第4話 本当の姿 ①

「「「「お姉様行っちゃうの?」」」」


悲しそうに尋ねる、妹弟達。


「領内の視察ですからね〜、お仕事ですからね〜、明日のお昼過ぎには帰りますよ〜。」


言い聞かせるように優しく話し掛けるマリー。

まるで僕が悪者になったみたいだし。


「視察、中止するか?」


「そうはいきません。今回は重要な視察ですからね。当主代行様からの直々のご指示ですから。」


………………………………………重要?直々?僕には知らされてないんですけど。

まあ、僕に知らされないのは今までもそうだったから、大して影響は無いんだけど。


「「「「いってらっしゃ〜い!」」」」


「はい、行ってきますね〜。」


用意された二人乗りの馬車に乗り込み、見送りの妹弟が見えなくなるまで手を振り続けるマリー。


今日の御者は、ハルさんか。

僕と年は変わらないのに、護衛も務まる強者の美少女だし。

強いだけでは無く口が固いのも信頼できるんだよね。僕の周りでは気を許せる数少ない人材だし。


「………………………………………もしかして、シン様、拗ねてらっしゃいますか?」


「………………………………………そんな、事は、無いぞ。」


「………………………………………まあ、そういう事に、しておきましょうか。」


「勝手にしろ。」


「双子ちゃんも、弟さん達も、可愛いですよね。」


「ああ、そうだな。んで、何が言いたい?」


「いえ、私もあんな可愛い妹弟か娘息子が欲しいな〜と?」


「あ〜、マリーは、意味がわかって言ってるのか?貴族家嫡男専属メイドの意味を。」


「ええ、良くわかっていてお勤めさせて頂いおりますよ。だからこそ、毎月毎月、悲しゅうございます。せっかく毎月アノ日に避妊魔法を掛けていただいているのに全て無駄になって、早くも一年近くの月日が過ぎようとしてますからね。公式に房事が解禁されるシン様の十四才の誕生日からこちら、心待ちにしておりましたから。」


「………………………………………僕がマリーをお手付きにしない理由が有るんだが、聞きたいか?」


「はい、是非に。」


食いつくように返事をしてきたマリー。

そんなに待ってたのか。

成人までお手付きにしない貴族も多いと聞くんだけどな。


「マリーの『本当の姿』が知りたい。偽って僕に仕えている理由も知りたい。教えてもらわなければ、お手付きには出来ない。」


「………………………………………シン様は、女の人に興味が無いのかと思っておりました。いつから、気がついていたのですか?」


マリーが動揺する姿は初めて見たな。


「そんな事は無い。興味津々だぞ。毎晩我慢するのも辛いんだからな。あ〜、気が付いたのは初めて会った時からだな。」


「………………………………………マヂですか〜?」


こんな砕けた口調も、初めてだな。


「………………………………………わかりました。今晩の宿でお教えしましょう。話せば長くなりますからね。では、『本当の姿』をお見せすれば、偽って仕えている理由をお教えすれば、シン様に抱いていただけるのですね。」


「ああ、いいだろう、よろしく頼むよ。あと、二人だけの時には『シン様』はやめようか。以前のように呼び捨てにしてくれ。」


「………………………………………はい、シン、期待してますからね。では、着いたようですので予定通りに視察を始めましょうか。」


マリーがこんなに嬉しそうに、感情豊かに話すのも初めて聞いたぞ。

今夜はどんな話が飛び出してくるのだろうか。

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