第10話 マリア ③

「今回も上手くいった様だな?」


「はい、侯爵様。」


今年の成人の儀での貴族階級の上級スキル獲得者は二桁に上った。

儀式に乗じて始末した三人の令嬢が発現したであろうスキルは惜しかったが、我が身可愛さで仕方なかった。


「それで、ハルナ嬢は何処に?」


侯爵令息なホルン様が横暴に言い放つ。


「ご指示の通りに、隣の部屋に運んであります。」


「案内せよ。」


傲慢な態度を隠そうともせず、立ち上がって部屋を出ていこうとするのを押し留める。


「おっ、お待ち下さい!まだ後始末をしておりませぬ。」


「後始末とは?」


「この様な指示があるとは思わず、三人とも慰み物にしてしまいまして。」


ホルン様は子爵令嬢なハルナ嬢に妾になれと申し入れて拒絶され、逆恨みで始末を依頼してきた。

それ以上の依頼だとは思わずに、いつも通りに慰み物にしてから処理してしまうつもりで私達三人で死姦してしまっていた。


「………………………………………仕方ない、清浄を掛けてからにする。終わったら呼ぶように。」


傲慢に言い放って、振り返ってソファーに掛ける。

私達も人の事は言えないが、暗殺した僅か十二歳の令嬢を死姦するご趣味が有るとは。


「他の二人はどう始末した?」


侯爵様が思い出したようにお聞きになる。

二人は敵対する一族の勢力を弱める目的で始末を依頼された令嬢だった。


「マリア様とアキツ様でしたら、同じ様に慰み物にしてから暗室に入れてあります。」


「死体に様付けは要らんだろう。どれ、儂も『味見』をするから暗室まで案内せよ。」


「………………………………………暫しお待ちを。侯爵様が訪れるとなると、人払いが必要かと。」


「そうだな。その通りだ、ではここまで連れて参れ。」


「はっ、暗室は遠く離れてる故お時間を頂きたく。すぐに手配致します。」


防音結界を解き、部屋付きの神官にマリア様とアキツ様を清浄を掛けてから連れてくるように指示出しして侯爵様に向き直る。


「侯爵様、私めも今回で引退となります。この様な事は今回限りにしていだだきたく。」


侯爵様は嫌らしい笑顔を見せたかと思うと、


「神官長には来年成人の儀を迎える孫がいると聞いているが?」


………………………………………何を?

今回でこの様な非道なことは終わりにするつもりだった。神官長を退く年になり、私以外には成人の儀の悲劇に見せ掛けた暗殺を成功させられる者はいない事から最後のつもりでいたのに。


「侯爵様、どういう意味でしょうか?」


動揺を隠せず、声が掠れてしまう。


「いや、双子の可愛い令嬢だと聞き及んでおるぞ?」


「………………………………………はい。」


「神官長の更に上の位を用意する。既に王宮には具申してあ…………………………」


侯爵様は、最後まで話すことは無かった。

侯爵様の顔が、頭が、斜めに滑り落ちる様に落ちて行き、終いにはその驚愕に歪んだ顔が頭が床に転がっていった。

同時に、隣のホルン様が不自然に傾いだかと思う間もなくその身体が縦に二つに分かれて左右に倒れていく。


「………………………………………ひっ!」


「動くな!」


恐る恐る振り返ろうとすると警告され、視界の端に見えたのは血塗れのマリア様とアキツ様が私達が犯した時の姿形のまま全裸で入口の前で立ち構えていた。

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