた命達。
王族や貴族だとしても例外なく。
それでも、国家存続の為との大義名分の元、今年も私を含めて多くの子供達が教会へと集められていた。
下位貴族から始まった儀式。
平民は地元の教会で儀式が行われるので、対象となる子供達の人数としてはそれ程多いわけではない。
一人づつ呼ばれて扉の向こうへと消えていく顔見知りの貴族子女。
長くても5分ほどで戻ってきて、次のスキル獲得後の儀式へ隣の扉へと流れるように文字通り消えていく。
無事終えた喜びなどは微塵も感じられない。
帰って来ずに次の名前を呼ばれるのは、その帰ってこなかった子が儀式に耐えられなかった証。
十数人に一人の割合で、帰ってこない、過酷な儀式。
これでも、今年は少ない方だろう。
過去には半数が帰ってこなかった年もあったほどだから。
私の二人前に扉の中に消えていった幼馴染な公爵令嬢は、帰って来ずに次の順番である私の腹違いの弟が名を呼ばれた。
帰ってこないからと言って悲しむことも、無事に帰ってきたからと喜ぶことも許されない。
付き添いの親なども許されない。
不安そうな顔をする事も、許されず。
淡々と進む、儀式。
私の弟が帰ってきて、次は私の番だ。
どんな儀式なのかは知らされていない。
儀式後に内容を誰かに話すことも許されない。
噂によると、一人づつ儀式内容が違うという話すら有った。
名前を呼ばれ、儀式の誓いを済ませ、扉をくぐり抜け一人で階段を降りる。
降りきった所で扉を開き、白衣の神官に身分と名前を確認され答え、もう一度儀式の誓いを唱えると、用意された白衣に着替えさせられて傍らの寝台に横たわるように促された。
作者より
年度末の修羅場の時期がやってきました。
次回更新は来月になると思います。
次回はグロいお話になる予定です。
苦手な方は、スルーして下さい。
お願いします。
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