第3話 当主になれる条件
執務室のドアをノックして、返事を待って入ると、
「来たか、座りなさい。」
執務机の前のソファーを指されて促された僕は、遠慮がちに腰掛けた。
お祖父様付きのメイドがお茶を入れてくれた所で、人払いをされて二人きりで対面する。
「早速だが、シンは当主になれる条件をどれだけ知っているか?」
「はい、当主直系である事、貴族学校を卒業している事、成人の儀でスキルを授かる事が基本です。どれか欠ける場合には、貴族学校で優秀な成績を納める事か王家の指名のどちらかが必要です。」
「その通りだ。お前は既に必須条件の内二つは満たしている。」
「まだ卒業しておりませんが?」
「単位は全て修得済みで、『実技』が残っているだけだろう?しかも、優秀な成績だと聞き及んでおるぞ。実技も負け知らずだと。」
「いえ、いつも第三王女様にコテンパンにやられて負け続けています。」
同級で第三王女のエリー様には勝ったことが無いんだよな。情けないことに。
まさか王女様を傷付ける訳にはいかないしね。手加減はしてないけど、決め手に欠けてるうちにボロクソに負けてしまうんだよね。
「まあ、心配はしていないが何が起こるかわからんからな。用心するに越したことはないだろう。来月の成人の儀までは自重するように。」
何を自重?と聞こうと思ったけど、やめておいた。後でマリーに聞けばいいや。
マリーなら何でも知っていて教えてくれるしね。
「ところで、お前はマリーとその第三王女様と、公爵家長子のスズ様ををどう思うかの?」
スズ様も同級のお嬢様で、僕のような末端貴族の嫡男とも親しくさせていただいてたりする。
「………………………………どう、とは?」
「あ〜、好き嫌いの類でどう思うかの?」
「三人とも大好きですよ。さっきもマリーに大好きと伝えましたし。第三王女様にもスズ様にも毎日好きですと言ってますし。」
「………………………………その、好きと言うのは男女の仲としてかの?」
「いえ、三人とも私とは身分が違いすぎますので、そんな恐ろしいことは考えもしませんし思いもしませんよ。何故そのようなお話を?」
「お前はまだ婚約者が決まってないからの。」
「エリー様とスズ様には、冗談で婚約をすっ飛ばして求婚されましたけどね。」
「(無自覚というのは、恐ろしいのう。おや?マリーも含めて三人とも身分違い……予定通り始めるかの)そうか、ではこの後、午後からマリーを連れて領内の視察を頼む。」
「承知しました。所で何を見てくれば宜しいのでしょうか?」
「マリーに任せてある。明日の昼までには戻るように。」
あ〜、実質お泊まりか〜。また、怖い視察になりそうだな。
今回はキチンと寝られるのかしら。
まあ、なるようになるか。
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