第2話 当主になんて、なりたくないし
「来たか。始めるぞ。」
僕の顔を見るなり、挨拶も抜きで食事の合図をする『お祖父様』。
本来なら僕が当主代行なんだけど、成人前で学園の寮に入っているので卒業までは代行と僕達兄弟姉妹の親代わりで後見をお願いしている。
男爵家程度なら未成年でも当主就任を王家から許可されるのだけど、無駄に広い領地と隣国に接する位置関係の重要さから遠縁の『お祖父様』が代行に王家から直々に指名されていた。
なんでもこの『お祖父様』、王位継承権を持っているとかいないとか。
更に言えば、この『お祖父様』と血縁関係にある僕も本来ならば3桁上位順位の継承権が有ったらしい。
なにそれ怖い!
初めて聞いた時は、本気でそう思ったし。
少し前に継承権順位が二桁から外れると自動的に継承権が無くなるように関係法規が改正されたらしく、僕は知らない間に継承権が生まれて失うという良く解らない状態だったらしいし。
「「お兄様、今回の休暇はいつまで滞在出来るのですか?」」
「ん〜、あと3日くらいかな?」
食後のお茶が配られたタイミングで、双子の妹達から尋ねられた。
一緒になって幼い弟二人も、目をキラキラさせて僕の返事に聞き入っていた。
お祖父様が来てから食事中はお話厳禁で、お茶が配られるまではお祖父様の許可無く話せず物音一つ立てられない緊張感のある食事風景になっていて幼い妹弟達には辛いだろうに明るい彼女達には癒やされる。
「では、マリーお姉様もそれまではいらっしゃるのですね!」
………………………………………おいっ、僕じゃなくて、マリーかよ!
ウンウンと頷く妹達弟達。
滅多に笑わないお祖父様まで吹き出しそうになるのを堪えてるじゃないかよ。
「ではシンよ、この後執務室に来なさい。」
「………………………………………はい。」
あ〜、今日は妹弟達と過ごせると思ったら、お祖父様とか〜。
当主になるには必要な事とはいえ、せっかくの休暇なのにな。
「成人の儀について話がある。」
そうなんだよね。今回の帰省は、この夏の成人の儀が絡んでるんだよな。
成人の儀を無事に終えて、何らかのスキルを授かるのが当主就任の最低条件なんだよな。
当主にならなくて済むように逃げ回ってきたけど、そろそろ諦めなくてはならないようだ。
父母が健在だったら優秀な弟どちらかに譲れたんだけどな。
あ〜、憂鬱だし。
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